テスト真っ最中
中間テスト、二日目を迎えた。1日目は得意の国語と社会だったため、おそらくこの科目は問題ない。心配なのは……二日目にある数学だ。何もめちゃくちゃ苦手と言うわけではないものの、下手したらここで差をつけられてしまうかもしれないからだ。
あのイケメンがどれほどの成績なのか正直わからないし、点数は取るに越したことはない。だからこそ日頃の勉強がものをいう数学は今回の勝負の肝と言える。
「随分と自信がなさそうなツラだな! どうした? 先に八条さんを譲ってくれてもいいんだぞ?」
どうやらイケメンは自信があるらしく、意気揚々と俺に煽り口調で話しかけてきた。なんだこの自信? いくら自分に自信があってもここまでビックマウスを叩けるものなのか?
「譲るわけないだろ。なんだその自信」
「ははは! 所詮結果なんてわかりきったことだからな。君が負けることなんてさ! だから俺は結果が出て君が惨めな思いをする前にわざわざ提案してあげたってことさ!」
「余計なお世話だ」
うわーこいつめんどくせ。相手にしないでおこ。
「ふん、精々頑張ることだな。さて、俺は最後の詰めをしてくるから、失礼するよ」
聞いてもないのにいちいち自身の動向を説明して、イケメンはどこかに行ってしまった。なんなんだよほんと……。ん? でもあいつ教室から出て行ったぞ? 一体どこに行くんだか。……ま、気にしてる場合じゃないか。俺も最後のあがきをしないと。
……そういえば、お嬢様もどこ行ったんだ? 今日は朝にご挨拶してもらって以降、いつもなら一緒に勉強しようって行ってくれるのにどこかに行ってしまって……。
……今は気にするときじゃない俺! お嬢様のためにも頑張らないといけないんだから、精一杯一人で勉強するべきだ! ああそうだ!
と、そんなわけでテストが始まるまで俺は一人黙々と勉強していった。やっぱしてよかったな。案外直前になって解けるようになる問題もあったし。……しっかし、お嬢様、どこに……。なんか、最近常に一緒にいるからいないと……。
「純!」
「おわっ!?」
俺がキョロキョロとお嬢様のことを探し出すのと同時に、お嬢様が俺の体に思いっきり抱きついてきた。危うくまた気絶しそうになるものの、ここでそれやったら元も子もないので舌噛んで堪える。案外効くんだなこれ。
「の、ノア……。どこ行ってたの?」
「ちょ、ちょっと色々とね。でも安心できることがあったわ」
「安心できること?」
「ええ。だから純は思う存分テストで結果を出していいわよ」
「鼻からそのつもりだけど。でもあのイケメン自信満々だったし、ちょっと不安……え?」
もうすぐ試験の時間となる少し前に、イケメンは教室に戻ってきたのだが……なんか、さっきの自信がそぎ落とされたみたいに絶望した顔してるんだけど。一体何が……あ、まさか!?
「の、ノア……あいつに何かした?」
「いいえ。私は何にもしてないわ。強いて言うなら……彼の身から出た錆かしらね」
そう、お嬢様はニコッと笑いながら言う。……ま、今は気にしないでおくか。俺は俺がすべきことをするだけだし。
★★★
遡ること数十分前。
(……ははは! バカなやつだ、必死に勉強なんてしてさ! 俺にはこのテストの答案があるってのに!)
人気のない洋式トイレにて、一人のイケメンが数枚の紙を見てほくそ笑む。その紙は彼が極秘で入手したテストの答案で、これさえあればテストで満点取ることは造作もない。
(これで俺は八条さんと付き合うことができる……あの美貌を俺だけが堪能できるんだ……ははは!)
それを手に入れたからかイケメンはすでに勝った気満々であり、心の中で高笑いが止まらない状態である。
(さて……そろそろ行くか。答えもバッチリ覚えたし、あとはテストにそれを書けば……!?)
「こんちゃー」
トイレからイケメンが出ると、そこには男子トイレにも関わらずメイド姿のチャラチャラした女性がいた。あまりに突然のことで、イケメンは唖然としてしまう。
「は!? え!? こ、ここ男子トイレ……」
「うん、うちも入りたくなかった。くせえし。でもまあ、うちの可愛い主人のためなんでね」
「しゅ、主人のため……?」
「まあ、そんなことはいいんだよ。本題はね……あんた、テストの答案買ったっしょ?」
「!?」
メイド姿の女性は、イケメンにそう言うとサッと彼が手に持っていた答案を奪う。
「な、なんなんだお前は!? そ、そのことをどこで!?」
「スパイ業務も時たまさせられるんでね、これぐらいは簡単よ」
「くっ……。で、でも俺はテストの答案を丸暗記したからな! 昨日のテストだってそうだ! 今更遅いし、それにあんたがそれを言いふらしたって男子トイレにいるメイドの言うことなんて誰も信じないだろうしな!」
「それはいえてる」
明らかに不審者側なメイドであるため、ここで暴露したところで先に捕まるのはメイドだ。だが、彼女は一切焦った様子を見せずに、ニヤニヤしながら余裕すら感じる態度をしている。
「でもさー根本的なところであんた詰んでんのよ」
「へ?」
「その答案、全部嘘だよ」
「……は?」
その言葉を聞いた時、イケメンはまた唖然としてしまう。
「お、お前こそ嘘をつくな! なんだ、お前がこれを売ったのか?」
「うん、そうだよ。これ履歴」
「……え」
メイドはイケメンが購入するときのやり取りの履歴を見せて、彼もそれが自分であることがわかりガクガク震え出した。
「1日目で気づくと思ったんだけどねー。ま、無駄な暗記乙ってことで!」
「ああ、あああ!」
ショックでイケメンはトイレから飛び出していき、どこかに行ってしまった。そしてメイドはトイレの窓からヒョイっと外に出て、ある教室の窓に向かう。
「終わりましたよ。ま、案の定バカでしたわあいつ」
「ありがとうヒカル。これで純が正々堂々戦えるわ」
「純と戦える基準にも達してなさそうですけどあれ。ま、でももしかしたら火事場の馬鹿力発揮していい成績出すかもですね」
「それでも純は絶対勝つもの」
「間違いないっすね。んじゃ、お二人の検討祈ってますよ」
そう告げて、ヒカルはお屋敷に帰っていった。これが純の知らない、あることの顛末。
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