非人道的兵器

小高い丘にある敵の古城、

崩落した拠点からは

生き残っている魔物達が、

ぞろぞろと這い出す。


人型ではあるが、

獣のような姿をしている者達、

角、牙、爪、尻尾、

それぞれ特徴が異なっている。



その群れに向かい

猛スピードでバイクを駆る勇者。


その背後には再びゲートが開き

多連装ロケットランチャーが出現、

バイクと同じ速度で後をついて来る。


発射音と共に

魔物の群れに次々と撃ち込まれる

ロケットミサイル。


爆音と爆煙の中、

古城の瓦礫と一緒に吹き飛ぶ魔物達。


「思ったより、効いてるな」


その爆煙の中から

まだ生き残っている魔物達が姿を見せ

勇者に向かって来る。


その数はまだまだ多い、

おそらく捕まれば、

勇者もタダでは済まないだろう。


-


魔物達に充分に

存在をアピールしたところで、

勇者はバイクのタイヤを滑らせて急反転、

魔物に背を向け逃げて行く。


勇者の後を追う魔物の群れ、

だがバイクの後ろ、

その至るところで爆発が起こり

続々と爆煙が立ち上がる。


勇者はここに誘い込むために、

わざわざ目立つように

アピールをしていたのだ、

この地雷地帯に。


もちろん自分は

地中に埋められている地雷を踏まないように

細心の注意を払って。


地雷地帯を抜けたところで、

もう一度バイクを反転させ

後ろを振り返る勇者。


地雷地帯を抜けて来た魔物を、

ゲートから出したランチャーで狙い撃ち。


確実に仕留めるために

命中補正で顔面を狙い

直撃すると頭が引き千切れ吹っ飛ぶ。


-


とりあえず初陣となる奇襲を

中長距離レンジのみで制した勇者。


そのやり方は手段を選ばない、

まさしく邪道。


「やっぱり、

地雷ってすごいわ」


当然地雷も何処かに存在していたのを

転移強奪の能力で

こちらの世界に出現させたもの。

案外何処かの地中に

埋まっていたものだったかもしれない。


-


勇者はここに至るまで、

様々な能力を創造して

自分のスキルとしていたが

その大半は未だ使うことが出来ない、

無から物質をつくりだす能力のように。


それはレベルの干渉ということではなく、

能力を創造する能力、

その熟練度の問題が原因ではないかと

勇者は考えている。


現在使える能力としては、再生能力や

近接戦闘時に使える能力であり、

まだ空を飛ぶことも出来ない。


その使える能力の中で

考え出されたのが今回の奇襲作戦であり、

今の勇者が使える補助魔法である

威力アップや命中補正の魔法と

組み合わせることで、

この世界の敵にも通用することがわかり、

手探りながらの初戦としては

上々と言えただろう。



魔族が様子を見に来た時に

また引っかかるかもしれないので、

地雷は地中に埋めたままに

しておくことにするが、

人間世界であれば非難轟々であろう。


そして、改めて考えてみると、

大事なことが気になって仕方ない。


『こんな倒し方でも

レベルって上がるのか?』





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