お嬢様は今日も今日とて想い人のことでいっぱい
「ああ純! 愛しの純! この世で一番かっこいい純! なんて素敵なの!」
今日も今日とて、ノアは自室で大大大好きな純のことを思ってベットを転がりまわってた。しかも今回は純からもらったぬいぐるみを抱きながら。どうやらよほどもらったことが嬉しかったのだろう。
「……ぬいぐるみ抱きながら何してんスカお嬢様」
それをヒカルは本気で心配そうに見ている。
「純を味わってるの」
「……いや、まじキモいっすよその発言」
「クビになりたいのかしら?」
「職権乱用しないでください! まあ嬉しかったのはわかりますよ。(私たちがわざわざ工作して取りやすくなった)クレーンゲームで純がぬいぐるみ取ってそれプレゼントされたらそりゃお嬢様的にはめちゃ嬉しいでしょうね」
「そうよ。この純二号をもらった時の感動、私一生忘れない」
「はい? 純二号とは?」
「このぬいぐるみの名前よ」
「……」
ぬいぐるみに好きな人の名前をつけてしまうとは……こりゃ相当愛を拗らせてしまったとヒカルは思う。このままだと主人が変な方向に進んでしまうんじゃないかと心配だが、まあもうどうにでもなれと言ったところだ。
「でもねヒカル……今日も純と一緒に帰れなかったわ! 純が失神してしまった後、すぐに貴方達が来てしまったんだもの」
「まあそりゃしゃーなしと言いますかねえ」
ずっと尾行をしていたためことの顛末をヒカル含め従者達は見ていたのだが、このままノアと純を一緒にさせるのは危険だと判断したため純だけ先に連れ帰った。
「あのまま私が純を家まで送っていけば関係に進展があったかもしれないわ。全く、余計なことしてくれたわね」
「でもお嬢様純の家知らないのでは?」
「そ、それは……気合いで探すのよ! そ、そもそもどうして貴方達は純の住んでいる家を知っているの!? ま、まさかヒカル……!」
またノアからあらぬ誤解をかけられそうでめんどくせーなーと思いながら、ため息ひとつついてヒカルは弁明する。
「元同僚ですから連絡先を交換してたんですよ。だから引っ越したとき一応どこ住んでんのか聞いておいたんです。まあいずれこういうことありそうだったし」
「そ、そうだったの……。で、でもずるいわ! 純の連絡先を知ってるなんて」
「え? てかお嬢様、純とクラスメイトなんですから連絡先ぐらい交換してないんスカ?」
「…………してない」
「え? ラインのやり方は前に教えましたよね?」
「…………勇気が出せないの!」
ああそういうことか。確かにそんな勇気があればとっくに告白してるよなとヒカルは思う。こういうところが可愛いところでもあり面白いとこなんだが。
「で、でもヒカルが連絡先を交換してるなら好都合だわ。わ、私に純の連絡先を教えてちょうだい!」
(あーそうきたか)
別に純のラインを教えること自体大した手間はかからない。しかしノアに抱きつかれて失神してしまった純にいきなりお嬢様とアカウントが繋がるのは危険だし……何より距離が縮まってしまうと告白が早くなって賭けに負けてしまう。
なのでヒカルは……。
「いや、それはマナー違反です」
話をこじらせた。
「そ、そうなの?」
「ええそうです。ラインってのは直接本人から連絡先を聞くのが普通なんですよ。他人を介して連絡先を交換するのは相手を不快にさせかねません」
もちろん、そういう面もあるが別に気にしない人が大体である。しかしここで連絡先を交換させないためにそれっぽいことをヒカルはいう。
(金がかかってるんでね。ごめんちゃいお嬢様)
一応心の中で軽く謝って少しだけあった罪悪感を消し去る。
「そうだったのね……なら明日勇気を出して連絡先を交換するわ」
「まー頑張ってくださいね。そんじゃ私はここで……いや、離してくださいよ。あーし寝たいんですけど」
「……どうやって交換したらいいのか聞いてないわ」
「いや、それはご自身で考えてくださいよ」
「し、したことないんだもん! できないもん!」
うわーめんどくせーなーとヒカルは思う。しかしこの幼児化に近い状態になると泣き出してしまう恐れもある。そうなれば上司にこっぴどく叱られてしまうことになるので……付き合わないといけない。
「はあ……。普通にライン交換しましょうで問題ないですよ」
「それだと友達止まりになるじゃない!」
「いきなり恋人になる気なんですか貴女は!」
「そうよ!」
「できないからこんなこじらせてるんでしょうが!」
「う……。な、ならせめて絶対連絡先を交換できる方法を教えてちょうだい」
そんな方法あるんだったら世の中のナンパ男がやりまくるだろうよとヒカルは思う。……でもまあどうせ純もお嬢様の連絡先は知りたいだろうし、交換することはできるはず。
……あ、ならこんな面白いことできるんじゃないか! とヒカルはあることは思いつく。
「ではこんな方法をお教えしますよ。ごにょごにょごにょ」
「……そうなのね! ありがとうヒカル!」
「いえいえ〜」
こうして、ひとつ間違った知識を獲得してしまったノアは明日を待ち遠しくしながらぬいぐるみを抱いて眠りについた。
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