第34話

 どうにかして脱け出そうと模索する。

だが、愛奈はかなり全力で力を出している。それを俺が脱け出すとなるとそれ以上の力になる。もちろん、それは愛奈に負荷をかけるだろう。


・・・さてどうするか。



そうだ、まだお昼なんだからそれを利用するか。

俺が外せないなら、愛奈自身に腕を離してもらおう。そうすれば、俺も愛奈に負荷をかけずに、脱け出すことが出来る。良く考え付いた、俺。マジ天才。



「おーい、愛奈、昼ごはんどうするんだ?」

「おぉ、さすがだね兄さん。それを思いつくなんて」

「でも涼也、それは私も、愛奈も、そうてしている」


・・・・な、ん・・・だと?

想定・・・済、み??・・・思いついた限りの最善手が???

思わず驚愕に顔をゆがめる。まさか、いやまるで、俺がどんな方法で脱け出そうと考えるのかが分かっていたような、完璧すぎる対応策。



あ、あれ・・・?

まさか・・・・・・・。



「俺の行動パターンと思考回路、把握して・・?」


恐る恐る、二人に恐ろしい妄想を質問する。

ま、まさか、俺の思考回路を把握するなんて・・・あ、ありえないよな!

だが、俺の予想を裏切り、二人は平然と――――――――





「「・・・何をいまさら?」」






――――なん・・・だ、と?






顔を引きつらせる俺。

満面の笑みを浮かべる愛奈。後ろに回していた手を前に出して、購買で売られているチキンカツやチョコクロワッサンなどの、普通手に入らない激レアなパンを見せてきて、ほくそ笑む優依。


昼ご飯は用意されている。もう俺の脱出案は崩壊した。


俺は思考を止めて、すぐに言われるであろう死刑宣告に身構えた。

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