10.熱中するということ

『 無題 』



 オーケストラを聴いていると不思議な気持ちになる。

 チューバやオーボエ、ティンパニー、それぞれの奏者が自分のパートを受け持ち、一つの曲を作り上げている。その奏者達は、どうしてチューバをやろうと思ったのだろう? ファゴットやチェロの奏者はフルートやトランペットをやりたいと思わなかったのだろうか? オギャーと産まれた瞬間から、「あ、自分ファゴットだわこの感じ」とか、「チューバっぽいなー、どうも自分。すっげーチューバだわ」と思うのだろうか。


 んな訳ない。

 きっとオーケストラを構成している一人一人が生きていく上で重大な選択をし、悩み葛藤しながら技術を研鑽してきたのだ。ある程度の妥協がそこにはあったのかも知れないし、全然無かったのかも知れない。わからない。チェロの奏者の人生は想像つかない。ファゴットに至ってはその存在についてすらよく分からない。でも、どこかの誰かがファゴットの奏者を志し、オーケストラの一員として世界のどこかで今日も演奏しているのだ。


 そうした人達が集まって奏でられる音楽は、よく知らない曲でも「聴くに値する何かしらの」深みが感じられる。聴いてると落ち着いた気分になる。ミスチルやスピッツも良いけど、ボン・ジョビやケミカルブラザーズも良いけど、それぞれの良さが音楽という懐の深さであって、何にも代え難い喜びを、養分を心に与えてくれる。最近はYouTubeでも知らない人が音楽をアップしていたり、友達がBlogを毎日更新していたり、そういう人達の無闇な熱さが今回僕が小説を書くきっかけになったような気がする。


 何をして生きたいか

 どうやって生きたいか


 誰も教えてくれない。誰も、「君、クラリネットやりなよ才能あるから」と教えてくれない。もしかしたら僕にはクラリネットの才能があるのかも知れない。触った事もないけど、その楽器に触れた瞬間、映画マトリックスみたいに「ズビビビビ」と天から脳に直接ダウンロードが始まって、世界中を魅了する演奏が出来るのかも知れない。


 もしかしたら、僕には世界一強固なブロック塀を打ち立てる才能があるかも知れない。僕だけにしか出来ない調合で、世界中の核が間近で炸裂してもビクともしない謎の塀をぶち建てることが出来るのかも知れない。


 もしかしたら。

 もしかしたら。


 ある種の人達は、僕が上みたいに書いた事を

「何言ってんだこいつ、馬鹿か」

 と思うだろう。でも、絶対

「うんうん、わかるー。わかりみー」

 と頷いてくれる人も居る筈だ。


 熱中出来ることがある事は幸せな事だと思う。

 それが僕の場合、文章を書くことだった。

 最近それに気が付いた。


 前から文章を書くのは好きだった。

 上手だね、と褒められる事も無くはなかった。

 でも、僕は文章を書く事は単なるマイブームの一つに過ぎないと思っていた。ファミコンやセガの格闘ゲームバーチャファイターに熱中したり、漫画に熱中したりする事と同じように、ちょっと他の人より上手に出来る何かの一つに過ぎないのだと。そう思ってやがて書く事は意識せずにやめてしまった。


 でも結婚し、日々お仕事や雑務に追われる中で自分と向き合う時間が限られてくると、「そうじゃないだろ」という声が大きくなってきた。「お前がやりたいのはそういうもんじゃないだろ」と。頭を空っぽにしてドラクエ10をやっている時、誰かとご飯を食べている時、お仕事として販売をしている時、コーヒーを飲んで一息付いている時にそれらはジクジクと胸を突いてきた。そしてそれは、やらずにはいられない物事になってきた。欲求というより、心の底から手が伸びて来てギュッと僕の芯を掴む何かだった。


 誰も教えてくれない。

 本当は何か別の才能があるのかも知れない、やっぱり無いのかも知れない。

 でも、僕は文章が書きたいという意思を持った。

 勝算は限りなく薄い。

 でも、だから何だって言うんだ?

 僕が何かを書いた事で、世界に影響を及ぼすか?

 及ぼさない。もちろん株価に影響もしない。

 老犬は毎日散歩を続け、太陽は地球の裏側から月を照らす。

 オーボエがどこからか聴こえてくる。どこかの誰かが悩み、葛藤と未来への恐れで眠れない夜を何度も越えて発される音だ。


 何をして生きたいか。

 どう生きたいか。


 もしかしたらもう遅いかも知れない。

 でも、やってみる価値はある。


 それでは聴いて下さい、江戸川台ルーペさんが歌う、

 Mr.Children「トゥモローネバーノウズ」。


 やめろ、茶化すな。

 泣くぞ。

 大の大人が両手を振り上げて泣きながら追いかけるぞ、どこまでも。

 2018年の5月3日の午前5時は激しい雨が降っている。

 今日は早番だ。あとちょっとしか眠れない。

 いよいよ実生活に支障が出て来たな、と思う。

 正直、ペンネームもしくじったと思わなくもない。

 江戸川台ルーペって。


 そろそろ少し眠い。

 もう一度、近いうちに推敲して小説をアップしたいと思う。

 ちょっとエッセイに時間が掛かりすぎて、何にもできてない。

 小説を読んでもらう為の言わば、営業行為で疲れ切ってしまった。

 すごい楽しかったですけど。


 カクヨムに登録して応援してくれたひと、どうもありがとう。

 菓子折り(ヨックモック)を持って行ってお礼を言いたいくらいだ。

 ヨックモックだぜ?

