(9)〜魔女の少女は対峙する②~※
「え?」
そこから、時間の流れが戻った。
セレスタイトは攻撃を加えようとしている「悪しきモノ」から距離を取り、自分を庇った「何かの影」が飛ばされていった方に向かった。
そこには、血で服が真っ赤に染まっていくライゼの姿があった。
ついさっき、セレスタイトの瞳に映った、あの『鮮やかで真っ赤な花』は、セレスタイトを庇って「悪しきモノ」の爪を受けたライゼの血だったのだ。
「ライゼッ!!!」
セレスタイトはライゼに駆け寄ると、周囲に結界を張った。
「悪しきモノ」が結界を壊そうと攻撃しているが、今度は結界が効いていて、ビクともしない。
ライゼは、剣を地面に突き刺し、それを支えにしてやっと立っていられるといった状態で、セレスタイトが近づくと「…良か、った」そう小さく笑った後、グラリと体が傾き、崩れる様に倒れた。
「ライゼ!ちょっと待って、今 治癒魔法かけるから!!」
セレスタイトはライゼに声をかけながら、ライゼの傷口に手をかざし、魔力を注ぎ始める。
ライゼは背中から脇腹にかけて深い傷口が入っており、そこから鮮血が溢れて出てきて服を染め、地面に赤黒い血だまりを作っている。
「セレ、ス……大、丈夫…ちょ、っと、やられた……だけだ、から…」
「全然、大丈夫じゃない、じゃない!!」
そう言ってセレスタイトは、泣きながら注いでいる魔力の量を増やす。
依然として「悪しきモノ」は、ライゼの血の付いた大きく鋭い爪で結界を壊そうとしては、弾かれを繰り返している様で、結界内では、「悪しきモノ」の爪が結界に当たる度、頭痛がするほどの轟音が響き渡る。
―――このまま結界内で立て籠もっていても、いつか結界が壊される……早く治癒を終わらせて逃げないと!!
ライゼの傷口に、有りったけの魔力を流し込むセレスタイトの額に、段々と汗が浮かんできた。
―――まずい!魔力が無くなってきた。せめて「悪しきモノ《アイツ》」さえいなければ……
「なぁ、セレ、ス…あし、き、もの…さえ……なん…とか、なった…ら、いいんだ……よな?」
思ってたことが、いつの間にか声に出てたらしく、ライゼがセレスタイトの言葉に反応する。
セレスタイトは不思議そうにライゼに頷いた。
すると、ライゼは自分のカバンの中に手を入れ、何か手のひらサイズのものを取り出す。
「あっ、た……」
「ライゼ?……」
「セ、レス…目ぇ、瞑れぇぇぇ!!!!!!」
そう叫びながら、ライゼは「悪しきモノ」に向かって、その何か手のひらサイズのものを投げた。
セレスタイトはライゼの治癒魔法を続けながらぎゅっと目を瞑った。
〜その刹那、目を瞑って真っ暗だった、瞼の裏が光った。〜
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