第5話 オタク女子と昼ご飯を共にする
四時限目の授業が終わるチャイムが鳴り、時刻は昼頃、昼食の時間である。
そのチャイムは普通の学生からしたら至福の時間を告げるサイレン。
辛く、絶望的な授業から一変、空いたお腹に食べ物を入れたり、友人とたわいもない笑い話をしたりと学校の時間割の中では唯一、学生が居心地の良い時間帯だろう。
しかし僕のようなボッチからしたら絶望の鐘の音。終末を告げるサイレンではないだろうか。
友達もいない僕は一人、教室で昼飯を食べ、ソシャゲに打ち込んだり、ネットサーフィンをする。こんな生活には慣れているのに教室にいる人たちからの『なんだあれ』や『なんか一人でかわいそうだな』と白い目の視線、哀れんだ視線を感じるのはどうしても嫌と言える。
だが、そんな生活ともお別れだ!
最近、実はこの時間を使っていろいろと学校を探検しており、ついに僕はこの時間の安住の地を見つけたのだ。
それは俗に言えば、誰も行かないような場所、とりあえず人には絶対に見られないような楽園なのだ。
さて時間も時間だ、そろそろ行かせてもらおうか。
僕は学食でパンを買うため財布を持ち、席を立った。
すると後ろの席の方から、
「ねぇねぇ! 晴野さんさ、最近この時間教室にいないこと多いよね! 何かしてるの?」
「……うん」
「え、何してるの!? 先生に頼まれごととか? それだったら俺手伝おっか!?」
「…………あったとしても貴方には言わないわ、だって貴方には関係ないもの」
「……そっそっか……あのさ! それ終わったら俺たちと昼飯ーー」
「……いいえ」
すると晴野さんは我慢できなくなったのか、立ち上がって相手の反応を見るまでもなく教室を出て行ってしまった。
「はは~残念」
「フラれたな~! ありゃ高物件だって!」
「うっせ……」
教室で晴野さんにフラれた形になった男子生徒をイジる陽キャラ集団。今回も晴野さんの無愛想モードを順調な様だ。
******
時は過ぎ、僕は例の場所……旧校舎の外階段に来ていた。
そう……ここが最近見つけた隠れボッチ飯スポット。
実は僕たちの学校は新校舎と旧校舎に分けれていたりする。ほとんどの授業は新校舎で行われる反面、この旧校舎は部活動に利用されることが多い。
すなわち部活が行われる放課後はともかくこの昼飯時は下手な用事がない限り旧校舎には誰も近づかないのだ。
「いや~風が気持ち良くて景色もいいな~」
外階段はすごくボロボロだが、割と高い場所に建設されているため見晴らしがとても良い。人がいない分、視線も感じないし何気なく昼飯が食べられる。
教室から外階段へのこのお引越しは良かったかもしれない。
視聴率の関係で番組のお引越しはあるがあれに似た感じだ。
まぁ僕の場合はみんなからの視聴率を減らすためのお引越しなのだが……。
僕がのどかな景色を見ていると、後ろの出入口が開いた気がした。
「……はぁ……ここにいたのね……。あら? 笠松くんじゃない。こんなところで何を
「はっ晴野さん!? なんでここに!」
出入口を見ると少し疲れた顔を見せる晴野さんがいた。
「なんでって……そうね。鍵が導く心のままにここに来たのよ」
「いやどこのキ◯グダムハーツ!? ここに来いって導いたんなら多分それ偽物のキ◯ブレードだよ?」
某RPGの主人公のようなことを真顔で言う晴野さん。
鍵に導かれた場所が人がいなくて古ぼけた場所で、さらには待っている人物がクソボッチ野郎だとはゲーム的にもダメな展開だろう。
他のデ◯ズニー世界では誰かが助けを求めているならそっちに行ってあげてほしい。
「おかしいわね。NE◯Vからここに来いって命令されたんだけど……」
「まさかのチルドレンでしたか。頼むから一時の感情でサードインパクト起こさないように気をつけてね?」
そう言うと晴野さんは、ははは! と頬を上げて笑いながら僕の隣に座った。
某RPGと新世紀の人型兵器作品も出してくるとは……今日も晴野さんは調子がいいみたい。
「いや~笠松くんはすごいわね。私のボケにちゃんとツッコミを入れてくれるなんて」
「なんだか体が反応しちゃうんだよね。『早く言え!』 っていう具合に」
「いい症状をお持ちじゃない……ところで笠松くんこそここで何してるの?」
晴野さんがいい症状と言ったワードには触れずに僕は学食で買ったパンを袋から開けた。
「見ての通りボッチ飯だよ。最近やっと見つけたこのエデンで食事をしようと思ってね」
「……なるほど、だから最近昼の時間探してもいなかったのね……。--あら、そうだったのね。確かにここじゃあんまり人もうろつかないし神がかかったボッチ飯スポットかもしれないわ」
「そうなんだよ~ 晴野さんは昼ごはん、もう食べたの?」
「実は色々あってまだなのよね。ご一緒しても?」
「うん、いいよ!」
晴野さんは何があったかは分からないがまだ昼ごはんを食べていなかったらしい。僕に弁当箱を見せて『ここで食べていい?』とそんな素振りを見せると僕は嬉しさのあまりすぐに返事をしてしまった。
……まさか僕の学生生活に美少女と昼飯を食う時間が巡ってくるとは。僕、一生分の運でも使った?
