お嬢様のわがまま
「どうだノア、ここの別荘は?」
「え、ええ……とっても素敵で暮らしやすいですよ」
ノアが両親に思いをぶつけると決めた翌日の夜。ノアは両親とともに別荘で食事をしていたが、未だにその思いをぶつけることは出来ていない。やはりどうしても遠慮してしまうところがあるからだ。
「そうだろう。私も若い頃よくここに来ていたものだから、ここがとても気に入っているんだ」
「な、なるほど」
ノアの父親はあまり会うことができないノアに家族団欒を味わってもらいたいからか、たくさんノアに話しかけているものの……返事こそしているが、それはやはりぎこちないものとなっていた。
「それでな、どうしてここに来ていたかというと……」
「ねえ貴方、ノアちゃん元気なさそうよ?」
「え、そうなのかノア?」
「え、えっと……その……」
だが、ノアの母親は彼女がどこかうわの空であることに気づき、それを父親に伝える。だか当のノアはまだ言葉をゴモゴモさせて中々いうことができない。また心配をかけることが、やはり不安だからだ。
でもやっぱりどうしてもこれは……譲れないことだから。
「……お父様、お母様。私……純に会いたい」
二人のことをちゃんと見て、ノアはそういった。
「ノアちゃん……」
「ノア……」
二人はその言葉を聞くとしばらく沈黙が続くものの、先に口を開いたのは、父親だった。
「ノア……気持ちはわかるが、やはりまだお前を自由にはしてあげられない。またいつ六条家がお前を狙ってくるかわからないからな。……心配なんだ、ノアに何かあったら」
真剣な表情でそういう父親の言葉は、ノアが予想していたものだった。親なんだもの、そう思って行動するのはもう子供ではないノアにはわかることだ。それでも……。
「……でも会いたいの! 私、純と一緒にいたいの!」
こんなの、わがままでしかないのは彼女もわかっている。だけど会いたい気持ちが強くて仕方ないから。どうしても、わがままを貫き通したいから。
「ノア……でもな、それは……」
「でしたら、ノアお嬢様に危害が及ばないようにすれば問題がないということですか?」
「ひ、ヒカル! そ、それにセバスも」
だがそれでも中々父親が認めてくれないなか、ヒカルとセバス、二人が食卓をしている部屋にやってきて、話に入る。
「先日、お嬢様が誘拐されたのは我々執事、そしてメイドの不手際でございます。ですが……八条家に仕える者として、もう二度とこのようなことは起こさせません」
「六条家スパイも見つけることができましたので、彼らに情報が行き渡ることももうないはずです(柚様がこしょこしょ拷問したらすぐ吐いてくれたし)」
「う、うーん……」
それでも中々ノアの父親は認めることができない。やはりどうしても、心配だからだろう。ならばとヒカルは……。
「でしたら、今後お嬢様に危害が及ぶようなことがあれば……私をクビにしてもらって構いません。それぐらいの覚悟は、できています」
自分なりに、覚悟を主人に見せた。
「……私、セバスも同じでございます」
そしてセバスも。お互い覚悟を決めて主人に決意を伝える。するとノアの父親よりも先に母親が……。
「いいじゃない貴方。ノアちゃんすごく会いたそうだし、ここまで二人が言ってくれてるんだから……貴方だって、私と付き合うとき色んな反対押し切ったんでしょ?」
「……そうだな。その通りだ。恋をした人間は、誰にも止められないのは、俺が一番わかっていることだったな」
そういうと父親は椅子から立ち上がってノアの元にいき、背中をポンポンと叩いて、こう言った。
「頑張ってきなさいノア。純はきっと、君を幸せにしてくれる人だから」
「……はいっ!」
そしてノアは残りのご飯を急いで食べて、外に出る支度をし始める。その間ヒカルとセバスは車やらの準備をしながら、二人で喋る。
「たくっ……クビまで賭けちまった。タダでさえ大損しそうなのに」
「そうは言っても後悔はしていないだろう?」
「ま、そうだな。それはじじいも一緒だろ? ノアお嬢様には、常に元気でいて欲しいって思いも」
「当たり前だ。私はノアお嬢様を子供の時から見ているからな」
「それはあーしも一緒な。さあて、さっさと純を迎えに行かないとなあ」
ヒカルとセバスは笑いながらそういい、準備を済ませてノアを待つ。だが……。
「ああ、どうしよう……こっちの服がいいかしら……そ、それともこっちの服が……あ! ちゃ、ちゃんとお風呂に入っていい香りにしないとだわ!」
「……あ、こりゃ今日は無理だな」
ノアがあたふたとしながら純と会うためのコーデを考えているため、一向に準備を終わらせていないから……結局、この日はどんな服装で行くかを決めるだけにとどまった。
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