第五章・二度目の戦争
魔王復活
魔王復活まであと一日。
ジーニアス王国周辺に軍を展開し、魔王復活と襲来に備えていた。
マッケンジーの考えでは、ジーニアス王国の少し先にある平原に魔王が現れる可能性が高いという。どういう検証をしたのか不明だが、マッケンジーの言葉なら信じられた。
復活まで残り半日。
俺、ロラン、シルキー、マッケンジーの四人は、作戦本部の天幕に集まる。戦いの最終確認だ。
「クレス。キミはこれから気配探知でこの辺り一帯を探知し続けてもらう。何か異常があればすぐに報告を頼むよ」
「わかった。任せてくれ」
「シルキー、キミはジーニアス王国の城壁で魔法部隊と共に魔獣殲滅を」
「ええ、わかってる」
「ロランちゃん……いや、ロラン。きみはクレスと敵の主力である幹部を倒してほしい」
「はい!! 私はブラッドスキュラー、お師匠さまはヒルデガルドを叩きます。その後、魔王本体を倒します!!」
「うん。ボクはここからキミたち全員に支援魔法をかけ続けて支持を出す。いいかいみんな……これが最後の戦いだ。勝って平和を掴もうじゃないか」
「ああ。終わらせる」
「そうね。返事も聞かないといけないし……」
「はい!! 私、絶対負けません!!」
これが、人類最強の勇者パーティーだ。
転生前とは違う。絆と絆で結ばれた最高の仲間たちだ。
過去のクレスが招いたと言っても過言ではない悲劇……俺は曽山光一として過去のクレスに転生。ロランを導き、勇者として育ててきた。
あんなに嫌われ、憎まれていたシルキー。
今では俺に告白。一緒に生きたいとまで言ってくれた。
俺は、シルキーの愛の告白に応える義務がある。その約束が俺に力をくれる。
マッケンジーもそうだ。
クレスを一瞬で見限り、赤の勇者抜きで魔王討伐をしようと考えていた。でも失敗……恐らく、ドラゴンの渓谷でレベル上げすることも考えていたんだろうけど、勇者じゃない一般の傭兵や冒険者には荷が重かったのだろう。数を集めることで対処したようだができなかった。
でも、今はマッケンジーの狙い通り。レベルは全員が80を超え、歴代最強の勇者としてここにいる。
ようやく、ここまで来た。
真面目に謙虚に鍛えてきた俺が、ロランという真の勇者をここまで導けた。
俺は全員に言う。
「みんな、勝つぞ!!」
「ええ。当然よ!!」
「もちろんさ。というか、ボクはすでに勝った後のことを考えてるしね」
「私、お師匠さまと一緒に勝ちます!!」
俺たちは戦う。そして、未来を掴む!!
◇◇◇◇◇◇
「……………………」
俺は天幕近くの岩に胡坐をかき、腕を組んでいた。
目を閉じ、全神経を集中……気配探知をフルに使用する。
気配探知を使用して数時間。俺を中心に半径百キロ圏内に魔獣の気配は僅かだ。今や気配探知のレベルは93……いつ、どこに現れるかわからない魔獣を察知するため、剣術よりも優先して鍛えまくった。
「ロランは最前線、シルキーは城壁で魔力を集中してる……いつでもいけるよ」
「……………………」
マッケンジーが独り言のように呟き、俺は頷いた。
魔王復活まであと数分……のはず。
俺の心臓が高鳴る……でも、不動心のおかげで集中できる。
兵士、騎士たちも準備万端だ。シギュン先生、ドロシー先生も軍に配備されてるし、メリッサは炊き出し部隊に志願したとも聞いた。
みんなが、頑張ろうとしている。
できることなら、誰も死なせたくない。
恩師たち、仲間たち、誰も───。
「──────来る!! マッケンジー、予定通りだ!!」
「了解。ゲイルコール……シルキー、ポイントAに設置した魔法トラップを。B~Eポイントは待機。敵が見えたら攻撃開始」
マッケンジーの魔法、ゲイルコール。風を使った通信みたいなものだ。
これを応用し、マッケンジーは俺たち勇者と兵士たちに補助魔法を使用する。当初は勇者だけだったが、マッケンジーは全ての兵士に補助をかけることにしたようだ。
もちろん、長くはもたない……短期決戦でいく。
「……始まったぞ!! 魔獣が出現した。大型、中型、小型……くそ、数えるのがアホみたいだ。シルキーの魔法トラップに引っかかった奴もいるな……よし、兵士たちを」
「大丈夫。もう動かしてるよ。部隊長たちに指示するのはボクの役目さ」
マッケンジーは汗だくになりながら魔力放出、そして各部隊に指示を送っている。
同時に、俺たちの頭上を巨大な水球が飛んで行った……シルキーの魔法だ。他にも炎や氷の塊が何発も飛んで行く。場所は魔獣が現れた場所だ。
「さ、クレス……きみの出番もあるんだろう?」
「ああ……」
俺は立ち上がる。
気配探知に引っかかっていた。小さいながらも巨大な気配。
魔獣たちの奥、小さな気配が一つ動く……そして、ロランの気配とぶつかった。
ロランは、吸血鬼ブラッドスキュラーと戦闘に入った。そして、もう一つの気配もゆっくり動く。
こいつは、ヒルデガルドに違いない。
「マッケンジー、行ってくる」
「うん……頑張ってね」
「ああ。
俺は大きく深呼吸し、走り出す。
同時に、風の補助魔法が身体を包み込み……なぜか、水属性の補助魔法も身体を包む。シルキーのやつ……ありがとな。
俺は戦場に向かって走り出した。
◇◇◇◇◇◇
戦場。
ここは、戦場だった。
四肢の無い人、血濡れで呻く人、転がる魔獣、暴れる魔獣……血の匂いでむせ返りそうだ。
不動心がなければ吐いていたかもしれない。
だが、俺は走る。そして……大きなトカゲ相手に苦戦しているシギュン先生たちの部隊を見つけた。
「おぉぉぉーーーーーーッ!!」
「───クレス!?」
「居合技、『一刀両断』!!」
超高速の居合切りでトカゲを両断。
弱い。たぶんレベル50かそこらだ。今の俺には敵わない。
「シギュン先生、いってきます!!」
「ああ!! 行け!! お前なら勝てる!!」
「はい!!」
シギュン先生を助けたんじゃない。見送ってほしかった。
そして、背後から声が聞こえてくる。
「さぁお前ら!! 勇者ばかりにいいところを持っていかれるな!! 我々騎士の意地を見せるぞ!!」
「「「「「おぉぉっ!!」」」」」
俺の存在が力になる。これほど嬉しいことはない。
気配探知をフルに使用し、戦場を突っ切り……ようやく到着した。
「黒騎士、ヒルデガルド……」
「クレス。ようやくこの時が来たな」
漆黒の全身鎧と兜を装着し、黒い剣を持つ暗黒騎士だ。
人払いをしたように誰もいない。近くにはロランもいるはずだが、まだ戦闘中のようだ。
俺は刀を抜き、ヒルデガルドに突き付ける。
「お前を倒す。そして魔王も倒す」
「やってみろ。正々堂々、戦おうじゃないか」
ヒルデガルドも剣を抜き、俺に突き付ける。
絶対に勝ってみせる。そして魔王も倒してやる!!
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