第30話 激おこぷんぷん丸!
「ごめんって! さっきは俺が悪かった!」
あーちゃんと一緒に追いかけてやっと追いついたかと思いきや、舞はあからさまに怒った雰囲気を醸し出していた。
俺は隣に並び歩くと、舞に素直に謝る。
「やだ。許さない」
これは完全に激おこぷんぷん丸だ。
こういう時になると、舞は簡単に許してくれたりなんかしない。
前なんて、何で怒らせたか分からないけど、二日間ぐらいは口を聞いてもらえなかったこともあった。
でも、今回は口を聞いてもらえているだけでもまだまだいい方かもしれない。
「本当にごめんって! なんでも言うこと聞くから、な?」
「なんでも?」
「あ、ああ、なんでもだ」
「じゃ、じゃあさ……今度花火大会あるでしょ?」
「お、おう……」
「ふ、二人で行かない?」
舞がしおらしくも恥ずかしそうにそうつぶやいた。
花火大会はいつぶりだろうか……去年もその一昨年も舞は友人と一緒に行っていたはずだ。
だから、俺は一緒に行く相手がいないということもあり、家のベランダで花火を一人で眺めてた。
久しぶりに舞と一緒に行く花火大会。
「ああ、いいぞ」
たまには幼なじみ同士で行くのも悪くないはず。
「舞さんだけズルい! 私も一緒に行く!」
あーちゃんの存在をすっかり忘れてた。
俺の制服を引っ張って、子どもみたいに駄々をこねるあーちゃん。
「というわけなんだが……」
俺は申し訳ない気持ちで舞を見る。
舞は一瞬残念そうな表情をしたものの、ため息をついて、元の表情に戻る。
「勝手にすれば」
「やった! 舞さんありがと!」
「だ、抱きつくな! こ、これは、その……ルールに乗っ取って言っただけだ! 本当ならあたしとりょーすけで––––」
ともかく、なんだかんだで舞は許してくれたみたいだ。
花火大会は約一週間後の土曜日。
その前日は終業式だ。
「りょーすけ、や、約束、だからね……?」
舞はなぜか頰を染めながら小指を差し出してきた。
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