第2話 俺のことを嫌いな女
放課後、友康の言ったことが本当なのかどうか、俺は水瀬にメッセージを送って聞こうかどうか迷っていた。いきなり聞いてもいいものなのか?というか久々に送るメッセージがそれってキモくねぇかとか。そもそもなんて送ろうかとか。そんなことを考えて、教室にいると、もう教室には、俺一人だった。
そろそろ帰るかぁ。そうポツリと独り言を漏らすと、カラカラと音を鳴らしドアが開く。教室に入ってきた奴を見ると、水瀬の友人(親衛隊)の一人であり、同じクラスの渡辺麻里だった。
俺はこいつのことが苦手なので、早々に立ち去ることを決めると、学校指定のバッグを担ぎ教室を出ようとした。
だが出る直前で、渡辺は俺に話しかけてきた。
「ねぇあんたさ、美奈子が翔人君と付き合い始めたの、知ってる?」
後ろを向いたまま喋る。
「まだ付き合ってはないだろ」
実際のところはどうなのか知らないが、こいつのことだから、俺をビビらせるための誇張表現だろうと思いとっさに言葉が出た。
てか、翔人君て誰だよ。
「時間の問題だと思うけどね」
「そうか?なんかの気まぐれだろ。どうせ」
そうであってほしいとそう思う。
「あんたの願望でしょ。それは」
痛いところ付くな。こいつ。
ふぅと一息はいて、渡辺のほうを向く。
「お前が、俺のことを嫌いなのは知ってるけど、今日はえらい絡むな。」
そう、渡辺麻里は俺のことが嫌いなのだ。
それもすごく。
「あんたが、最近美奈子に付きまとってるからじゃない。今更」
ひどい言い草だ。まるで俺がストーカーみたいじゃないか。
「おい、ひとつ言っとくが俺はストーカーではないぞ。ちょっと水瀬の周りを話しかけようかどうか迷ってうろちょろしてただけだ」
お道化た風な喋り方が出る。それがどうしようもなくて、自嘲じみた笑みがこぼれる。
「……何にも変わってないんだ。本当に何にも………」
憐れんだ目がどうしよもなく、見ていられなくて顔を下げる。
「……もう帰っていいか?」
俺に返せる言葉はなくできることはこの場から逃げるという選択肢を取るだけだった。
「また、逃げるんだ」
だがどうやら渡辺はまだ逃がしてくれないらしい。
「逃げるよ。だったらなんだよ。お前には関係ないだろ」
半ば逆切れのような態度で最低の言葉を吐く。
「あっそう。だったら一生逃げてればいいんじゃないの?バカみたい」
そういって渡辺はガタンと強くドアを閉めて帰っていった。
俺はその場で立ち尽くし、教室の窓から見える夕焼けをただぼんやりと眺めていた。
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