お嬢様にライバル登場?
お屋敷で寝泊まりした日から数日後。学校の授業が終わり放課後に、俺とお嬢様はいつものごとくだらだらとしていた。
「ねえ純。このお話素敵じゃない?」
「ん? ……ってこれ俺の中学の時に書いた小説!? ど、どうしてそんなものを!? い、今すぐ捨てて!」
「ヒカルからこの前もらったの。ああ、素敵だわ……お姫様と従者が結ばれるこの展開」
「あ、ああ……ふんぬ!」
目の前でお嬢様に黒歴史を読まれて、泡吹いて倒れそうになるが……なんとか耐えてお嬢様の隙を狙ってなんとか取り返すことができた。あのくそメイド……。
「あら、まだ読みたかったのに」
「絶対ダメ! はあ……ノアにはこれが……ん?」
この部室にある本は、あらかたお嬢様は読んだことがあるものの、俺の黒歴史を読まれるよりはずっとマシなので代わりの本を読ませようとしたら、ふと部室のドアが開いた。
はて? この部活は俺とお嬢様しか所属していないし、顧問もいないようなものだから来る人なんているはずがないんだけど……。
「あ、あの……文芸部ってここですか?」
入ってきたのは、メガネをつけた大人しそうな小柄の女の子だった。何やらドキドキしながら入ってきたようだ。
「は、はい……まあ一応」
「よ、よかった……。わ、私……文芸部に入りたいなって思ってきたんです」
まさかの入部希望者。もう一生来ないと思っていただけに正直驚いてしまったが、嬉しくもある。だって本仲間を増やせるのはいいことだろ?
「え! 嬉しい……あ、俺、野原純って言います」
「私は桃原瑠美(ももはらるみ)です。学年は一年生です」
「あ、一緒だ」
「そうなんですか! あ、確かに上履きの色が一緒! じゃあいまいるのは一年生だけってこと?」
「そうだね。まあ廃部になりかけだったみたいだから。でも三人目が来てくれて本当に嬉しいよ」
同い年ということもわかって俺と桃原さんの距離は縮まっていく。次第とタメ口になっていたし。
「オススメの本とかある? 私、野原くんのオススメ聞きたい」
「もちろん。えーっと………………」
俺が本棚からオススメの本を取り出そうとした時、隙を突かれて片方の手をお嬢様の腕に絡まれてしまう。しかもいつもよりもずっと力が強い気がする。
「の、ノア?」
「気にしないでいいの純。オススメの本、紹介してあげて♡」
さらにいつもよりもすごく優しい声でお嬢様がそういう。優しすぎて恐怖すら感じてしまうほどだ。え、一体どういうこと?
「う、うん……。桃原さん、この本とかオススメだよ」
「わー面白そう!」
「そうなんだよ。これは……」
俺は桃原さんに本のオススメポイントを紹介していく。それはまあ問題ないんだけど、ただ、横なら並並ならぬオーラを出しているお嬢様が気になって仕方がない。
「へ、へえ……。……ね、ねえ野原くん。そ、その……よ、横の人って……?」
桃原さんもそのオーラを感じ取ったのか、恐る恐るそのことを指摘してきた。
「純の大切な人よ」
「の、ノア!?」
その指摘をされた時、お嬢様はドヤ顔でそんなことをいう。
「ふ、ふーん……。じゃ、じゃあ付き合ってるってこと?」
「!? い、いやそういうわけじゃ……」
「!? い、いやまだそういうわけじゃ……」
密着しながらそんなことを言ったら、そりゃ付き合ってるって勘違いされるに決まってる。俺もお嬢様もお互いにそれを否定した。……もちろん、付き合いたい気持ちはあるけどさ。
「そうなんだ……じゃあ親友ってことかな?」
「ま、まあそういうことかな」
「親友よりも深い仲よ」
「の、ノア!?」
なんかすごくややこしい関係ってことになるけどそれ!
「ふ、複雑なんだね二人の仲って……。は、話し戻そうか! この本のオススメポイントもっと聞かせて!」
これ以上踏み込むと面倒ごとが起こりそうだと察したのか、桃原さんは話を本に戻した。それ以降俺らは楽しく本のお話をすることはできたのだが……。
時々お嬢様が桃原さんに殺気すら感じる視線を向けていた気がするのは……気のせいかな?
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