だけど怖いのだ -リリ-
ごく自然に立ち去ったかのように見せかけて、
そんな時でも
(さて、と。まず優先するのは
人生に一度の晴れ舞台なのだ。今日はファナと共に早くから念入りに準備をしていたことも知っている。
そんな
なのでまずは誰も居ない
「キニャ」
「は~~~~~~い」
その声に果たして、
視界に入り込んできたのは、やや小さな人影。
そして、ピンと伸びた背筋を直角に折り畳み、
「お呼びでしょうか、リーネリーシェお嬢様」
驚きは無かった。まぁ自分で呼んだのだから。
それよりも何よりも最初に抱いたのは、
口元にほんのり浮かべた
そんなキャラじゃない
握り拳で軽く
(こいつのおふざけに構っている場合では無かったな)
危うくこいつのペースに
「リディを医者の所へ。それから着替えの用意をして
「かしこまりました~」
先程の
いや、普段通りとは少し違うか。
普段のそれに比して、からかいの成分が三割増しだ。
「いや〜、
「今更何を言ってる。あの位、お前にだって出来ただろう」
「や〜、私にはああいうのはちょっと……。
「何が女の子だ。百歩譲っても箸なんぞ持つより軽く人を吊し上げられるような奴がか弱いなどと良く言えたな」
「いや〜〜こわい〜〜。そんな恐ろしい人がいるんじゃ
「どの口が言うんだか。そんなことよりさっさと動け」
「は〜い。にしても~、リリお嬢様は相変わらず素直じゃないですね~。リディお嬢様が心配で仕方が無いのに素っ気ない振りしちゃって~」
「やかましい」
こいつも一応は
それに表面こそこんなだが仕事は出来るし、何だかんだON/OFFの切り替えはしっかりとしていて気遣いも出来る。
私が
雇用上の上下関係こそあるが、実際は
……そんなことを言ったら調子に乗って小一時間は
調子に乗られるのもむかつくので、一層
「振りをしているわけではない。出来ないだけだ」
知っているだろうに、と
一方、
「そんなこと言って~~。とっくに出来るんですから、素直に可愛い好きだ愛してる~!って言って抱きしめて仲直りしちゃえばいいんですよ~」
「今更出来るわけないだろう」
「え〜〜〜、今までゴメンね本当はずっとこうしたかったんだギュッ!って感じですよ簡単じゃぁないですか〜。リディ様なんて、感激して思わず気を失っちゃう位喜ぶに決まってますよ〜!」
「気を失ったら駄目だろうが……」
その
(いかん、またもこいつのペースに乗るとこだった)
いや、別に一発ぶち込みたくなるのはいつものことだし決してやぶさかでは無かったが、余り意味が無いというのが正直な所だ。
のらりくらりと、あらゆる意味で
「それよりさっさと行ってこい」
「はいは~い、かしこまりましたリーネリーシェお嬢様〜。
それが素直じゃないってことですよ~、と言いながらリディの元へ向かうキニャ。
キニャの方が正しい。それは私にだって分かっている。私が
ただ、それでも出来ないものは出来ないのだ。あの頃とは違う。それは分かっている。
だけど怖いのだ。
妹を、自分のこの手が傷付けてしまうと思うと。
それに……。
(妹が可愛すぎて……面と向かってお姉様嫌い!とか言われたら余りのショックに心臓止まって死んでしまう!)
キニャにお姫様抱っこされてその場を離れていくリディを
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