かませ犬登場
「明日からテストか……」
6時間にも及ぶ退屈な授業を終えた後、ついため息をつきながらそう言ってしまった。お嬢様と一緒に勉強したとはいえ……やっぱりテストってのは緊張する。それにこの前またお嬢様の前で気絶してしまったし。
……俺はテスト勉強をするよりも気絶しないようにする訓練をした方がいいのではないか?
「どうしたのかしら純?」
「の、ノア! い、いやその……テスト不安だなあって」
「純なら大丈夫よ。それに私と一緒に勉強したじゃない」
「いやまあそうだけど……ん?」
ふとずんずんとこちらに歩いてきてる一人の男子に気づく。クラスメイトか? でもぶっちゃけ俺お嬢様以外のクラスメイト誰一人として名前すら覚えてないんだよなあ……。
「八条さん、お話があるんだけどちょっといいかな?」
あ、お嬢様に話しかけてきた。なんだかイケメンで自分に自信がありそうな感じの人だな。にしてもお嬢様に一体なんのようなんだか……。
「よくないわ。今、純と一緒にお話ししてるの。邪魔しないで」
「っ!?」
割と俺は内容が気になってたんだけど、お嬢様は一切相手にせず軽くあしらってしまった。それを聞いてイケメンは驚いて唖然としてる。……でも少し嬉しい。
「だ、だが聞いてもらうぞ! 八条さん、俺と付き合ってくれ!」
「……はあ?」
何を言うかと思えば……。お嬢様に好意を抱かない男性なんてこの世にいないことは間違いないけど、いきなり告白するのはどうかと思うぞ。
「いや」
お嬢様も呆れた表情で「いや」の二文字しか返答してないし。
「た、頼む! そこの冴えない男と比べて俺は君にふさわしいだろ! 俺はイケメンで身長が高いし親も社長なんだ! これ以上君にふさわしい男はいないだろ?」
日本有数の名家である八条家次期当主のお嬢様に親が社長自慢は愚かとしか思えない……しかも自分のことじゃないし。でもイケメンで身長が高いってのは本当だ。……見栄えだけなら、俺なんかよりも全然お似合いだな。
「……何を言っているのかしら? 純以上に私にふさわしい人なんていないわ」
「……え?」
だけどお嬢様は、怒りの表情を見せて冷たい声でイケメンを威圧しながらそう言う。
「り、理解に苦しむね! そんな大したことないやつ、どうして八条さんにふさわしいんだい?」
「純はすごいの。私のわがままをいつも聞いてくれるし、料理も上手だし、書く小説もとっても面白いのよ」
「最後のはいらないからノア!」
お嬢様に褒められて嬉しいけど小説は褒められたくなかったなあ!
「ふ、ふん。それがどうしたってんだ。なら勉強はどうなんだ? そうだ、テストでこいつを負かせば俺と付き合うことを認めてもらってもいいかい?」
「な、何を言ってるんだ!?」
一方的にイケメンは話を進めていき、俺とテストで対決することになりそうだ。いやいや、でもお嬢様がその話を受けるわけが……。
「いいわ。受けて立とうじゃない」
受けちゃったー! なぜかお嬢様が好戦的だけど。……もし俺が負けたらこのイケメンと付き合うことになるのに……。
「随分と自信満々だね。それとも俺と付き合えるからいいってことかい?」
「純が勝つに決まってるもの。なんとでも言いなさい」
だけど、お嬢様は俺のことをとことん信用してくれているようで。はっきりとした物言いでイケメンにそう言う。
……そっか。お嬢様は俺が勝つって信じてくれているからこんな堂々と勝負を受けたんだろう。なのに信頼されている側の俺が消極的なのは……お嬢様に失礼だよな。
「ふん。と言うわけだ。君、自信がなさそうだけど、まあせいぜい頑張ってくれたまえ」
「……誰が自信がないだって? やってやるよ。俺が勝ったらもう二度とノアに話しかけるな」
「な、なんだ急に……。ま、まあ口だけじゃないことを祈るぞ。では、お互い全力で頑張ろうじゃないか」
と言うわけで、俺は名前も知らないイケメンとお嬢様をかけてテストで勝負することになってしまった。……やっぱ、お嬢様と一緒にいるといろんなことが起こるなあ。
「それじゃあ純、最後の追い込みとして一緒に勉強しましょ」
「うん。……ありがと、俺のこと信頼してくれて」
「っ! あ、あんな失礼な人が純に敵うはずがないもの! それに私は……純のこと、世界で一番頼りにしてるから」
「……こりゃ負けられないな」
「負けないでしょ?」
「……もちろん」
お嬢様の問いかけにニコッと俺は笑う。俺が世界で一番愛してるお嬢様が、世界で一番頼りにしている俺が……負けるわけない。
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