お嬢様とデート?
都内某所。お嬢様との待ち合わせ時間よりも30分前から集合場所に着くため、急いでそこに向かっていた。
だってお嬢様をお待たせするわけにはいかない。お嬢様が集合場所についたときにすぐ行けるようするべきだろ? だから予定よりも早い時間に行くってわけだ。まあ……楽しみすぎて待ちきれないってのもあるけど。
「よし確かあそこが集合場所……って、ええ!?」
集合場所に着くと、そこには……。
「こんにちは、純。あら、とっても素敵な格好ね」
集合時間より30分早いはずだったのに、そこにはお美しくて可愛いお嬢様が、とてもお似合いでお洒落な服装をして先に待っていた。
普段の制服姿もすごく可愛いんだけど、今日の格好は……お嬢様の良さをとことん突き詰めたファッションなんだろう。お嬢様の良さが全面的に引き出されてるよ……!
「い、いや俺よりもノアの方がすごく……いい」
「! ……あ、ありがとう。ヒカルと一緒に選んだから大丈夫だと思ったけど……純に褒められると、すごく嬉しいわ!」
ああ、お嬢様の笑顔もとても素敵だ。これ、映画に集中できるかすごく不安にもなってきたな……。あれ、そう言えば今日ってなんの映画を見るのか聞いてなかったな。
「そ、そういえば今日ってなんの映画を観に行くの?」
「セバスからもらったチケットは「汝の名は」よ。純は観たことあるかしら?」
「いや……観てないかな。でもそれって数年前の作品じゃないの?」
「セバスが私たちのために手配してくれたらしいの」
「へえ……執事長が」
一緒に働いてる時は厳しい上司って感じだったけど、こうした面もあるんだなあ……。せっかくのご厚意を無駄にするわけにもいかないな。楽しませてもらおう。
「じゃあそろそろ行きましょうか」
「う、うん……手、手は繋がなくてもいいんじゃ?」
「いやよ。だってこれはデートだもの」
「!?」
で、デートって……。お嬢様はきっぱりそう言い切ってるけど、そんな恐れ多いことのわけが……。で、でもやっぱり二人っきりで映画を観に行くってことはそういうことって認識してもいいのかな……?
「ヒカルが言ってたわ。男女二人っきりで歩いたらそれはデートだって」
「……ああ、なるほど」
と思ってたけど。どうやら佐野さんの入れ知恵らしい。そっか……あの人が意味を拡大して言ったからお嬢様が勘違いしてしまったのか……。いや別にお嬢様自らデートだって思ってくれたことを期待してたわけじゃないからな!
「さあ行きましょう純。私今からでもウキウキしてるわ」
「お、俺もだよ」
そんなわけで、なんだかんだ俺たちは手を繋ぎながら映画館まで向かう。その途中すれ違った人が時々お嬢様を見て「うわ、すげー美人」やら「いいなあ彼氏」とか言ってくるので恥ずかしいような、誇らしいような、複雑な気持ちになったのは言うまでもない。
「なんだか今日はいつもより人の視線をよく感じるわね。純がかっこいいからかしら?」
「そ、そんなことは……。ノアがすごい美人だから……みんな見るのは仕方がないんじゃないかな?」
「そうなの? でも私は純にだけ見てもらいたいわ」
「え」
「だって今日の服装も純のために着てきたんだもの。だから純も私だけを見ていてね」
「!?」
お嬢様は俺の方を見ながら笑顔でそんなことを言ってくれる。いやいや、こんなことを言われたらますます好きになってしまうというか……。で、でもお嬢様はどう言った心境で言っているんだろうか?
も、もしかして……。
「そ、それって……ん?」
「あのーすみません」
質問をしようとした矢先。目の前にスーツを着た女性の人が俺たちの前に立って呼びかける。
「私こういうものなんですけどー。これに興味とかあります?」
「……も、モデル?」
どうやらモデル事務所の人らしい。まあお嬢様の美貌だったら勧誘が来てもおかしくないし……ってなんで俺に名刺が渡されるんだ?
「お兄さんかっこいいのでモデルにスカウトしたいんです。どうですか?」
「あ、俺がスカウトされてたんですか!?」
てっきりお嬢様がスカウトされたのかと思ったが……まさか俺だったとは。でもなんかスカウトされるのって悪い気はしないな。もっと美を高めるためにも少し話を聞くのも悪くないか……。
「………!!!」
「の、ノア……?」
なと思っていたけど。いきなりお嬢様がぎゅっと俺の腕を掴んで女の人を睨む。
「え、えっと……ご、ごめんなさい! 失礼します!」
その迫力に負けたのか、女の人はそそくさと立ち去っていった。
「ごめんなさい純。つい、純のかっこよさが日本中に広まってしまうのが怖かったから……」
「い、いや……大丈夫。それに……俺はノアにさえかっこいいって言ってもらえたら……俺は満足……あ」
な、なんて本音をぽろっと言ってしまったんだ俺は! ああ恥ずかしい! 穴があったら今すぐ入りたい! 閉じこもりたい!
「……ふふっ、嬉しいわ純」
だけど、お嬢様はその言葉を受け止めて、爽やかな笑顔を俺に向けてくれた。ああ、やっぱりお嬢様こそ正義だ。モデルなんかにならなくても、お嬢様と一緒にいられるだけで俺は幸せだ。
「ねえ純。私、純と一緒にポップコーン食べたいわ。早く映画館に行きましょう」
「う、うん。わかった」
そして俺たちは映画館に、まるで本当に恋人みたいに向かっていくのだった。
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