第24話
「おーい、愛奈?」
「?……らぁにぃ?」
未だに極められている右手の拘束を、手首を回転させるように脱出しながら愛奈に話しかける。
脱出したはずの右手は速攻とられて愛奈の左手と絡められてしまった。はやいよ。
さて、そんな右手は熾烈な攻防を繰り返している状況ではあるが、その実。
まだ愛奈は俺の鎖骨をはむはむしている。
「愛奈、もう十分甘噛みしたろ?離れろぉ」
「やだ」
「やだて……」
しかも返事がノータイムである。
ってまた、右手を取られたし……。
さっきと様子が変わっているので、少し心配だなぁと思いながらも、愛奈の好きにさせることにした。
5分後・・・。
「お兄ちゃん、抱っこ」
「は?」
鎖骨の甘噛みをようやくやめてくれた愛奈がいきなり両手を上げて、俺を見上げてくる。
もう、噛んだあとがついてるし……。かわいいなぁ……。
「じ〜っ」
「…………」
声を出して『じー』っていうの、ズルい。
俺は仕方なく、そう、仕方なく愛奈の首から少しだけ下の背中と、膝裏に両手を回して抱っこ……というか、お姫様抱っこをしながら運搬することにした。
「運搬しますよ〜」
「むむっ、運搬じゃなくて抱っこ!」
「はいはい」
よく飽きないものだ。
俺は本当は愛奈の部屋に運ぶつもりだったのに、結局俺の部屋に来てしまった。
首に手を回して離れないのだからしょうがない。
「兄さん、こんな本あった?」
「ん〜?」
愛奈が指したのは俺の本棚である。
多分800冊ぐらいある本棚の本の中で愛奈が指したのは、ラブコメ系のラノベ小説がしまってある一角であった。
「あぁ。最近友達にすすめられて」
「今度読み漁りに来ますっ!」
……堂々と部屋の侵入を宣言されても。
「まぁ、良いけど勝手に他のところ開けたりするなよ?」
「はーい」
そういった次の瞬間。
「これこれ、この本だよね!」
そう言いながらある本を愛奈は手にとった。
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