第27話 両手に花っていいけど、それはアニメの世界だけで十分だ
放課後。
周りからは両手に花というような状況に見えるかもしれない。
両サイドに前幼なじみことあーちゃんがいて、反対側に現幼なじみこと舞がいて。
このような状況は一見羨ましいように見えるかもしれない。
俺だって、アニメとかで美少女に挟まれた主人公を見ていると、羨ましいと思うし、危うくテレビ画面を叩き割りそうになるくらいの嫉妬だってする。
が、今の状況はそういった甘々ではない。
––––いや、むしろ甘々なのか?
「ちょっと早坂! 離れなさいよっ!」
「いーやーでーすー! 舞さんこそ離れたらどうですか?」
「ちょ、ちょっとお前ら引っ張るんじゃねぇ!」
帰り道の歩道。
俺はあーちゃんと舞の二人から両腕を左右に引っ張られていた。
「痛い、痛いから!」
「早坂、そもそもルールを忘れたわけじゃないわよね?」
「舞さんこそ、忘れてないですよね?」
ルール? なんのことだろう?
そう思ったが、それよりも腕だ! もう限界が来ちゃってるよ! このままだと裂ける亮介になっちゃう!
と、思ったのだが、ギリギリところで力が弱まった。
かと、思いきやである。
「つ、次は何してんだ?」
「なんであんたまでくっつくのよ!?」
「それは舞さんもです!」
全く俺の声が聞こえていないのか、さっきから無視。
ところでなんですけど、これってなんの争いをしていらっしゃるのですかね? 俺の声がどうやら届かないみたいなんで誰か代わりに訊いてやってくれませんか?
近くを通り過ぎる同じ学校の男子生徒が俺のことを死ねと言わんばかりな目つきで睨みつけ、舌打ちをする。
––––いやいや、君が思っているようなことじゃないからね?
あーちゃんも舞も俺の腕を抱きしめるようにして、くっついてくる。
正直な話、胸が当たってこれはこれでいいかも……と思ってしまい、顔が自然とニヤニヤと……。
「こうなったらもうこれしかないわね……りょーすけ、あたしと早坂どっち選ぶ?」
「りょーくん、もちろん私だよね?」
「え? え? ちょっと待って! 一体なんの争いをしてるんだ!?」
「いいから答えて!」
「お願い、りょーくん」
迫り来る二人の圧力。
そもそもなんの争いをしているのか分からない時点でどちらかを選べと言う話が酷ではないか?
ということで、俺は……
「すまん! 用事があるから先に帰る!」
二人をなんとか振り払い、ダッシュで逃げた。
まぁ、用事があると言う話は嘘ではない。実際に一週間後には期末試験がある。
それに向けての勉強をしなければいけないからな。
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