 あれマジで美味いよな。

 

 初めてこのエッセイを読んでくれた名もないあなた様にも感謝です。

 こんにちは?

 こんばんは?


 ついでに他のも読んで行ってくださいね。


 それではまた!







【コメント】

 ◇こんばんは。


「真空パックのショートケーキ」をフォローして下さり、ありがとうございます!!


 もしかしたら、「毎日は嘘の積み重ね」という方が読みやすいかも〜と思いつつも、新連載なので読んでもらえるとすごく嬉しいです。 


 ただ、いい歳をして女子感の強い物を書いています。お恥ずかしながら。



 そして、こちら読ませて頂いたら、

 気持ちがわかり過ぎて……。


「何をして生きたいか。どう生きたいか」


 私もそんな理由から、カクヨムで書き始めた気がしています。


 あと、ペンネームも全く同じことを思っていました。笑

 今となっては気に入っていますが、

 最初は後悔の嵐でした。笑


 でも、「江戸川台ルーペ」さんは個性的で

 知的な感じもするので、素敵なペンネームだと私は思います。


【追記】

 お名前訂正しました!!

 本当にすみません!!

 私は本当にすっとこどっこいで、

 コメントにて「変人」を「変態」と書いたり

「仲良し夫婦生活」を「仲良し夫婦性活」と

 書いたりしてしまうのです。

 お許しください!!(土下座)



 ◆(お名前)様

 コメントありがとうございます! 同じ春樹スキーとしてどのようなお話や文章を書くのかというのはとっても気になるところなので、思わずフォローさせていただいちゃいました! 今後とも楽しく読ませていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます! 文章に年齢など無関係……だといいな……って僕も希望を込めながら強く思っております。僕もだいぶいい歳なので! お互いに頑張りましょうね!

 ペンネームはもう仕方がないですよね。僕もだいぶ気に入ってきたので、一生これでいきたいと思っています! お褒めいただきありがとうございますー!

 江戸川台ルーペ 2019年11月17日 22:37 編集


 ◇自分の場合、オーボエがやりたかったけどいつの間にかクラリネットをしていました。人生色々ですね。

 でもクラリネットは楽しいです。きっと、行き着く所には行き着くものなんだと思います。そのご縁、応援しております。


 ◆(お名前)様

 コメントありがとうございます! 作曲に執筆に、(お名前)さんの幅広さには驚いていましたが、さらにクラリネット!? 頭が下がります。すごすぎです! 楽器できたら人生楽しいだろうなーって思います。書くことを決めて一年二カ月、未だわたくしの炎消えずです! 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

 江戸川台ルーペ 2019年7月12日 21:13 編集


 ◇熱中できる趣味が、あるといいですよねー。

 僕の場合は、読書とゲームと麻雀に酒です。

 カクヨムに、何か書いたり、他の人の作品を読むのも、

 趣味になってきました。

 色々な人たちが、色々な事を書いていて、面白いなーという感じでした。


 ◆(お名前)様

 コメントありがとうございます〜!

 寝食忘れて熱中するのっていいですよねー。ドラクエしてとかいただきストリートとか、まぁゲーム何ですけど! 読書と映画は寝ちゃうんですけども。麻雀いいですねー! 久しくやってない。酒飲みながら麻雀ゲーム読書、最高です。最高です!!

 江戸川台ルーペ 2018年9月27日 14:07 編集


 ◇江戸川さんの筆致と物語だいすきです! 応援してますー!

 ◆ありがとうございます!

 うれしー!

 江戸川台ルーペ 2018年8月3日 02:30


 レビュー☆18

 自己発掘

 ★★★ Excellent!!!

 仕事か趣味かに関わらず、とにかく大なり小なり他人に……あるいは社会に……なにかを及ぼす作業を行う際、必ずいつかは突き当たる壁。いや、自問自答せざるを得ない壁。才能。

 ある人は、それは幻のようなものにすぎないと言い、またある人は差のあるものはあくまで差のあるものだと断言する。

 どちらが正しいのかはさておき、なにはさておき本作の題名通りに『熱中するということ』。

 仮に才能のない人間であったとしても、熱中に何の遠慮がいるだろうかという意味で確かに福音の書となるだろう。

 2019年4月4日 18:02


 集計期間: 2018年5月4日 19:00 〜 2020年2月17日 05:27

 ❤️16 👁98


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