水を差すわけにはいかない -リリ-
(真面目な
そこに緊張しつつも堂々と、
……その
あの
それから少し遅れて家族と
緊張の面持ちで入場し。強張った身体で礼をとり。綺麗な姿勢でお偉いさん方の話を聞く
その
途中、
それからは微動だにせず、時間すら忘れてその姿を夢中で眺めていた。……のだが、不意に
「リーネリーシェ様」
聞こえてきたのは
学園周囲の
(チッ!)
自身の
「
質問の
(目的が何かは知らんが、万が一リディの
その晴れ姿を余すことなく見届けることが出来なかったのは非常に、非常に残念だったが、妹の安全を守る為とあらば仕方ない。
自分なんかの満足よりも、妹の安全の方が百万倍大事なのだから。
頭を切り替えると腰を上げ、少し離れて座っていた母の元へ歩み寄る。
「
「どうしたの?」
「
「あらそう、残念ね。分かったわ、気を付けてね」
「はい」
「あ、そうだ。今夜はリディの進学を祝して盛大にお祝いするんだからね。ちゃんと、日が落ちるまでに帰ってくるのよ」
「承知しました」
建物の中に居る間は早歩き程度で済ませ、外に出た瞬間、勢い良く大地を蹴る。
目にも止まらぬ速さで移動するリーネリーシェだったが、その行動も承知の上とばかりに、その耳へもう聞き慣れてしまった
「賊の数は三名。現在教職員棟付近に
「分かった。すぐ着く」
というかもう見えた。とは口に出さず、向かいの建物に降り立ちジッとその様子を観察する。
見下ろした視線の先には、何気ない様子で
(
ただすれ違った程度ではまず気付かないだろう。目の届かない暗闇ではなく、真っ昼間という隠し立ての出来ない時間にありながら、その気配を押し殺し
向こうとしても
まぁそれもそうか、と納得する。
一般的に
人力では、意識的に行うならともかく、無意識に行うのは極めて難しいから。
ただ手元から
広範囲を容易く感知出来るさっきの声の主レベルであれば、どこの国からも
だからこそ、人目が多少あろうが追っ手となり得る教員が軒並み出払っているこのタイミングを選んだのだろうが……。
(さて、と……。不運にもそんな奴に目を付けられてしまった哀れな奴らだ。せめて優しく、一思いに
極めて一方的な
それを見ていたもう一人が何か合図を送ったようで、二人の背後へ着地するのとほぼ同時にその身体が素早くこちらを向く。が、もう遅い。
音も無く地面を蹴り、左足を軸にしながら弧を描くように右足を振り上げ、こちらを向いた二つの首を
抵抗する余地もなくパシン、とくぐもった音を立てて二つの頭が身体ごと真横に吹き飛ぶ。そして、勢いそのまま、鈍い音を立てて揃って壁に叩きつけられた。
壁の前に座り込む、倒れ込むようにして崩れ落ちた二人。蹴った感触からして、ちゃんと身を固めていたのは分かっていた。それを見越した上で、死なない程度の力加減を選んだ訳だが。
動かなくなった二人を横目に、少し離れた場所に位置取っていた男へと目を向ける。
先程まで
すかさず後を追いかけると、
すると、そこを中心として爆発的に土煙が広がり、視界を等しく土色に染め上げる。
視界が埋め尽くされた直後、足元の舗装路が
目の前に迫る
(ふん……小賢しい)
進路を塞ぐように生え揃った石の
それから、お返しと言わんばかりに石槍の
その
瞬間的に体勢を崩したに過ぎず、時間にして
「大人しく……」
二人を
「しろっ!!!」
ゴスッ、と鈍い音。それに遅れて、哀れな男が勢い良く頭から石畳に叩きつけられる音が盛大に響き渡った。
そして、動く者は居なくなった。
(今すぐ戻ればまだ間に合うか……?)
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