第14話 ゴブリン発見
新しいパートナー、スノウと共に森の奥深くへと探索を続けた俺たちは、出会ったのだ。そうRPGでは、定番のゴブリンに。
この世界にもやはりいたようだ。
サーチに珍しく複数体の魔物が、同じ場所にいるのを感知した。
怪しいと思い、音を立てないように近くまで行ってみると、人間の子供くらいの背丈で、緑色の皮膚をした魔物がうろうろしている。
やたら凶悪そうな表情で、手には棍棒や短剣を持ち、革製の鎧を着込んで武装している。
岩場の前に集まっているのは、どうやら洞窟の入り口を警護しているようだ。
スノウはグルルルと毛を逆立てて、今にも飛び出しそうな様子、よほどゴブリンが嫌いなようだ。
まさかいきなり乗り込むわけにもいかない。
スノウをなだめると、洞窟の位置をしっかりと確認して、一旦書庫へと帰還した。
まずは何でも知ってるエクレールさんに相談する。
「何でもは知りませんよ。知っていることだけです。」
おお・・・どこかで聞いたようなセリフだ。
エクレールは少し照れながらも、緑の魔物について教えてくれる。
「ゴブリンについてですが、まず彼らの一体一体の戦闘力は大した力はありません。
ただ彼らは群れで行動する魔物なので、甘く見てはいけません。
大きな群れの場合はしっかりと役割分担されており、偵察任務を行う者、戦闘を行う戦士階級の者、なかにはヒーラーやメイジといった回復や魔法支援を行うゴブリンがいる場合もあります。
非常に大きな群れになると、キングやジェネラルといった指導者の役割をするゴブリンがいることもあります。
この場合は危険度が大きく跳ね上がり、対処するには国家規模の軍隊が必要とされることもあります。」
やっぱりゴブリンといえど油断は禁物のようだ。
「ただタケルさんの話を聞いた限りでは、その群れはそんなには大きくないようです。たぶん20~30匹程度の数でしょう。
しっかりと準備を整えれば、十分勝機はあるでしょう。」
エクレールの説明を受けて俺は、ここまでに回収した魔石や素材と交換で新たに第二階梯の魔法
スリープ・クラウド
を取得した。
この魔法を唱えると目には見えない小さな魔法の雲が発生して、敵を包み込むとそのまま眠らせてしまう。
第二階梯では、弱い部類に入る魔法だが、魔法抵抗力の弱い魔物、特に獣系の魔物にはよく効くので、森での探索に向いている。
今回、敵は群れで行動しているので、直接攻撃の魔法以外のオプションがあった方が良いと思って取っておいた。
どこぞの古典にもあるように、己を知り敵を知れば百戦危うからず。
ブラッド・ベアでの失敗からしっかりと学んだ(本人談)俺は、事前に準備を整えるとゴブリン退治のために再度、洞窟へと足を向けた。
見張りのゴブリンは3匹、俺とスノウは木の陰に隠れながら、魔法の射程距離まで近づくとスリープ・クラウドを発動する。
もやもやとした魔法の雲がゆっくりとゴブリン共に近づいていくとすっぽりと包み込む。
警備のゴブリン達は、あっけなく眠りに落ちた。
少し可哀想な気もするが、眠っている魔物に光弾を一発づつ叩き込んで退治する。
ゴブリン共よ許したまえ。
せめて経験値となって、俺の中で生き続けよ。
という訳で、俺は新たな経験値を求めてスノウと共に、ゴブリン共の巣食う洞窟へと侵入した。
洞窟の内部は思ったより広い、人から数人が並んで通れるくらいだ。
どこにゴブリンが潜んでいるか分からない、奇襲に備えてプロテクション・スフィアを最大限に展開しておく、
エクレールの情報どおりなら並のゴブリンではこの守りを突破することはできないはずだ。
「スノウ、プロテクション・スフィアから出ちゃ駄目だぞ。」
当然スノウには光球から出ないようにしっかり注意しておく。
「ウォン!」
スノウは尻尾を振りながら、頼もしく返事してくれるので大丈夫だろう。
俺たちは薄暗い洞窟の内部へと侵入していった。
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