第13話 結晶獣との狩り

「タケルさんが飼い主なのですから、何か良い名前を付けてあげてください。」



俺の魔力を供給したことで、すっかり元気になったチビを見つめながらエクレールが言い出した。


確かに一時的かもしれないが、これから一緒に暮らすなら名前は必要だろう。



俺の最大限まで高めたINTはこういう場面では役に立たない。


地頭をフル回転させて絞り出した名前は・・・



スノウ



こいつの真っ白な体毛が雪のようできれいなこと、


狼といえば寒冷地に生息することから思いついた名前だ。



単純すぎる?


俺の地頭ではこれくらいが限界なのだ。



とはいえ・・・スノウは新しい名前を気に入ってくれたようだ。


呼び掛けるとウォン、ウォンと返事をしてくれる。



スノウはとても身が軽い、というよりどう見ても軽すぎる。


まるで空中に浮かぶかのように、壁や俺の体をつたって走り回っている。


重力とかどうなっているんだろう。



「たぶん単純な脚力ではなく、マナを利用して空中に足場を作っているようですね。



魔法を使いながら飛び跳ねているという事だろうか、なかなか凄いスキル?を持っている。


さすがは結晶獣。




次の日、すっかり回復したスノウを連れて俺は、狩りへと出発した。


もちろん最初は、危険だからと書庫に置いていこうとしたら、ものすごい勢いで抵抗された。


俺の後頭部にしがみついて絶対に離れようとしないのだ。



結局根負けした俺は、狩りに同行させることにした。


魔物に遭遇した時は、プロテクション・スフィアの中で隠れているように強く言い聞かせておいたので大丈夫だとは思う。


もちろん話せるわけではないが、スノウはかなり頭が良い、俺の言ったことはかなりの割合で理解しているようだ。



修業のお供を得た俺は、いつもにも増してやる気倍増、早速最初の獲物を発見すると。



「よーし、スノウ、見てろよ。」



フォトン・ブラストを発動する。


一撃で魔物をノックアウトした俺の魔法を見てスノウは大喜び、倒した魔物と俺のはしゃいで走り回る。


今までは一人で寂しく魔物を狩っていたので、なんだかとても癒される。



結晶獣だからだろうか、スノウは魔法が、大好きなようだ。


フォトン・ブラストに続けて、アイス・バレット、ファイア・ジャベリンと新しい魔法を見せるたび、テンションアップして跳ね回る。


そういえば書庫を出るときにプロテクション・スフィアを展開した時も、魔法の光球を見て目がキラキラと輝いていたな。


スノウが喜ぶものだから俺もついつい調子に乗って、いつも以上にハイペースで魔物を狩り続けた。



またスノウは、かなり鋭い感覚を持っているようだ。


俺がサード・アイで、魔物を発見する前に反応している。



スノウが先に獲物を見つけてくれるので、索敵範囲はかなり広がり俺はより安全に獲物をしとめられるようになった。




スノウがさっきから倒した敵から取れた魔石をジッと見ている。



「なんだ、これがそんなに気になるのか?」



「バゥ!」



俺が、魔石を鼻先に持ってくると



「あッ、こらッ!」



俺が止める暇もなく、カプッと噛みつくと、そのままバリバリとかみ砕いてしまう。


慌てて口を開かせて見るが、もう遅いすっかり飲み込んでしまった。



「おい、おい、大丈夫なのか」



俺はビックリしてスノウの喉や腹に手を当ててみるが、コイツは全然平気なようだ。


チョコンとお座りして、尻尾をプンプン振っている。



後にエクレールに聞いたところでは結晶獣は、魔石が好物とのこと。


とはいえ狩った魔物から入手した魔石は、書庫に納める貴重な収入源だ。


全部食べさせてやるわけにもいかない。


俺は迷ったあげく、獲物を狩った時に砕けてしまった魔石があるので、その欠片を食べさせてあげることにした。



こうしてスノウを狩りに同行させるようになって数日、お互いの存在にも慣れてきたので、


かなり森の深くまで探索を行い、そろそろ引き返そうかと思い始めたとき、俺たちは出会ったのだ。



奴らに。

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