ディ●ニー前日


 「いいすね〜ディ●ニー。あーしも行きたいんすけど、ついて行っちゃダメスカ?」


 「ダメに決まってるわヒカル。私と純のペアで行くんだもの〜」


 ノアの自室でヒカルが髪を手入れしながら、二人は明日のことについて話す。そう、明日はノアと純が一緒にディ●ニーに行く日だ。そのためノアはウキウキしながら常に笑顔でいた。


 「ま、そりゃそうすね。つーか二人とも初めてなんで色々知らないんじゃないすか? ガイド役とか必要でしょ? やっぱ私も連れて行った方がいいんじゃ」


 「大丈夫よ。この前桃原さんから色々教えてもらったもの。オススメのアトラクションとか、あと……バエ? スポットも教えてもらったわ」


 「なんだ……」


 「あらヒカル、そんなに行きたいの?」


 「もちろん。そりゃあディ●ニーってのは友達と行っても、家族で行っても恋人といっても夢が叶う最高の場所ですよ? できれば月一で行きたいすわ」


 「でもヒカル、貴女彼氏いないじゃない」


 「ごはっ!」


 ノアにさらっと辛い現実を突きつけられて、ヒカルは心にダメージを負って一旦手を止めるものの、なんとか持ち直してまた手入れを始める。


 「いうてお嬢様も彼氏はいないじゃないすか。まだ」


 「そ、それは……も、もうすぐよ! も、もうすぐ……もっと距離を縮められると思うの」


 「距離ですか……」


 確かにヒカルから見ても以前より二人の仲は確実に進展している。それはあれだけノアが猛烈に迫っていけばそりゃそうなるに決まっている話ではあるが。でも、ヒカルから見てまだ二人には……。


 (まだまだ距離あるよなあ。だって純がなあ……まだ「お嬢様」を「お嬢様」だと思ってるだろうし)


 結ばれるにはまだまだ距離があると感じていた。執事をやめたとしても、タメ語で話していたとしても、純がノアのことを「お嬢様」として見るのをやめない限り、二人が付き合うことがないとヒカルは考えているから。


 (ま、うちからしてみれば賭けには勝てるからいいけどさ。あ、でもこのままだと永遠に付き合わないまであるのか……それはダメだな。かといって彼氏できたことないうちがどうこうできるかっていったら……なあ)


 「ねえ、ヒカル、ヒカルってば!」


 「あ、すみませんお嬢様。考え事してました」


 「もう。……じゃあもう一回話すわ。……私、ディ●ニーで……純に告白しようと思ってるの」


 「へえ、それはそれは…………………………ええ!?」


 ノアから出た衝撃発言にヒカルは思わず大声をあげて驚いてしまう。まさかお嬢様からこんなことを言い出すなんて、考えもしてなかったからだ。


 「まだ、迷いはあるわ。とっても怖いし……。でも、ディ●ニーに一緒にいけば……もしかしたら、もっと距離を縮められるかもしれない。告白が、絶対に失敗しないぐらいの距離になるかもしれないわ」


 「は、はあ……。ま、まあ確かにディ●ニーマジックってあるとは思いますけど、初めてでそれはハードル高くないすか?」


 「でもまたいつ来られるかわからないわ。今回だって、ヒカルを含めたみんなが必死にチケット取ってくれたんでしょう? また苦労をかけるのも良くないわ」


 「別にうちらはお嬢様が充実した生活を送れるようにするのが仕事すから。それぐらい気にしないですよ。でも……うーん……」


 別に行こうと思えば行けなくもない場所だ。チケットだって頑張れば取れる。でも……ノアがこれだけ覚悟を決めた目をしているのに、それを邪魔するのは流石に人としてどうなのかとヒカルは思う。


 (……ま、なるようになれか)


 賭けた金は惜しいが、二人が無事ゴールインするのが一番だ。そう思ったヒカルは心の中でちょっぴりやれやれとため息をついて、こういう。


 「ま、なら頑張ってください。応援してますよ」


 果たして距離がどこまで縮まるのかはわからないけど。純もディ●ニーに行くことで何か変わるかもしれないし。というわけでヒカルは素直に行く末を応援することにした。


 「ありがとう! ……じゃ、じゃあ頑張るわね!」


 「うイース。んじゃあーし寝ますね。おやすみなさい、お嬢様」


 「ええ、おやすみなさい、ヒカル」


 そしてヒカルは髪の手入れをすませると、自分の寝室に戻るため長い廊下を歩いていく。


 「……ん? なんだじじい? そんな深刻そうな顔して」


 「……深刻な事態だからだ」


 「……ふーん」


 その途中、執事長のセバスが深刻な表情をしてヒカルの前にやってきた。わざわざこんな夜の時間に、メールではなく直接会いに来るとはよほどのことがあったのかとヒカルも察する。


 「んで、何があったん?」


 「……それがだな、六条家のあの方も明日ディ●ニーに行くそうだ」


 「……おい! クッソどうでもいい情報じゃないか!」


 六条家。それは八条家が古くから因縁の相手として争い合ってきた、言わば犬猿の仲の一族。だが現在では六条家が関西を拠点とするようになったため、あまり関わりがない。それでも時折彼らからの妨害工作が起こっているため、八条家にとって警戒するべき存在には変わらないのだが……。


 ただ、ディ●ニー行くことまで警戒する必要があるのかとヒカルは思って突っ込んでしまった。


 「私もそう思っていた。だがな……奴ら、お嬢様たちがディ●ニーに行くと決まった後に行くことに決めたようだ。……奴らが大好きなユニ●に行く予定を変えてな」


 「……そう言われると確かに、怪しいといえば怪しい。……となると、やっぱ狙いは……お嬢様か?」


 「間違いない。八条家唯一の跡取りであるお嬢様を拐えば、こちらにいくらでも理不尽な要求をできるだろうからな」


 「はあ……せっかくお嬢様が覚悟決めたってのに……。んじゃ、うちらが裏で片すしかないか」


 「ああ。他にも声をかけるが……お嬢様がディ●ニーに行く情報を漏らしたスパイがいるかもしれん。私はそれを探す」


 「了解。……しっかし奴らもなかなかのやり手だからなあ……心配。ま、でもあの二人のためだ、やってやるか」


 こうして、執事とメイドも覚悟を決める。果たして明日、無事に純とノアは過ごすことができるのか……それは、神のみぞ知る。


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