第29話 それぞれのテスト結果②
急いで靴箱に向かうと、あーちゃんと舞が何やら話し込んでいた。
––––あいつらって結構仲がいいのか?
たまに二人で何やらを話し込んでいる風景は何度か見かけたことがある。
何をそんなに話しているのか……気になるが、聞いちゃいけないような気がする。
「すまん、待たせたな」
俺は少し離れた場所から声をかけると、二人は話をやめ、俺の方に目線を向ける。
「あ、りょーくんやっと来た!」
「りょーすけ遅い! いつまで待たせる気?」
相変わらず舞の俺に対する最初の言葉は変わらない。もはや言いすぎて癖でもついたのか?
そのうち待ち時間より早く来ても「遅い!」って、言われてしまうのかもしれない。
「ちょっと結花と話し込んでた」
「話し込んでたって、なんの話をしてたのよ」
「なんのって、テストの結果についてだけど?」
靴に履き替えながらそう言うと、舞の表情があからさまに曇った。
––––ほほう……さてはこいつ赤点取りやがったな?
いつも俺にだけ当たりが強い舞に対する、これまでの復讐ができるかもしれない。
「あーちゃんは、テストの結果どうだったんだ?」
俺はあえて、あーちゃんに話を振る。
あーちゃんと舞はどこか争っている節がある。もしかしたら何かのライバル関係なのかもしれない。
……まぁ、その何かが分からないから断言はできないけど。
でも、あーちゃんがいい点数を取っていれば、嫉妬はするはず。
「私は……はい」
あーちゃんは手に持っていたカバンの中からごそごそと漁ると、テストの回答用紙らしきものを取り出し、俺に手渡す
なんで口に出して言わないのだろうか、そこが少し気にはなったが、とりあえず受け取る。
「……は?」
テストの点数を見てしまった俺の第一声がこれだ。
いや、悪い意味というわけではない。ただ……あんなに難しかったテストに対して、どの教科も満点を取っている。
これには思わず、苦笑いが出てもおかしくない。
なんであの問題が解けたの? いろいろと訊きたいことはいっぱいあるが、あーちゃんの点数を見た舞は……
「へ、へぇー。な、なかなかやるじゃない」
「お前、棒読みになってんぞ?」
「う、うるさいっ!」
「もしかしてだけど……その様子だと赤––––」
ボコられた。
しかも思っていた以上に痛かった。
「べ、別に勉強ができなくたって、生きていけるもん!」
舞は開き直ったかのようにそう言うと、頰を膨らませながら、プイッとそっぽを向く。
「それって……勉強ができない子がよく言う言い訳みたいなやつじゃない?」
あーちゃんがぼそっとそんなことを言った。
そして、まだ何も言っていないのになぜか俺が再び殴られる。しかも次は的確なみぞおちに!
「な、なんでだよ……」
「知らない! このバカっ!」
舞はプンスカと怒ったのか、俺たちより先に行ってしまう。
クリティカルヒットを食らった俺は、しばらくの間動けないでいたが、次第に痛みが引いたところでみぞおちを手で抑えながら、先に帰ってしまった舞の後をあーちゃんと一緒に追いかけるのだった。
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