6.モテたいボーイズ

『 どうやったらモテる? 』


 僕が友達が少ないという件についてはこれまで五回のエッセイを通して口を酸っぱくして言ってきた。何故、冒頭から担任の先生みたいな口調で上から目線で語りかけているのか、その謎は最終行にて明らかになる。ならない。お得意の嘘です。ごめんなさい。素直に謝れるのは僕の中の数少ない美点。


 どうやったらモテる?、っていう題名は、確か人生で二回くらい真剣に友達に聞いたことがあるセリフだ。僕は友達は少なかったが、その友達は高確率でモテた。そしてその統計は、「姉がいる弟分はモテる」という事実を導き出した。日々女性に虐げられる弟は人類を未来永劫存続させる為に、その扱い方をDNAレベルまで叩き込まれているのだろう。これはノーベル賞モノの発見だ。発表すれば、もう一生暖かいご飯としじみの味噌汁と冷たいコーラに困ることは無い。本当にありがとうございました。


(自分で書いたくせに自分でスルーして)一方、兄がいる弟はモテない。これは事実だ。きっと兄は兄で弟を虐げるせいで性格は歪むし、お古を着せられたりして見栄えも当社比30%くらい落ち込むからだろうと思う。それと、男同士の会話と男女の会話は性質が違うので、可愛い女の子と何を話せば良いのかまったく想像が付かないというのもあるかも知れない。


「どうやったらモテる?」と言うのは、何才になっても男にとっての命題であり続ける。結婚すると「彼女いる?」の代わりに「男の人って不倫したいんでしょ?」という質問をされる事が増えた気がする。その正解は、「僕のワイフは最高さ。不倫なんてとんでもない。HAHAHA!」であるらしい。馬鹿みたいに

「したいれす(^ q^)」

 などと答えると、背中に癌が出来て死ぬ呪いが掛かる。気をつけた方がいい。


 中学生の頃から男の子はモテを意識し始める傾向があると思う。同じ躾の悪い糞猿みたいに遊んでいた男友達の中に早熟な奴がいて、可愛い女の子と二人で楽しそうに遊んでいる所をみて「すげえな!」と思う事がきっかけになる。女子と遊ぶ、という事は小学生まではわりと恥ずかしい事であったが、中学生になると制服を着る事もあり、突然オトナな雰囲気も手伝って恋愛気分が高まるのだ。


 そして様々な儀式(色々ありますよね)を経て、中学二年、三年になると男の身体つきもかなり大人らしくなる。もう勉強よりも異性が気になり始めて仕方がなくなってしまう。英語や数学よりも、可愛いあの子と隣の席になりたい、とか、課外授業で偶然隣になりたい、とか、そういう事ばかり考え出すようになる。完璧に頭がイカレポンチ状態に陥る。だが、大人はそんな状態を見て見ぬふりをしている。自分もそういう経験をしてきた癖に、教え子の欲求(モテたい、ヤりたい、遊びたい)を思春期という一言で済ませ、押し付け、そのまま良くも悪しくも放置する。


 ここら辺から男の黒歴史の発生率はグンと跳ね上がる。実際に痴漢などの犯罪に走る奴も出始めるが、大体はギリギリで踏みとどまる。モテたいが為に、髪型をチェッカーズ(古いなあ)みたいにする。フられたが為に、ポエムをノートにしたためる。自分がかわいそうに思えて、ポエムをノートにしたためる。そのノートが誰かに見られてしまう。……ポエムが元凶かよ! 現役中学生、高校生の諸君、インターネットが発達した今、ポエムは捨てアカウントのツイッターとかでやるんだぞ! LINEだとおじさん読めないから! 積極的に読みたいって訳じゃないけど。


 高校生になると理性も発達し、黒歴史の発生率は下がり始めるものの、押し留めようのない抑圧された性欲が全てを支配し始める。喧嘩っ早くなったり、服装がだらしなくなって上履きの踵を踏んで歩いたりする。女の子を無理やり「おまえ」などと呼んで夜布団でひとしきり呻ったりする。傾向として、親しい女友達が出来る男タイプと、そうでないタイプの両極端になる。互換はない。つまり、女友達ができるタイプは一生出来ないタイプにならないし、その逆もないという事だ。それは、その男性の今後の人生の属性となってほぼ一生ついて回る運命と言っても差し障りはない。


 だが、女友達が出来ないタイプは稀に転生する。小綺麗な格好をし、眉毛と髪型を整えて爽やかに正常な社会に再登場する。主にそれは大学2年生から社会人4年目くらいの間に観測される。大学デビューとはまた違う、吹っ切りタイプの転生男子だ。そういうタイプの男性の首の後ろあたりの髪を掻き上げると、小さな字で「mark2」と筆入れされている(んな訳あるか)。


 そのmark2はかつて、「モテは邪道。男は中身で勝負だ当然だ。わからん女は願い下げ」派だった。わりと過激派寄りだった。だが現実問題として、願い下げする女性が多過ぎた。願い下げ事を認めなかった説もあるが、男でも中身がイイやつは高い確率で身なりも清潔に整え、格好良くしていた。その事実を知ったmark2は止むに止まれず、泣きながら自分の換装を腕のいいメカニックに頼んだのだ。「どうやったらモテる?」と。


 まずは清潔感を維持することから始めるのが簡単だとメカニックが助言した。太っていたら痩せる。鼻毛を毎日カットし、眉毛も一度サロンで整えてもらう。髪の毛を地元の床屋ではなく、きちんとした美容室で切ってもらう。

 お金で解決が出来る事はちゃんと金を掛けた方がいい。内面を磨いても装甲(見た目)が変わらなければ不潔な男でしか無いが、ユニクロじゃないシャツを切るとレベルが突然5くらい上がる。そのシャツやアッパーに袖を通した瞬間、ファンファーレが鳴り止まない。内面をバージョンアップするには最短でも推定ダウンロードに3ヶ月、インストールにさらに4ヶ月は必要で、しばしば失敗し再インストールの必要すらあるが、ちょっと服装に課金すると2秒で極めてわかりやすくレベルアップする。その浮いた時間でまた自分をアップグレードなり好きにすれば良いのだ。自分の内面をアップグレードし、外面に反映させるまでの時間を金で買う。金と言っても10万では無い。せいぜい2万。高校生なら5千円でいけなくもないかもしれない。適当にやってほしい(最悪の終わり方)


 とにかく、モテたい気持ちを忘れずに生きていきたい。その気持ちが無くなった瞬間から老いが加速するのかな、と最近思っている。







 ※2020年3月16日改稿

【コメント】

 なし


 レビュー☆3

 文章なし


 集計期間: 2018年4月25日 21:02 〜 2020年2月15日 06:34

 ❤️8 👁32

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