第5話
しばらく歩くとシルレート魔法学園に到着した。
全校生徒数2500名、研究機関をも併せ持つこの学園はこの学園は改めて一つの都市と言っても差し支えの無い大きさと言えるだろう。
2年間通っていたが……圧倒的な存在感を放つ本館と学園を横断する通りそして龍でさえ優に通ることのできるであろう巨大な校門に息をのまなかったことはない。
なにより新学期、明後日に新入生の入学式を控えた今日の雰囲気は散る花弁も相まって明るく陽気な校風を思わせる。
……私達普通科は別館なのですがね。
「ノア、こっちこっち」
この学園の入学式は祭りのごとくド派手に行われるのでその日は入学生以外の人が多く訪れる(主に保護者とか)を
そういった一般客をカモにするつもりであろう出店を見て回りながらしばらく歩き別館前に着くと多くの学生が群がっている場所に出た。
……ここで少し話が変わるがシルレート魔法学園についてお話をしよう。
シルレート魔法学園は1学年あたりおよそ800人の生徒がいるのだが実際には複数の学科が設けられておりそれらを志望して受験し合格したならばそのコースに進む、と言うようになっている。
学科は全部で4学科あり、『普通科』『貴族科』『商学科』そして『魔導工学科』、その内貴族科のみが6年まであり、他の学科は3年で卒業となっている。
入学したての1年の時は『普通科』と『貴族科』、そして『商学科』が同じ扱いで、複数学科ごちゃ混ぜのクラス割りになるのだが2年からは授業を受ける棟さえ違う完全に独立したカリキュラムで学習する。
因みに『魔導工学科』は別名『地獄』と呼ばれており1年の頃からガチガチの勉強、1日中勉強しなければ授業についていけず留年は当たり前というまさに学園生活とは何かを深く考えさせられるカリキュラムになっているらしい。その上進路は研究室だったり企業の研究開発、国の魔法開発機関と一生奴隷コースだ。心の底から魔法が好きな奴以外入らないだろう。(倍率は一番高いらしい、何故だ)
どの学科も、そして1年から続くことなのだが各学科はそれぞれSクラスからCクラスまでの4クラスに分かれて授業を受ける。
そしてこれは季節の変わり目ごとのテストの結果に応じて振り分けられるのだ、競争を煽っているのはいいのだけれどSクラスは授業内容がSクラスに合わせられるためより一層SとAの差が開くのは問題だと思うが……
私(とシーラ)は普通科に所属しており、当然のようにSクラスに2年の頃から居座り続けている。
……シーラは少し怪しいが。
で、話は戻る。
正門から暫く進んだ所に数十人(いや下手をすれば100人は普通にいるだろう)の群がる掲示板がある。
そこにはどのクラスに振り分けられたのか、そして再編テストの点数が掲示されていた。
普段から学園次席をキープしている私は兎も角、Aクラスに落ちないかガタガタ震えてるシーラを引っ張っていく。
左からS、A、Bとクラスと順位、そして得点が書いてあるので私たちは迷わず『普通科3年Sクラス』の掲示板の前へ向かった。
掲示板は成績のいい順に上から書かれているので迷わず一番上だけを見る。
私はパキパキと腕を鳴らしながらまるで戦場に赴く勇士のようにその成績表と対峙した。
「さて、今回こそはレンに勝ってるといいんですが」
「あぁぁお願いですなんか運良く筆記満点とか取れてますように……」
「……シーラ自己採点してないんですか」
テストが終わったと同時に全てを忘れるタイプ、いわゆるアホな人種の事は放っておき表に目を通す。
『 振り分けテスト 学年順位
筆記(500点満点)/実技(200点満点)/合計
1位 レン=ビクティア
462/195/657
2位 ノア=アーカイブ
465/145/610
……
』
学年主席は、レン。
「やっぱり、ですか……」
「やったぁぁあぁぁあぁぁ!!」
結果を見た私はがっくり肩を落としてしまった、ちょっとシーラ落とした私の肩を掴んでガックガック揺らすのやめてください吐きそう。
いや分かってはいたが今回の実技は結構自信あった、しかしここで50点も差をつけられるとは思わなかった。
実技試験の内容は50点が戦闘で150点が技術的な実技試験だ。戦闘に関しては私も先生を倒しているはずなので……どこかで凡ミスしたのだろう。
はぁとため息を漏らす私にシーラは嬉しそうな声で慰めてくれました、……まぁそこまで落ち込んでないんですけどね。
「3位以下に80点以上差をつけてるなんて凄い凄い、私の点数見た?」
「あ、そうでした。どうだったんですか?」
「ふっ、見て驚くがいい……」
そう、じゃあたっぷり驚いてあげましょう。
自分の位置から目を下ろしていく。あのバカ二人組学年3位と4位取ってるんですか……。
あれ全然見当たらないような……、10、11、12……あ、ありました。
『……
18位 シーラ=ノーヴィス
363/95/458
……』
「ひっく、いやひっくいですね!?」
「いやぁそれほどでも……」
Sクラスの定員は優秀な学生により良い教育を施す為に他のクラスよりかなり少なく20人になっている。
とどのつまり、彼女はSクラスの最底辺である。
「ねぇ、すごくない? ギリギリだよギリギリ!」
「バカですか」
「勉強したのになぁ……」
「ま、まあ同じクラスでよかったです」
最初の頃はシーラも「もっと勉強して上を目指そう!」って感じだったのだがいつの間にか「このままでもSクラスはキープ出来るし」という思考に変わっていったのが少し悲しい訳ではないが張り合いがないっちゃなくて。
まあ実際Sクラス最下位でもAクラス1位と数十点差があるので適当にやってても大丈夫なのだろう。というかAクラス以下の人はこんな難易度の筆記テスト受けてて楽しいのだろうか、殆ど分からない問題しか出てないだろう。
「ノアがデレた!」と抱き着いてくるシーラを軽くあしらいながら掲示板を眺めていると少し気になるものを見つけました。
『Sクラスに編入生を一人受け入れる、その旨は追って連絡をする』
「編入生……ですか」
三年生に飛び入りということは交換留学生の可能性が高いだろう。この学園は入学年齢を問わないのでわざわざこの学年に入ってくる必要はないはずですし……
シルレート魔法学園は他の学園と違い提携校なんてものは存在しない、何処とも仲良くせず馴れ合わず孤高故に最強を地で行く場所だ。
その為そもそも交換留学というのも怪しくなってくる、何処ぞの重要人物だろうか。
「Sクラスに飛び入りって凄くない?何者なんだろ……」
「女子ならいいんですが」
女子ならまだしも男子なら口下手な私の事なので一言も交わさずにこの一年を過ごすことになりそうだ。
寮から出ない生活を続けている私からすれば外の世界を知れる絶好のチャンスとも言える、仲良くなれたらいいなぁとか思っておこう。
「確かに教室男臭いし、そっちのほうがいいなぁ。……まぁノアも若干男臭さあるけど」
「失礼な、最近は下着ぐらいは毎日交換してますよ」
「お風呂は?」
「……」
まぁここで話しててもきりがないでしょう、これから1年間通うことになるSクラスの教室に歩みを進めます。
「歯磨きはしてるのでセーフでは?」
「女子としての自覚を持とうよ……」
お前はまずSクラスとしての自覚を持った方がいい。
そのまま立ち去ろうとしたその時、1年生用の掲示板のあたりから怒声が聞こえてきた。
『ふざけるな! 何でこの俺がAクラスでお前みたいなのがSクラスなんだ!』
……恒例行事ですね。
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