第3話 呼び名

「さて、更にもう一つ決めねばなりませんね」

 話し合いが終わった後に、女性――湊青江はじっと俺を見る。

「え、他に何かあるか?」

 急に真面目な顔で言われると、戸惑う。

「ええ、あるじゃないですか」

 何を話し合うんだ、そう身構えていると……


「互いの呼び名ですよ。どうします?」


 予想外のことを聞かれた。

「呼び名、か」

「ええ、呼び名です」

 なるほど、確かにこのままでは非常に互いに気まずい。

 実際、俺は彼女のことを心の中では女性と呼び、実際には特に呼ばないように苦労している。

 ……実に非生産的である。

「うーん、どうしましょう?」

 取り合えず、女性が考え込んでいたので提案してみた。


「互いに高校時代のあだ名で呼び合うとか? 俺はシュン、だな」

「ナイスアイデアですね。では、私のことはアオと御呼びください」


 こうして、何ともなしに呼び方が決まったのであった。

 軽いな!?



            続く

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