第2話

 やってきたのは、吸血鬼の群れだった。

髪は伸びてぼさぼさに乱れていて、顔は青白く、煌々と光る目をしていた。着ているものは古びて埃にまみれ、ボロボロに裂けて切れ端が垂れ下がっている者もいた。


 彼らはぞろぞろと男のいる小屋の方に近づいて来た。外から彼らの声が聞こえた。

「楽しみだ」

 と声がした。

「ああ、本当に楽しみだ。久しぶりの狩りだ」

「どこに行く?」

「そりゃ、気の向くままに決まってる」

 そう言って、しわがれた声で笑った。


「おや、こんな所に馬がいるぞ」

「ああ、ちょうどいい余興になりそうだ」

 ミシミシと何かがへし折られる音、馬の暴れまわる音と悲鳴のような嘶きが、しばらく聞こえて、やがてふっつりと途絶えた。


「こいつに乗ってた奴はどこにいるんだ?」

 吸血鬼の一人が言い出した。

「小屋の中にいるんじゃないか?」

「逃げたんじゃないか。いるなら出てくるだろうさ」

「そうだな、寝てたとしたら、呑気な奴だ」

「放っておけ、それよりこれからご馳走だ」

「ああ、本当に楽しみだ」

 吸血鬼たちは、またザワザワと喋りながら通り過ぎて行った。

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