終話 また明日って、都合よくない?
ある数学の授業があった日の放課後、ゆなは帰り支度をしていた。
すると、しばらくして教室の後ろからこごりが入って来た。
「ゆな、今日も授業終わったね。やっと帰れるよ」
「だね。いやー、帰る場所が近くてよかったなぁ」
「学校の敷地内だしね。寮って楽だね!」
「ちょっと待てー!!」
ゆなはいきなり大声を上げた。その声は教室中に響いた。
「うるさっ!鼓膜敗れるかと思ったわ!どうしたの?」
「普通ならさ、下校する時にさ、男子と帰ったりさ、するのにさ、なんで?なんで寮がある?青春させろよー!」
「なんだ、そんなことか…」
こごりはやれやれという感じだ。
「そんなことではないのだ、こごり君。学校とはそういうものなのだ。学校イコール青春、青春イコール学校だ!」
「それはゆなの個人的な意見でしょ。学校にいってるからって青春できるわけでもないのに…」
「確かにこの学校に入った時点で普通の学校生活ができるわけではない…。だが、それでもしたいでしょう、青春」
「青春ねー…私はそんなにいらないかも」
「何を言っている。まさかそなた、むっつりスケベか!?」
なぜか、ゆなのしゃべり方が昔言葉になってしまっている。
「むっつりじゃないし。さっきからしゃべり方変だし」
「あれ、あたしってなんでここに入ったんだっけ?」
「聞いてないし…そう言えば、ゆなが入った理由謎だな」
「あたしも忘れた」
「そろそろ帰ってゲームでもやろうかな。じゃあ先に帰るね、また明日ね」
こごりが教室を出ようとすると、またゆなが噛みついた。
「また明日って都合よくない?」
「はい?」
「なんか、また明日って言葉ってさ、逃げじゃない?」
「逃げってどういうこと?」
「また明日が来ない可能性もあるってことだよ」
こごりは不思議そうな顔をしている。
「何その、地球が終わるみたいな言い方。哲学的な」
「じゃあこごりん、明日地球が終わるとして、また明日って言う?」
「それは言わないよ。明日が終わることが分かってたら次の日まで起きてると思うから」
「でしょ!そういうことだよ」
「どういうこと?」
「また明日って言うとしても、また明日絶対会おうねぐらいまで入れないと、ってこと」「あーー!………分からん。もういいや。帰るね」
そう言って教室の入り口まで歩いて行った。そして、振り返りながら言った。
「また明日絶対会おうね!」
「そういうことだよ!こごりん大好き」
ゆなはその日ずっと笑顔なのだった。
マスマジックス~魔法の数学を使えるようになりませんか?~ ざわふみ @ozahumi
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