第3話

 吸血鬼たちが通り過ぎる間、男はわらの中で耳をふさいで、ガタガタと震えていた。彼らが遠ざかって、物音が聞こえなくなり、しばらく経って完全に去ったと思える頃、彼はようやく表に出た。


 小屋の外には、荷物を引っ掻き回されて、バラバラになった荷馬車の残骸と、傷だらけの馬の死骸が転がっていた。男は思わず顔を背けた。


 吸血鬼たちの姿が、どこにもないのを確認すると、男は散らばった荷物の中からまだ使えそうなものを拾い集めた。幸い、お土産の櫛と人形は無事だった。持てるだけを雑嚢ざつのうに収めると、とぼとぼと歩き出した。


 普段の倍以上の時間を費やして、ようやく村へと続く三叉路さんさろの手前までたどり着いた時、向こう側から誰かが、ぞろぞろと歩いて来るのが目に入った。

 男は慌てて木の陰に身を隠した。しばらく様子を見て、相手が人であったので、安心して陰から出て来た。

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