お嬢様はライバルを蹴落としたい


 「ねえヒカル。貴女、秘密調査はできるかしら?」


 「なんですかいきなり」


 ノアの部屋。今日のノアはいつものように純のことを思って暴れているわけではなく、真剣な眼差しでヒカルにそんなことを言っていた。


 「ライバルが出てきてしまったのよ! こ、このままじゃ純が取られてしまうかもしれないわ!」


 「へーそうなんですね」


 ヒカルは薄っぺらい反応を返す。なにせことの顛末は部室に仕掛けたカメラで見ていたからだ。また厄介なことになって少しだけ、ヒカルは純に同情していたぐらいだ。


 「な、何よその薄っぺらい反応は! 重大事件なのよ! 私の未来の旦那が寝取られてしまうかもしれないのよ!」


 「あーしはお嬢様が寝取られるなんて言葉を知っている方がショックですよ。どこで知ったんすかそんなもの」


 「純の書いた小説にあったじゃない。私にそっくりなお姫様が敵国の王子に寝取られそうになったって」


 「そういえばそんな描写が……(あれ闇深かったなあ)」


 「でもそんなことはどうでもいいの! ねえヒカル、秘密調査をしてちょうだい!」


 「嫌ですよ。めんどい」


 八条家専属メイドとして、スパイ活動のノウハウも嗜んでいるヒカルだが、はっきり言ってこの調査はする必要がないため素直に主人に対して面倒といった。そもそもあの純がノアを差し置いて他の女と付き合うわけがないだろうから。


 「そもそもお嬢様。作者がネタ切れして苦渋の決断で出したようなぽっと出の女にノアお嬢様が負けるポイントなんてないじゃないですか。幼馴染で、美少女、なおかつ巨乳で金髪ですよ貴女。だから余計な心配しなくていいです」


 「そ、そうかしら」


 「はい。なんで調査はしません。てかそもそもお嬢様、純は高校生活を充実させたいからこの屋敷を出て行ったわけで。楽しそうに学校生活を送ることを邪魔するのはまずいんじゃないすか?」


 「う……」


 「だからここは素直に本好き仲間を作れた純を祝福するべきでは?」


 「う……そ、その通りね……」


 珍しく正論を言ったヒカルにノアは言い負かされてしまい、その意見を認めた。好きな人が楽しく送れるかもしれない生活を邪魔するのは、ノアとて本意ではないからだ。


 「じゃ、じゃあ私もあの輪に入りたいわ! 純のお友達なら、私もお友達になりたいもの!」


 「え」


 だがお嬢様の要求は波のように続いていく。今度はお友達になりたいなどと言い出して、ヒカルは思わず「え」と言ってしまう。あれだけ圧をかけてしまったため、今からお友達になるのは相当難しそうだと思うからだ。


 「うーん……ま、まあやっぱ共通の話題として本の話でも持ち込めばいいんじゃないすか?」

 

 しかしここで無理と正直にいえばまためんどくさいことになりそうだったので、当たり障りのない答えでこの場を濁す。


 「わかったわ! じゃあ明日頑張ってその話題を持ち込むわね」


 「ガンバっすー。そんじゃ私はここで……ん? なんだじじいからメールか。たくっ……こんな夜になんのようだって……え」


 自身の部屋に帰ろうとしたヒカルは、その前に執事長から来た【緊急事態発生】と題されたメールの内容に驚愕してしまう。


 「どうしたのヒカル?」


 「え、いや、な、なんでもないっすよ〜。そ、そんじゃあーしはここで……ってああ!!」


 逃げ出そうとしたヒカルだったが、名家のお嬢様としての才能を無駄に発揮しヒカルからスマホを奪って画面を見る。するとそこには……。


 「じゅ、純が……あの女と二人っきりで歩いてる……!?」


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