第4話 告白
僕は部活が終わってすぐに、待ち合わせ場所である校舎裏へと向かっていた。途中でスマホを操作して幼馴染達へ連絡を入れることは忘れずに。用事ができたから先に帰るようにと促すと、向こうももう部活は終わっていたらしく、すぐに返信がきた。
(わかった、私達も友達とどこかに寄ってから帰るね)
(あんまり遅くならないようにねー、知らない人についていっちゃ駄目だぞー!)
…僕は子供か。いや、二人の中ではきっとそうなのだろう。
自分達がいないとなにもできない幼馴染。そう思われてるのかと思うと、心の奥にしまいこんでいる暗い部分が、じくりと痛んだ。
やっぱりこのままじゃ駄目だ。今の関係のままでいたらきっと、近いうちにこの感情をさらけ出してしまう。仲のいい幼馴染の関係が、終わってしまう。
それは嫌だった。勝手に嫉妬して、身勝手な想いを抱くくらい今の自分は醜くなってしまったけど、せめてあの子達と過ごした思い出は綺麗なままであって欲しかった。
「あ、来てくれたんだ…」
聞こえてきた声に、僕は顔を上げた。いつの間にか校舎裏についていたらしい。やっぱり僕は最低だなと自嘲する。ここにくるまで目の前にいる彼女のことを、全く考えてもいなかったのだから。
「ごめん、待たせちゃって…えっと、A組の佐々木さん、だよね?」
ようやく僕は彼女を見た。今にも泣き出しそうな大きな瞳と夕焼けを反射するように輝く黒髪が印象的で。綺麗だなと、僕は素直にそう思った。
「はい、
最後のほうは言葉がほとんど聞き取れなかった。顔も真っ赤で、前髪をしきりにいじっている。わかりやすい子なんだなぁと思いつつ、僕はもう一度口を開いた。
「いや、断る理由もなかったし…それで、用事ってなにかな」
内心こんなところに呼び出したら言うことなんて一つしかないだろうと自分自身につっこむが仕方ない。なにせ、僕もこういうことに慣れていないのだ。
認めたくない話だが、どちらかというと女性に近いらしい僕の容姿では、どうも男としてはあまり見ることができないらしいことを友人の彼女から聞かされたことがある。
そのせいで中学生の頃はいじめが終わった後に散々女子のおもちゃにされたのだ。
そんな僕とは違って、幼馴染達は今もほとんど日替わりでされているみたいだが…
僕の思考が逸れている間に覚悟を決めたのか、佐々木さんはきゅっと口元を結び
「その、水瀬くんのこと、入学式で見た時からずっと気になってて!部活してる姿も格好良いし!わ、わたしと付き合って下さい!お願いします!」
一息で一気にそう言い放ち、彼女は頭を下げてくる。
疑いようもなく完全にそれは告白だった。
微かに震える彼女を見ながら、僕は口を開いた。
分かっていた。僕は分かってここにきたんだ。
だから僕が返す言葉も、もう決まっていたんだ。
「ありがとう、僕で良かったら…」
お願いします、そういうと佐々木さんは顔を上げ、僕を真っ直ぐに見つめてた。顔をほころばせ、大きく見開いた目から涙が頬を伝っている。
喜びの感情を露にしている彼女を見ながら、僕の内心はどこか冷めていた。
僕はやっぱり最低だ。
僕は彼女に興味がなく、
ただ自分が今の状況から逃げたいがためにその告白を受けたのだから。
それが幼馴染達との関係を壊すことになると、分かっていたのに。
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