お嬢様とライン交換
ゲームセンターで失神してしまった翌日。どうやら元同僚たちが家まで送って行ってくれたらしく無事に今日も生きてる。……お嬢様、もといノアを放ったらかしにしてしまったのは悔やまれるけど。
「おはよう純、元気そうで何よりだわ」
そんな情けない俺を、朝の教室で会ったお嬢様は一切怒ることなく心地よい声、天使のような笑みを俺に向けておはようの挨拶をしてくれた。ああ、これだけで俺は生きてけるよまじで。
「お、おはよう。昨日は申し訳……ごめん」
出そうになった敬語を抑えて俺はお嬢様に謝る。
「気にしてないわ。純が元気であること、それが私にとって一番だもの」
「……!」
頭の中でライブ会場並みの絶叫を響かして、俺は喜ぶ。そりゃお嬢様にこんなこと行ってもらえたら感動しないやつなんていないだろ?
ただ、それを顔に出すとお嬢様に引かれてしまうかもしれないので頑張って堪えたけど。
「ところで純。まだ朝礼が始まるまで時間があるから部室に行きましょう。見せたいものがあるの」
「見せたいもの?」
「ええ。それじゃあ行くわよ」
「え、ちょ、う、うわああ!」
またもや俺はお嬢様に手を引っ張られて部室へ連れて行かれた。2回目とは言えどやはり慣れるもんじゃないこれは。俺の心臓はもうバックバクだよ。
「……はあ、はあ。の、ノア……別に引っ張らなくてもちゃんとついて行くから……」
そして部室に着くと、何故か引っ張られた方の俺が息を切らしながらお嬢様にそう言う。いや、別にお嬢様に引っ張られること自体は嫌じゃない。ただ……お嬢様が悪目立ちしてしまうのを危惧してのことだ。
「あら、いいじゃない。だって私、純と手を繋いで歩きたいもの」
「!!?」
だが、お嬢様は俺の想像をいつも超えてくる。にっこりと可愛らしく笑いながら、お嬢様は俺にそんなことを言ってきた。……やばい、死ぬ。尊すぎてつらい。
……いや待て、でもそれは友達としてだから俺が思っているよりは意味深な言葉ではないんじゃ……うわああ! もう頭がパンクしそうだ!
「さてと、それじゃあ本題に入るわね」
「え、あ……そ、そっか。見せたいものがあるって言ってたか」
さっき言われたばかりだってのにすっかり忘れてた。いや、仕方がない。だってお嬢様に手を繋いで歩きたいとか言われてしまったら……他のことなんて考えられなくなる。
でも一体見せたいものってなんだろう? ……なんか、最近のお嬢様の行動は予期できないからさっぱりわからない。
「ええ。それじゃあ……」
「!!?」
何をするかと思えば、お嬢様はいきなりブレザーを脱ぎ、そしてあろうことかシャツまで脱ごうとしている。え、これどう言う状況!? え、ぜ、全然理解できないんですけどこれ!?
「ちょちょちょちょちょ! い、幾ら何でもそれはマズイ! マズイですか……え」
お嬢様がシャツを脱ごうとしているのを止めようとあたふたしていると、気づいたら脱ぎ終わっていたのだが……そこに待っていたのはお嬢様のアレではない。
「……QRコード?」
お嬢様が制服の下に着ていたのは……QRコードがプリントされたTシャツ。
「……(な、なんか真ん中にめっちゃ見覚えのあるアイコンがあるし)」
しかも、おそらくそのQRコード、ラインでアカウントを交換するときに使うやつだ。え、これどう言うこと? 理解が全くできないんだけど。
「ジャーン。どうかしら純?」
だけどそんな困惑状態の俺を置いていき、お嬢様は服を見せながら俺に感想を問う。
「……か、可愛いです」
それは本当だ。だってお嬢様は何を着ても可愛いのは間違い無いのだが、今回のようなラフな格好は執事時代もそれほどお目にかかることはできなかった。
それを今は二人きりの教室で見られているんだ。ドキドキしないわけがない。……ただ、QRコードがなければより良かったんだが。
「あら、可愛いだけ? 他にもあるんじゃないかしら?」
「え」
それって……えーっと、アカウントを交換するってこと? いやまてそれだったら普通に交換しようって言うだろうし……。で、でもこんなQRコードをプリントしたシャツを着てるってことは……そう言うこと?
「え、えーっと……そ、その……」
「ウンウン、何かしら?」
お嬢様はどんどん顔を近づけていって、俺は言葉を詰まらせてしまう。で、でも俺だってお嬢様のラインを知りたいのは事実だし……。
「……ら、ラインを交換……しない?」
半ば状況に強制された形ではあるものの、俺はそう言う。ど、どうしよう……ここで「は?」とか言う表情をお嬢様からされたら……いやでも訳わからんシャツを着てそれを見せてるってことは……そ、そうだよな?
「……ええ! もちろん!」
どうやら正解だったらしい。お嬢様はニコッと笑ってそう言い、俺とラインを交換した。……何故かその時はスマホの画面でやったけど。結局そのシャツはなんだったんだろうか……。
「ふふふ。これからは離れててもお話しできるわね!」
「う、うん」
ウキウキしながら何度もスマホと俺を見てくるお嬢様。そして内心「よっしゃあ!!!」と叫んでる俺。この時点で俺はまた鼻血とか出しそうだったけど……今日はなんとか耐えた。
……にしてもお嬢様のアイコン、働いてた頃の俺とのツーショットなんだ。……めっちゃ嬉しい。
――――――――――――
読者さまへお願い
第六回カクヨムコンに参加中です。
読者選考を通過するためにも、ページの↓のほうの『★で称える』やフォローで応援頂けますと、とてもありがたいです。
「年下の可愛い管理人さんが、俺の奥さんになるまで」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922536566
こちらの作品も読んでいただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます