第33話

沈黙は金。


やばそうな気配や、地雷臭がにおった話題には、興味を示さない。そして、首を突っ込まない。

これは、今までの人生で培われた経験則であり、俺の人生においての対人会話の鉄則である。


が。


稀に、この鉄則が通じないことがある。それが、今だ。



俺は瞬時に、自分の危険を察知して逃走経路を割り出す。

最悪、屋上から落ちたって10mかそこらである。植え込みにでも落ちれば問題は無い。

そう考えて、自分でも何に恐れているのかわからないまま、直感頼りに背を向けて逃走する寸前。





―――愛奈が、俺の後ろから抱き着いてきた。




心臓が思いっきり脈を打ったのか、胸が痛い。

同時に背中に物凄い柔らかさを感じる。どうしよう、詰んだ。

俺の体を拘束するように、腕まで抱き込んでいる愛奈。





「あのー?――愛奈さん?・・・大変なことになってますよー??当たってるとかの騒ぎじゃないっすよー???」

「・・・当ててるのよ」



何か聞いた事のある某有名セリフを俺の耳元言った後、今までよりも強い力で胸を押し付けてきた。


―――『ぎゅむ』っといった風に。


押しつぶされて、形が思いっきり変化する愛奈の豊満な胸部。

男として反応せざるを得ない状況だが、こちらに怒りの視線を向ける優依がいる為、悠長に楽しんでもいられない。


全力を出せば抜け出せられるが、愛奈がけがをする可能性があるので却下。

どうしようもなくなっている。



「愛奈さん?もう離してく「愛奈、もっとやりなさい!」――ちょっ?!」




どうにかして逃げられないものか。

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