第28話 あとがき

と、いうわけで終わりです。


『かぎりなき雲居のよそに別れるとも 人を心におくらさむやは』


この最後に書いてあった和歌の意味は、「この世の果てのような地へ行こうとも、あなたを心の中に連れていく」です。

逢えなくなってしまった恋人を想い、それでも一緒にいたいと願っている想いを歌にしたものです。


きっとバーンが和歌を詠めたらこんな感じかな?と、思って探してきました。

「ジェラ」の冒頭の和歌は源氏物語 第19帖『薄雲』で、古歌として使われています。

作中に出ていた和歌は古今和歌集から選んだものが大半です。

紀貫之、素性法師、在原元方、凡河内躬恒などの歌人が詠んだものです。

まぁ、私に和歌なんか創れないことが露呈しました。ムリ!!

でも雅な世界は創りたいので、どうしよう!?ってな感じかな。


この話は、昔からやりたかった桜の話です。

が、こんな話になるとは思っても見ませんでした。(あれ!?)

事前調査が不足していて、しろがねさんのリテークをモロにくいました。

特に、「桜鬼はなおに」は、まんま書き直しになってしまいました。

っていうか、新しく40ページほど書き足し、そのあと5ページ書き足して、総ページ数60ページになった。


この「ジェラ」というお話は、はじめはオラクルシリーズの年表にない話でした。

話の発端は、しろがねさんがボソッと…

『「ナウシズ」で臣人みとだけの退魔行を書いたんだったら、バーンだけの退魔行の話があってもいいんじゃないのか?』と、言ったのがきっかけです。

(桜の話はともかく。実は、「ジェラ」自体は書くつもりがない、番外編の話だったのだ~)


桜といえば、悲恋とか失恋という感じがするんですが、もちろんそういうふうに思って書いていたんですけど……いざ書き終わってみたら!!なんと純愛の話にもなっていた。(驚いた(>o<;))

3つの恋の話が、交錯しているっていう感じになっていました。

3つの恋は、みんな共通点があるんだけど、どこかでズレている様な感じでしたねぇ。


しろがねさんがえらくあのキャラがお気に入りで。巫那裳姫みなもひめはまたのちの話で出てきますよ。

彼女が本当の意味で浄化される=想いを成し遂げる、その瞬間を私に書かせたいようですから。


彼女も可哀相といえば可哀相なんですが。

少女の恋と大人の恋。二つのあいだでどうしても「自分」というものを割り切れなかったんでしょうね。

許せない想いが自分を二つに分かってしまった。

そんな感じで書きたかったんだけど、そう上手くは書ききれないところが私らしいのだろうか?

う~ん(ToT)


このお話は、ちょうどバーンと臣人が高校教師になって2年目の春、節目にあたる1年間の最初の話になっています。

綾那達と関わるようになって、ちょっと人間らしさを取り戻しつつあるバーンです。

ですから、よく喋っています。(まあ、相手が霊だっていうこともあるけど。それでも、信じられないくらいに話してるよね。)


それに今回、怒って

彼は感情がないわけではないので、めずらしく直接感情を表に出した話です。作者思うに、バーンも成長したなあ。うんうん。


それはそれで彼にとっては悩みの種ですがね。

作中でも言ってましたが、感情を素直に表現できるようになることが彼が人間らしく生きることの最低条件=自分自身に対する信頼=このシリーズは終了と相成ります。


本当のバーン=本質は兄貴のアレックスと一緒で直情型の人間のような気がしています。

それを自制心というオブラートに包んでいるだけなのかなって思います。

(だからこのシリーズ終了後のバーンの方が私的には好きです。)


春のあのほんわかした空気のようなエンディングにしたかったのですが、まあ、嵐の前の静けさとでもいいましょうか。

この話の後は、季節を追うごとに深刻な話になっていくのでした。(バーンを地の底まで落ち込ませるゾぉ~)


バーンの出生の秘密とかなんとかかんとかがわんさか出てくることになります。

もちろん、ラティを死へと追いやった敵方もね~。


「ジェラ」の意味は、「収穫、実りの季節、1年」という意味を表すルーンです。

「真剣に関わっている活動や努力しているすべてのことにあてはまる有益な結果」を意味します。

それに必要な要素は、時間と辛抱・忍耐であることを告げるルーンです。


バーンが聖メサヴェルデ学院で人と関わるようになって過ごした1年間を振り返り、そこで得たことや自分が変わってきたことを自覚してほしいと願って書いた話です。

(書きながら、まさかあそこまで変わってきているとは思わなかったけど。笑)


キャラクターも知らず知らずのうちに成長するんだなと思ってしまいました。

特に、「しあわせ」ってなんだろう?という素朴な疑問に答えてほしかった。

自分を顧みる機会というか、それを意識する瞬間ってありませんか?

感じ方は人それぞれに違うし、その有様も違うでしょう。


でも、「しあわせ」は誰にとっても変わらずそこにあるものだと思うので、バーンにとってもを認めてほしかった。


ラティといたあの時、彼はしあわせであったと。

今、これだけの人達と関わっている、また関われている自分はしあわせであると。


少なくてもイヤイヤ関わっているわけではないですから。

むしろ、みんなバーンの人柄に惹かれて集まっているわけだし、その片鱗でも書けたらいいなっと思っています。


この「ジェラ」というタイトルは、はじめ、なんだか私にとってはしっくりこないタイトルで悩んでいました。

当初は違うタイトル「ウンジョー リバース」と、つけて書いていました。

「ウンジョー」は「喜び」を意味します。その「リバース」なので、「今は試練である」を意味します。

(何か違うって感じでしょう?)


で、3日連続でルーンにきくと、1日目が「アンスズ」、2日目が「フェイフュー」、3日目が「ジェラ」とでました。

まだ書いていないプロットで使っているルーンや今まで書いた話で使ったルーンを除くとやはり「ジェラ」しかないという結論に達しました。

で、そのあとに出たルーンが、なんと「ウンジョー」だったのです。

(ルーンにも後押しされたような形になっています。)


花といえば、『墨染めの桜』は実在します。一応モデルは、栃木県にある樹齢1,300年の薄墨桜です。

他にもいろいろな場所にある桜を参考にさせていただきました。

SYNFOREST Hi Vision「桜」とか、写真集とか、京都にも17年ぶりで取材に行ったし。

ま、いろいろと。

はじめに出た和歌に、情景を引っかけたいって思いもあったのですが、うまくいかなかったので、書き足しました。


さて次のお話は、「ANSUZアンスズ」です。

夏休み、街場へお出かけしていた綾那と美咲ですが。

迷子=鳳龍を拾って喜んでいるうちに美咲が誘拐騒動に巻き込まれて、さあ!大変。(財閥のお嬢様だから。)

身代金の要求を一切受け付けない美咲の父と命の危機にある美咲。

あたふたした綾那はバーン達に助けを求めるも、どうなりますか。

さらに、榊先生の過去もチラリとわかったりして。

で、かわいい鳳龍の大立ち回りもありですっ!!(バーンの活躍はないかも?)


最後までお付き合いくださって、どうもありがとう!

ご感想をお待ちしています。


あなたにルーンの加護がありますように。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

JERA 砂樹あきら @sakiakira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