これから桃太○電鉄のビンボー神にかかる人生とか嫌だよ? 人の物件勝手に売るとかマジ犯罪だからね?
僕がパンを食べていると晴野さんの視線を感じた。
「あなたのそのパン……ジャぱん何号かしら?『焼きたて!!ジャぱ○』本編では見たことないけど」
「ごめん、これ『太陽◯手』で作られたような大層なものじゃないよ」
「あなたが美味しそうに食べてるからてっきりそのくらいすごいものかと」
実はこの僕が食べている学食のパン…….以外に美味しかったりする。安価な上に美味しいってこの世では珍しいだろう。
しかしさっきから晴野さんすごいこのパン見てくるな……もしかして。
「……良かったら食べる?」
「え、いいの?」
「まぁ学食の安いパンだけど……」
僕は勇気を振り絞って小声でそんなことを言った。
「じゃあお言葉に甘えていただくわ。--この世の全ての食材に感謝を込めて……」
晴野さんはとある青髪の美食屋がいつも食べる時に言うセリフを真似しながら僕がちぎったパンのカケラを食した。
「ん……美味しい!」
食べた瞬間、晴野さんはすぐに笑みを膨らました。どうやら満足してもらえる味だったみたいだ。
……良かった、勇気を振り絞った甲斐があったぞ。僕が好きなパンを共有できたのとついでに晴野さんの嬉しそうな顔を見れて二倍、僕も嬉しくなった。
「ってあなたの数少ない昼ごはんを食べてしまったわね。良かったら私のも食べる?」
「え、いいの!?」
僕は急に晴野さんからそんなことを言われて裏声になってしまった。
確かに僕はこれだけだけど。
晴野さんはそう言うと自分の小さな弁当箱を開けた。
「もしかしてこれって晴野さんが自分で……!?」
「料理漫画や料理アニメを見ていたおかげで色々と料理を勉強したのよ」
「すっすごいね」
その小さな弁当箱は卵焼きやウインナーなど誰もが好むものなどが入っており、色どりと配置は完璧と文句のつけようがなかった。
焼き加減なんかも上手く、ほらこの卵焼きとか美味しそうなコゲが付いているしこれはすごいんじゃないか?
「では失礼して……おっ美味しい!? 多分、遠◯十傑ぐらい狙えるんじゃ――」
「それは言い過ぎよ、だってあのレベルの料理食べたらみんな幻覚見えるのよ?」
「でもそのぐらい美味しい!」
「ふふ……なんとも嬉しいこと言ってくれるわね。笠松くんに食べてもらえてよかったわ、そのために今日作ったんだし」
不意に晴野さんは景色を見ながらそんなことを言った。
「えぇぇ!? まっマジですか!?」
「なーんてね。冗談よ」
「そっそうだよね」
僕は喉に詰まりそうになりながら晴野さんを見るとクスッと笑いながらこっちを見てニヤけていた。
……この昼飯時間のチャイムを絶望の鐘と言ったのは訂正しておこう。
こんな美少女の手料理が食べられた時間だったのだ。これを幸せの時間と言わず何というのか。
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