(15)〜魔女の少女と母の遺品④〜
夜の帳が下りた部屋の中。
ランプの灯りが辺りを照らし、時折チラチラと揺れ動く。
セレスタイトは一人、部屋のベットに腰掛け、仕掛け鏡台の仕掛けを解いた先にあった「古びた茶色い手帖」を読んでいた。
ライゼには先に休んでもらった。
この手帖に書かれている物が魔法に関しての物だと言うことも、もちろんあったがそれよりもこの手帖は一人で読みたかった。
だからライゼには「読み終える頃には遅くなるから」と言った。
ライゼは心配そうな顔をしたけれど、最後には渋々「わかった」と言ってくれた。
遅くなるからなんて言い訳だし、ただの自分勝手だ。それはよくわかっている。
手伝ってもらったライゼに申し訳ない。
この手帖にはどうしても一人で向き合いたかった。
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そうして読み始めた母の手帖の一番最初のページ。
そこには母からの手紙のような文章が記されていた。
「大丈夫、あなたなら出来る」そう語りかけてくる母の声が聞こえてくる気がして、そっと母の文字を指で撫でる。
ざらりとした紙の上、ところどころ紙が一度ふやけたような箇所がいくつもあった。
「母さん、ありがとう」
セレスタイトの頰はいつの間に濡れていた。
暖かい涙だった。
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手帖には母が今まで『秘術』、『禁術』だからと名前しか教えてくれなかった魔法や魔法陣、召喚術、そして母が作った魔法陣が記されていた。
読み進めていると、その中の一つ『魔物錬成と魔法陣』と名のついた項目の所が目についた。
魔物の錬成方法とその成功率の低さ、そして危険性について書かれたそこには、母の字だがいつもより乱雑な文字の走り書きが後から足されていた。
〜『悪しきもの』と該当する特徴あり。
この術によって作られたならば対抗可能。
そして、その可能性大。〜
「見つけた……」
―――母さんも『悪しきもの』について調べてたんだ……。ならきっと見つかるはず。アイツを倒す方法が。
探していた『悪しきもの』のに繋がる情報。
やっと『悪しきもの』を倒す事が出来る。
やっと父さんの仇を、母さんを悲しませた原因を倒す事が出来る。
セレスタイトは胸が高鳴るのを抑えられなかった。
ただただ目の前に現れた大きなヒントそれだけが目に入ったまま、次のページを捲った。
この時セレスタイトは何も考えなかった。
何故、セレスタイトの母親が『悪しきもの』を倒さなかったのか、その理由を何も。
セレスタイトが捲った次のページ、そこには確かに『悪しきもの』を封じることの出来る魔法陣が書かれていた。
〜『浄化封じの魔法陣』浄化を目的とする封印の陣。
魔法学理論上『悪しきもの』も封印可能。
ただし、実験不十分のため何が起こるか分からない。
最悪の場合、術者が浄化対象と共に陣に取り込まれる可能性あり。〜
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