覚悟を決める時


 「お、お嬢様のところ……?」


 「そうだ」


 佐野さんは車のエンジンをつけながら、俺にそう言ってきた。え、お嬢様のところに行くって……まさか迎えにきてくれたってことか?


 「ど、どうして急に?」


 「お嬢様が会いたいからだそうだ。お前だって会うつもりでいたんだろ?」


 「……はい」


 俺ももちろんそのつもりだったけど、まさかお嬢様も同じ気持ちだったなんて。……だから佐野さんが迎えにきたのか。


 「んで、お前お嬢様に会ったら告白するんだろ?」


 「え!? い、いやその……」


 佐野さんがいきなりそう言ったので、俺は驚いてしまった。な、何でそのことを佐野さんが知ってるんだよ……。いや、ディ●ニーのとき俺がお嬢様に好きって言ったことを佐野さんも聞いたのかもしれないけどさ。


 「ま、それはお前の勝手だけどさ。あーしも……頑張れよとしか言えないし」


 「……そうですよね。……でも、うまくいきますかね? 俺なんかやっぱ……」


 「おいおいここにきて自信をなくすとかやめとけ。どうせあーしがお前を車から降ろすことはないんだ。絶対お嬢様のとこ連れて行くし、逃げられねーよ」


 「う……」


 そう言われてしまったらもう本当になるようになるしかないじゃないか。


 「あ、ありがとう……ございます」


 そこまで俺の情けない背中をパシンと叩いてくれる佐野さんには感謝しかない。俺は助手席から運転してる佐野さんにお礼を言った。


 「どいたま。ま、あーしも覚悟決めたんだからな。お前にも決めて欲しかったんだよ」


 「覚悟? 何を決めたんですか?」


 「内緒(大損した賭け金のことだなんて言えるわけがない)」


 それから車はどんどん目的地に向かっていくのだが……あれ、ここってお嬢様がいる別荘に向かった道じゃないよな? どこに向かってるんだ?


 「あの佐野さん……別荘に行くんじゃないんですか?」


 「ん? ああ違うよ。お嬢様たっての希望でな、お前とお嬢様にとって懐かしくて、大切な場所に行く。お嬢様のじじいが連れてってるよ」


 「懐かしくて大切な場所……?」


 「行けば思い出すんじゃないか? 少なくとも、お嬢様にとってそこはお前のことを……おっと、それはいうもんじゃないな。とにかくお楽しみだ」


 一体どこのことを言っているのか、検討は色々とつくものの絞ることができない。なにせお嬢様との思い出は山のようにあるから。正直俺にとってお嬢様との日々はどれも宝物だし。


 「にしてもあーしはお前がこんなちっちゃい頃から知ってるけどさ。こんな成長するとは思わんかったわ」


 「まあ……いい人たちに支えられましたから。佐野さんにはたくさんいじられましたけど」


 「そりゃ純面白いし。ちゃんと詫びにいいこと教えてあげたろ?」


 「ろくなことじゃなかったと思いますけど……」


 「まあそれはお前の認識だわな。あ、そろそろ着くな。純、一旦身なり整えていくか?」


 「え、できるんですか?」


 見渡すとここら辺山だから身なりを整えられるような場所ない気がするんだけど。


 「ああ、後部座席でやりな。これ鏡とワックス」


 「な、なるほど……」


 まあこれぐらいなら確かに後部座席でできるか。正直来る前に全然身支度とかせずに連れてこられたからこのまま告白していいのかと思ってたし。というわけで俺は身なりを整えていくのだが……。


 「こ、これでいいのか……?」


 ぶっちゃけこれでいいのかと決断することができない。なるだけベストな姿にしたいという思いが強すぎてアレかこれかと迷ってしまう。


 「……たくっ。仕方ないな」


 「さ、佐野さん!」


 そんな俺を見かねてか、佐野さんは後部座席にきて俺の髪を整えてくれた。あ、佐野さんセンスあるな。これならお嬢様に告白しても恥じない姿だと思う。


 「さてと、んじゃいくぞ。あと少しで着くからな」


 「は、はい!」


 準備も済ませ、いよいよあとはお嬢様と会うだけとなった俺は……告白の覚悟も決めた。そして目的地に着くと……。


 「純!」


 そこには、お美しい姿をしたノアお嬢様が……俺のことを待っていてくれた。


   ――――――――――――

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