お嬢様と映画鑑賞
映画館に着いた。どうやらここは八条家が所有している映画館らしく、今日は俺たち二人の貸切ということになっているらしい。だから全く人がいなくて、やけにロマンティックなBGMの音だけが聞こえてくる。
「ねえ純。このキャラメル味のポップコーンとっても美味しいわ。純も一緒に食べましょう?」
そんな中、俺たちは映画上映時間よりも結構早く着いたのでテーブルに座ってポップコーンとかを食べていた。
「え、で、でも……」
「あら、遠慮してるの? なら私が食べさせてあげるわね。あーん」
「!?」
お嬢様がポップコーンを取っては俺の口元に当てて、ニコリと笑いながら食べさせようとする。前にもご飯を食べさせてもらったことはあるが……やはりなれるものじゃない。恥ずかしい。
……だけどめちゃくちゃ嬉しい。だからか俺は自然と口を開けて食べてしまう。
「……ほんとだ、美味しい」
「よかった。純が美味しそうに食べてくれて私も何よりだわ。じゃあ今度は純の塩味のポップコーンちょうだい」
「……それってやっぱりアーンってした方がいいの?」
「もちろんよ。ほら純、早く早く」
「う……」
別に俺もこれが初めてってわけじゃない。だけどなんか妙にロマンティックな映画館のBGMがそれっぽい雰囲気を醸し出してくるので……お嬢様のことをいつよもり意識してしまうというか……。
「あ、あーん」
「……こっちも美味しいわ! 純の選ぶセンスはやっぱり素敵ね!」
美味しそうに食べるお嬢様のお姿はやっぱり可愛くて美しくて……。ああ、やっぱり好きだ。なんだかこのまま「汝の名は」を見てしまったら……勢いのまま告白してしまうかもしれない。
それぐらい、今の雰囲気はロマンティック極めているのだ。
「……あれ? 純、あれって……」
「ん? ……え」
そんなロマンティック極めている空間に、それを崩しかねないあるものが現れた。そのあるものというのは……。
「ぷ、プリキュアだわ!」
そう、プリキュア。あ、多分ぬいぐるみの中に人が入ってる系だけど。だが、お嬢様は何を隠そうプリキュアが大好きだ。俺が執事をしていた時は毎週日曜日に欠かさず一緒に見ていたし。
「じゅ、純! 近くに行きましょう!」
「う、うん」
お嬢様は興奮を隠せずにウキウキしながらそういい、俺も一緒にプリキュアの元にいく。
「あ、あの! そ、その! わ、私大ファンです!」
「わー! 嬉しい!」
お嬢様はプリキュアに興奮しながらファンと言って、お嬢様にファンと言われてプリキュアは喜んだ。うーん、なんかプリキュアの声聞き覚えのある気がするんだけど……アニメとは違うのにどうしてだ?
「きょ、今日はどうしてここに?」
「今日はねー。ノアちゃんのために特別上映をしに来たの!」
「ええ!?」
え、今日は執事長が「汝の名は」を見せるために貸切なのに特別上映? な、なんか……怪しいぞこのプリキュア。でもお嬢様が喜んでるからまあいっか。
「じゅ、純! これも見に行きましょう!」
「う、うん。でも時間が被ってたりして……」
「確かにその可能性もあるわね。上映開始時間はいつなの?」
「映画はこの時間に始まるよ!」
「この時間は……ああ、なんて運がないの……。か、被ってるじゃない」
どうやら予感は当たっていたようで、映画の上映時間は「汝の名は」と被っていた。これはなんという不運というか……お嬢様も落胆した姿を隠せない。
「そっかー。でもこの特別上映はなんとこのステッキをプレゼントしてるんだけどなー。それは残念だなー」
「!!?」
そんな落胆したお嬢様にプリキュアは追い討ちをかけるよう、ステッキをわざとらしくお嬢様の前で振って見せびらかす。それを見てお嬢様は目をキラキラさせながら葛藤している。
「……ね、ねえ純。純は……どっちが見たい?」
お嬢様はもじもじとしながら俺に問いかける。あ、これはきっとプリキュアの方をお嬢様は見たいんだろうけど俺はそうじゃないかもしれないと思って聞いているんだろうな。
でも俺の答えは決まっている。
「俺は……ノアが見たいものを、一緒に見たいかな」
「!」
お嬢様と楽しく映画を見れることが一番だもの。そのためにはお嬢様が一番見たいものを見るのが効果的だし。それに……お嬢様が楽しく映画を見てる方が、絶対可愛いだろうから。
「……そ、それじゃあ一緒にプリキュア見てくれる?」
「もちろん」
「ありがとう純! ああ、とっても楽しみだわ!」
こうして、俺らは感動的名作「汝の名は」を見るのではなくプリキュアを見ることとなった。
「頑張れープリキュアー!」
貸切なのでお嬢様は映画を見ながら思いっきりプリキュアを応援している。そんな子供っぽさのあるお嬢様も……すごく素敵で、俺は映画そっちのけでお嬢様のことを見ていたのは……内緒だ。
――――――――――――
読者さまへお願い
第六回カクヨムコンに参加中です。
読者選考を通過するためにも、ページの↓のほうの『★で称える』やフォローで応援頂けますと、とてもありがたいです。
「年下の可愛い管理人さんが、俺の奥さんになるまで」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922536566
こちらの作品も読んでいただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます