自室にお嬢様が襲来したら……
「……眠れなかった」
俺とノアがお互い好きだってことを知ったあの日から、俺は眠ることができなかった。……そりゃそうだろ、だって俺……ノアと結婚を前提に一緒にいることになったんだから!
ああ……こうして冷静に物事を考えられるようになると、とんでもないことになってしまったぞ。け、結婚だなんて……ぜ、全然考えられないし……と、というか……つ、付き合ってるってこそすら信じられないのに。
あれは夢だったんじゃないかと何回も頰をつねってみても……覚める気配はないし。じゃああの時もキスも……う、うおおおおおおおおお!
「……あ、朝から何をしてるんだか俺は。……ん?」
荒ぶった心をなんとか落ち着けて、なんとか寝ようとした矢先、ピコンとラインの通知音が鳴る。一体誰からか……と思ってスマホを見ると、そこには
【今から純の家にお泊まりしに行くわね】
と書かれていた。……へ、お、お泊まり? しかも俺の家で? ……ノアが? …………。
「ま、まずい!!!」
おいおいおいそれはまずいってマジで! だって今の俺の部屋……あんまり綺麗じゃないし! それに柚様が勝手に来た時にも結構散らかされてしまったし……とにかくまずいぞ俺。
「よし、まずはえろ本から片そう」
最優先事項はやはりそれだ。いや、たくさん持っているわけではないけど……一冊でも見られたらやばいだろ。というわけで隠し場所は……よし、かけ布団のシーツの中にしよう! これならバレないはずだ!
「次は……単純に片付けるか」
次にノアが来ても恥ずかしくない程度に部屋を片付ける。ああ、日頃から綺麗にしておけばなあ……なんて後悔が今更襲ってくるものの、とやかく言ってる暇はない。さっさと終わらせるぞ俺!
「おらああああああ!」
朝っぱらから大掃除をする勢いで俺は部屋を片していき、なんとかお嬢様が来る前に片付けを終わらすことができた。よし、これならなんら問題はないはずだ!
「よし、あとはノアが来るだけだ…………って、よく考えたらお泊まりって……」
さっきまでは片付けることで頭が精一杯だったが、よく考えればこれはお屋敷の時はかなり違うものじゃないか。だってお屋敷にいる時は……その……間違いが起きたとしても、確実に従者たちが駆けつけて止めるだろう。だけど……俺の家にはそれがない。
……だ、だからもしかして……け、結婚を前提ってことは……そ、その……そういう事……って……わけ……なのか???
い、いや待て俺……落ち着くんだ俺……の、ノアはそういう知識は学んでいないはずだ。だからそんな意図はないはずだろ俺! か、勘違いしちゃダメだろ……俺たちまだ高校生だし、早いって。
「…………でも結婚かあ」
思えばノアと結婚することはなかなかにハードだ。旦那様と奥様はとても良い方達だし、認めてくれると思う。だけど……他の八条家の親族たちは、きっと俺のことなんて認めない。たかだか元執事が、親なしが、なんて言われるのは目に見えている。だから俺はノアへの好意を誤魔化し続けてきた。
……だけど、俺はもう約束したんだから。ノアと一緒に、結婚を前提に一緒にいるって。だから……頑張ってノアにふさわしい彼氏にならないと。
「……ん?」
そんな風に考えていると、ふとインターホンが鳴る。もしかしてノアがもう来たってことか? でもなー前に柚様が出てきたから割と怖い。さすがにしばらくは来ないと思うんだけど……。
「はーい……あ、の、ノア!」
その心配は無用だったようだ。ドアを開けるとそこには俺の大好きな……ノアがいたから。今日も美しくて可愛くて……。
「おはよう、純! ちゅっ」
「!?」
なんて見とれていたら、ノアが挨拶と同時に、唐突に俺の頰にキスをしてきた。ああ、意識が飛びそう……。
「の、ノア……」
「ふふっ。純への好きをもう思う存分出していいから……しちゃった」
「……か、可愛い……」
「ふぇ!? そ、そんなこと……じゅ、純の方が可愛いわ!」
「い、いやノアの方が可愛いよ!」
「純の方が!」
「あ、あのーお二人さん。不毛な言い争いはそこまでに」
「あ……ってなんで佐野さんが!?」
「見張りだよ。お前がお嬢様とえっなことしないか見とかないと」
てっきり俺はノアと二人っきりだと思っていたのだが……。よく考えなくてもそうだよな、絶対見張りは置いとくよな。だがよりによって佐野さんだってのが……嫌だなあ。えろ本バレないといいなあ……。
「し、しないですよ! ……ま、まあじゃあ、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
こうして、俺の家にノアと佐野さんが来ることになったわけだが……はてさて、無事にことが済むのか……少し心配。
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