第6話 ロビンがしてくれた事

2月11日の午前中までどちらかと言えば食欲旺盛で普通に歩き回る事が出来ていたのに午後7時頃に私が二階から一階のロビンが過ごしているダイニングに戻ると糞尿の海でのたうちまわっていた事を既に記述していますが、その時はどこかから飛び降りて、または飛びのるのに失敗してどこか骨折して立ち上がれないのかと思っていました。


翌朝病院の診察台に乗せた時に左頬の毛がごっそり抜けている事に気づいた時、顔を思いきりぶつけたか、高い所から顔から落ちたのかもと医師に伝えている時点ではこの発想は無かったのですが、ロビンの臨終を見届けた時にこの子は私のために自殺したんだと確信したのです。


ロビンはとても頭のいい子でした。無茶をしてケガをした事は一度もありません。

寝て過ごす事が多くなってから筋力が衰え、それまでダイニングテーブルやキッチンの流し台に簡単にひとっ飛びしていたのに高齢になってから自分の運動能力をちゃんと解っているようで試し飛び(着地の際、足がショックを負担できるか計算の上)で無理そうと判断したら諦める事が出来る猫でした。


そんな子が、もう勢いよく走りまわる事が無くなったのに思い切り顔をどこかにぶつけたとは考えにくく、最後に思い至ったのは唯一ジャンプ出来るダイニングチェアから飛び降り自殺したのではないかと考えずにいられないのです。

私のために。


きっかけは2月11日朝の私が発してしまった暴言です。

もちろん猫が人間の言葉を理解出来るとは思っていません。

しかし、その時の人の想った内容をかなり細かいディティールで感じ取ることが出来るんだと今回の事で思い知らされました。


あの時、私は心の底から本当に死んで欲しい 私をこの糞尿掃除の地獄から解放して欲しいと願ってしまったのです。


ロビンはこの私の心の叫びを感じ取り、私を自分から解放するために自ら死に急いだとしか思えません。

それなのに臨終の際は私が思い描いていた理想のお別れ瞬間を彼が与えてくれました。


ペットがいれば誰しもこの子とはどんなお別れになるだろうと想像するのも嫌だけど想像する事があると思います。


実はロビンの前に人生を共にしてくれた猫が14歳で慢性腎不全で病院に入院中、私が看取る事が出来ずに一人で逝かせてしまった事をずーっと後悔しており、その事を私の思考、その際に思い浮かべたイメージをロビンは読み取っていたのではないかと思います。


そのためロビンとのお別れは私の腕の中で迎えたいという絵・イメージを思い浮かべた事が何度かありました。













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