第2話 OHANASHI

「というわけで、私たちは上野駅から徒歩十分のこの両物件をつき六万で借りれることになりました」

 この女、ヤバイ。なかなかのやり手だ。

 相手のミスを的確について、交渉をまとめ上げた。

「すごいな、お前……」

 したたかだ。

「まぁ、これくらいの交渉ならお手の物ですよ。とりあえずこれで毎月私たちはお金が浮いたわけです」

「だな」

 いや、間近で見るとその交渉力に驚かされた。

「で、ここからが本題ですが」

「ああ……」

 そして、家賃についての交渉が一通り行われたので……確実にこの後の話は理解できる。


「どう分担しましょうか、家事」


「だよな」

 何せ、本来俺は男性同士でルームシェアをするはずであった。

 しかし、今ここには男女だ。

 分担、しにくい!

「とりあえず、部屋としては共用のリビングとキッチンと風呂、そして洗面所とリビングを挟んでプライベートルームが二つ、ですね」

「そうだな」

 間取りを互いに確認する。

「……」

「……」

 気まずい。

 すごく気まずい。

「どうしましょう?」

「とりあえず高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応して艱難辛苦を乗り越えないか?」

 とりあえず、俺からはこういうしかない。

「なるほど、不定形な予定を維持しつつ互いに不快にならないように優れた判断と理性をもとにして行動する、と」

「そういうことだ」

 どうやら、話が分かる女だった。

 要するに、今下手に決めるとまずいから適当に互いにやっていこう、ということだ。

「そっちの方が、ありがたいですね」

「だよな」

 こんなグダグダのまま、俺たちの初めての話し合いは終わったのであった。



          続く

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