(13)〜魔女の少女と母の遺品②〜
---悔しい、悔しい、悔しい。
目の前に解決策があるかもしれないのに、他の誰でもない自分のせいでそこにたどり着けない悔しさと情けなさで、また胸がいっぱいになる。
とめどなく流れる涙を拭くこともできず、セレスタイトはただ鍵を握りしめ呆然と扉の前に立ち尽くすことしかできなかった。
---どうして私はこんなに無力なのだろう。どうしてこの部屋に入る事すら出来ないのだろう。
そんな絶望にも似た感情が胸の奥で醜く、ぐるぐると渦を巻き始めた時。
「おーいセレス。もうそろそろ一休み入れ……セレス?」
階段から登ってきた声で我に帰り、振り向く。
そこにいたのは、外でガスパルの世話をしているはずのライゼが、セレスタイトの顔を見て目を丸くしている姿だった。
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「セレス、台所の食材、勝手に使うけどいいよな?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
いつもはセレスタイトが立っている台所の方から昼食の準備をするライゼの声がする。
セレスタイトはその声に返事を返した。
とりあえず、まずは昼食を摂ることとなり、ライゼは何も聞かず、セレスタイトに紅茶を入れると、昼食の用意を買って出たのだった。
セレスタイトは有難く泣き腫らして熱を持った目と気持ちとを落ち着ける為に、先に座ってライゼの入れた紅茶を飲んでいた。
随分と涙も気持ちも落ち着いては来たものの、ふとした瞬間に頭の中を自責の念がよぎり、ギュッと手元のカップを握る手に力を入れると、カップの中の琥珀色の水面が揺れる。
---早く悲しさに区切りをつけないと。早く、早くなんとかしないと…
心でそう思えば思うほどに、また胸の奥に醜い渦が巻き始める。
「セレス?大丈夫か?」
「う、うん…大丈夫。ありがとう。」
いつの間にいたのか、昼食を持ってきたライゼの心配そうな声で我に帰った。
「本当か?」
「うん大丈夫。そんなことよりも美味しそうだね」
セレスタイトは話を逸らそうと無理矢理笑顔を見せた。
その様子にライゼは一瞬、怪訝そうな顔をして何か言おうと口を開きかけたが、ためらうように言葉を飲み込み、代わりに「よし、食べるか」と言って笑った。
---やっぱり、ライゼは優しいな……
ライゼの作った昼食は、どちらかというと簡単なものの分類に入るものだったが、セレスタイトはどんな料理よりも心が温まっていくのを感じていた。
♯♯♯
「なあ、セレス。何か俺に出来ることないか?」
昼食を終えてしばらくして、ライゼはセレスタイトに慎重に尋ねた。
セレスタイトは目を瞬かせる。
そしてつい、いつものように「大丈夫」と言いそうになって言葉を止めた。
---本当なら、これは私一人の問題。それは分かってる。だけど、このままそれにこだわっていたら、きっと何も進まない。
「ライゼ、お願い。一緒に探すのを手伝って欲しい」
ライゼはゆっくりと頷いた。
---よかった。
ライゼがいるだけで、ただそれだけで、セレスタイトは今なら何だってできる気がした。
それが誰かが居るという安心感なのか、一緒にいるのがライゼだからこそなのかは、今はまだ分からないが………。
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