ちょっと野暮用 -エリー-
「ふぁ〜ぁ……」
眠い。
こんな感じだってのは分かってたけどさ、それでも改めて体験してみて思った。
隣に座ってる
さっきまでの私もこんな顔してたのかなーって考えるとちょっと
パパは真剣、ママはいつも通りの笑顔。ナナは不満気でリリ姉は仏頂面。サリーはまぁ
と、ナナがこっち見てるや。どうしたのかなー?とぼんやり見てると、その膝をちっちゃい手でペチペチと叩き始めた。なにあれ、可愛いんだけど。
とまぁそれは置いていて、つまんなくなっちゃったかな。人も多いしね。
ナナは昔から人混みがとっても苦手で、
おっとまた
ここぞとばかりにすぐ行動に移す。
左手に抜けて背もたれの裏から回り、まずはママのとこ。その大胆に開かれた肩をポンポンと叩くと、すぐに気付いて顔をこっちに向けたママ。
「ナナがつまんなそうだからちょっと外出てくるね」
「あらあら、仕方がないわね。でも、二人だけだと心配。ファナ、お願い出来る?」
「承知しました」
特に何か言われることもなく、あっさりと許して貰った。付いてくるのがファナなら口も硬いし何も心配いらないね。これがキニャとかだと、次の日にはお屋敷中に知れ渡っててもおかしくない。
何の
羽根のように軽くて大人しくて、私やサリーの妹なのが信じられないくらい。
「行こっか、ナナ」
横からその顔を
歩きながらそのお人形さんのような身体を
……言っておくけど
あんま喋んないけど、嫌な時はすぐに顔に出るからむしろナナは分かり易い方。
パパやリディ姉は(とても)分かり易いけど、リリ姉なんか本当に表情変わんないからね。
……それにママも、リリ姉とは逆に終始にこやかだから逆に分かんない。それは私とサリーも同じかな。
そんなことを考えながら右手で扉を開けて階段を下りたらそこでナナを床に下ろす。抱っこしながらも悪くないけど、私は手を繋ぐ方が好き。
左手を差し出すと、すぐにフワッとした感触が手に触れる。一切の
二人の衛兵に見守られて外に出てからもそのまま歩く。少しして三段に積み上げられた流水のカーテンが見事な噴水の
するとすかさずファナが水筒を差し出してくれる。そういえば喉も渇いてたんだよねー。
「ぷはー!ありがとね、ナナ!天使!女神!」
この水が
「やー、おめでたいと思わないわけじゃないけど、ああも
べつにお
内心抱いてしまった気持ちに言いようのない
「……でぃー姉、どこかわかん、なくて。つまんない」
ナナが自分から喋ってる、珍しい!
こっちから聞いたことにはそれなりに答えてくれるけど、自分から何かを口に出すことはあんま無いんだよね。たまにこっちの目をじーっと見てる時は何か伝えたいんだろうなーって思って、その時はどうしたの?って聞くようにしてる。
「そうだよね〜。
「でぃー姉、おめでとう、したかった、の」
「そっかそっかー。まぁ今夜はお家でお祝いするらしいから、おめでとうはそこですれば良いよ」
「うん……。おうちでおめでとう、する」
「よしよし、いい子いい子」
その頭をまたもや撫でてあげる。
丁度良い高さで可愛らしくて大人しくって。あらゆる面で撫でやすいんだよね、ナナって。
撫でてる間はずっとジッとしてるから、それなりには喜んでくれてるんだろうなーって実感できるし。
「でぃー姉、いつ帰って、くる?」
「うーんとねー。確か後一時間半くらいで終わって、
「さびしい」
「ん?私がいるのに
私の
う~ん、自然と肩の上に両腕が回るし、やっぱりナナは抱っこするにしても凄いしっくりくるんだよねぇ。
「ダメ、じゃ、ない。けど。でぃー姉に早く、おめでと、言いたい……」
「そうだよねー。ディー姉もおめでたい式なんかより、ナナにおめでとうって言われる方が
「ほんと……?」
「本当本当!可愛いナナに
「じゃあ、いっぱいおめでとした、ら、いっぱいよろこんで、くれる……?」
「そりゃもう
だって、私だったらとっても嬉しいからね!
……リディ姉すっごい
「ディー姉は……」
ナナのこと大好きだからね、と言おうとして五感が何かを捉えた。
ありゃりゃ、何もこんな時にまでとも思うけど、こんな時だからこそ、かな。一年の中で警戒が一番強くて、だからこそ弱くなるタイミングだから。
もっとナナと喋ってたかったけど、間接的にナナの将来を守ることでもあるからやっぱ見逃せないかな。
「ナナ〜、お姉ちゃんちょっと
その腰に優しく手を添えると、軽く持ち上げてそっと地面に下ろしてあげる。
それから、ずっと風景に紛れていた侍女に声を掛ける。
「ファナ〜」
「はい」
「ナナをお願い」
「かしこまりました。エリアニーネお嬢様はどうされるのですか?」
「ちょっと
「では、旦那様と奥様に聞かれた際はそのように伝えておきます。お気を付けて」
「はいは〜い」
さーて、可愛い妹とついでにお国の為に、鼠さんの確認といきますか。
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