第17話 尾行……。

「ぐぬぬ……羨ましいです」


 私はりょーくんと舞さんのデートを影で観察しています。

 服装はなるべく目立たない地味目な物を選んで、頭にはベレー帽とサングラスにマスク。

 若干、周りの目が気になってしまいますが、そんなことを気にしていてはキリがありません。

 今日はデートするということは協力関係にある舞さんから事前に聞かされていました。

 と言っても、明日は私がデートするのですけどね。


「それにしても本当に羨ましいです。りょーくんに服の感想を言ってもらえるなんて……。明日は私もりょーくんに……えへへ」


 自然とだらしない笑みが溢れてしまいます。

 私はここがショッピングモール内ということにはっとなり、すぐに顔を引き締めます。

 こんな表情を他人に見られては、恥ずかしさで死んでしまいます。

 そうこうしているうちにりょーくんと舞さんが二人並んで店から出てきました。

 舞さんの手には店のロゴが入った紙袋が握られています。

 ––––このあとどこに行くのでしょうか?

 先ほどスマホで時間を確認したのですが、もう昼の一時を過ぎようとしていました。

 このまま二階にあるフードコートで昼ご飯をとるという可能性もあります。


「とにかく二人を見失わないように尾行しなくちゃ」


 私は二人の約十メートル後ろを付いて行きます。

 尾行しながら気づいたのですが、なんで舞さんはさっきからりょーくんの腕に腕を絡めているのでしょうか?

 協力関係のルールとして、りょーくんには必要以外ボディタッチは禁止と言ったはずです。それに対して、舞さんも同意しました。

 それなのに……抜け駆けですか!?

 実は言うと、今日尾行することは舞さんには伝えていません。

 そのことを踏まえて考えるに、舞さんはバレなきゃいいみたいなことでも考えていたのでしょう。だから、あんなにベタベタと……。


「やはりフードコートに行きましたか」


 二人は並んでフードコートに入ります。

 そして、そこにあるマグロナルドで注文を済ませると、二人がけの席に対面の状態で座ります。

 私も同じフードコート内にある亀山製麺でうどんを頼んで、二人を観察できる位置にあるカウンター席に座ります。


「なにをあんなに楽しそうに……」


 いつもはツンツンのハリネズミさんなのにりょーくんと楽しそうに笑いながら、何かを話しています。

 その会話内容がどうしても気になりますが、距離や周りの雑音で全く聞き取れません。

 ––––すごく気になる……。

 

「で、でもでも我慢です。どうせ明日は私がりょーくんとあんな感じに……えへ、えへへ」


 隣の席に座っていた見知らぬ中年おじさんが私のことを変な目で一瞥いちべつした後、席一個分横にずれ、遠ざかってしまいます。

 そういえばなのですが、うどんを注文していたことに一瞬でしたが、忘れてました。

 二人が食べ終える前にすべて食べ終えなければなりません。


「ふぅふぅ……あっつ!?」


 熱々のうどんを少しずつ冷ましながら食べますが……これは時間がかかりそうですね。

 いざとなれば、うどんを残せばいいだけの話です。急いで食べる必要なんてないじゃないですか。

 私はその後、熱いうどんと格闘しながら二人の様子をときどき窺いつつ、黙々と食べるのでした。

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