第5話 取り壊し
俺たちが軋む廊下を渡って、店主の部屋に向かい、中に入って、店主に「遅い!」と怒られ、それをなだめたあと、言われた言う分がそれだった。
「まじですか?」
「ああ、そうなんだ、でも一つ条件があるんだ。まあ、まずはそこに座れよ」
ベッドに座っている店主は二つある椅子に座るように、俺と少女に言ったので、俺たちはその椅子にそれぞれ座る。
「いいか、落ち着いて聞いてくれないか?」
「はい」
「その、お前のあのスライ…
「ダメです」
「俺まだ最後まで言ってないぞ」
「いいえ、最後まで言われなくても、もうわかりましたよ、それで誰に言われたんです?
あのグリーンスライムを渡せって言ったのは」
「お前、ここらへんを仕切っている
「知ってますよ、いつも欲しがってくるのそいつですもん」
「バカやろう!あの人をそいつ呼ばわりにするんじゃねえ!何されるか、たまったもんじゃない」
どうやら、店主の落ち着きがないのはたぶんそのユービトというあの色男のせいらしい。
「あのお方はなんだかおっかなくってよ、
「オーク?マフォーク?」
黒髪の少女が不思議そうに聞いてくるので、
「ええと、豚みたいな顔をしているでっかい体をしているのが、
「お前!なんでそんなにヘーキなんだよ!
「
店主はそれを見て、ため息をつき、
「それで!どうすんだ!渡してくれるのか?」
「お断りします、と言いたいところなんですが…」
俺が断りますと言ったとき、店主は一瞬びっくとしていた。断られるってわかってたんだろ。
「今は
「無理だ」
「ですよね」
俺はため息をつくと
「すこし考えさせてください」
と言って席を立ち、そのまま部屋に戻って、店主に頼んでおいた布団のくるまって寝た。
ちなみに、黒髪の少女は出来るだけ綺麗なベッドがある、違う部屋で寝てもらうことにした。
目を覚ましても俺は布団にくるまったままだった。
窓の外はまだ太陽が登っていないが、月も無い。
きっと暁ぐらいだろう。
もう少し寝ておきたいと思ったが、たぶん二度寝をしたら日が天辺まで登ってしまい、
「どうすっか?」
これには日が昇るまでどうしよう?という意味とスライムの件どうしようの二つの意味が入っている。
前者に関して言えば、後で置いとくとして、問題は後者である。
「渡すしかないか…」
妥協の策としてはそれが一票だが、俺は本当は死んでも渡したくない。
このグリーンスライムを渡すくらいなら、腕一本くれてやると思うほどに。
「ああ、もうくそ」
このスライム療法は本当はすごく危険な代物なんだ。
俺は青カビしか『喰わ』ないスライムを開発することに成功したが、これが万が一、人相手になると、本当に怖い。
作り方もそこまで難しくない。むしろ簡単だし。
「賭けに出るしかないかな」
俺はそう言って、布団から出て歯を磨くことにした。
「本当か?エルフの兄ちゃん!」
「本当は嫌ですけど、仕方ないでしょ?でないとここ潰れちまうんだから」
俺は頬杖をついて嫌そうに言う。
目の前に黒髪の少女が麺やら肉をバリボリバリボリ食ってる。相変わらずの食いぶりである。
「おお!!心の友よ!」
店主に関して言えば、隣で号泣している。
頼むぜ、朝なんだからよ…
「それじゃあ、今日いくか?あの人のもとに」
「ええ、案内お願いします」
「合点だぜ!」
店主は胸を叩いて了承する。
「そうだ、
俺は麺をすすっている黒髪の少女に尋ねると、麺を飲み込んで、
「いいよ」
と言ってくれた。
「良かった、ありがとな」
俺はそう言って
「それだけなの?」
黒髪の少女は無表情のまま言う。
確かに今日も俺はパンふた切れした。面倒なんでね。
「ああ」
そう言うと、「あっそー」黒髪の少女は冷淡に言うと、ラーメンのスープを飲んだ。
俺は彼女が心配してくれてるのかもしれないなと思って、なわけないかと否定したあと、そういえばと思い、彼女の手の甲の光の刻印を思い出した。
『汝、人を殺めることなかれ』
これが本当なら、彼女に護衛を頼むのは良くなかったのではないか?と思ったが、要するに殺させなければいいから大丈夫だろうと思いながら俺は二階を上がっていった。
「おん、てめえ!小娘よう?昨日はよくもこてんぱんにしてくれたな?」
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