第468話 初めての選挙戦
「みゃーっ!
「僕も存じています。あの外見は目立ちますし」
「……みゃっ!? コウちゃん、もしかして知らなかったの!? 編入生なのに!? 生徒会として気にかけてあげないといけない子なのに!?」
「そんな、まさか。桐島先輩に限って、そのようなうっかりミスなどするはずがありませんよ。毬萌先輩が一番分かっているでしょうに」
「にははーっ。だよねぇー。みゃーっ、これはわたしとしたことが!」
「ゔぁあぁぁぁぁっ!」
もう、なんて言うか、本当にごめんなさい。
「いやね、聞いて? 編入生がアメリカの高校から来たって話は知ってたんだよ? たださ、アメリカって言うから、留学生だと思うじゃん? そしてさ、留学生って、うちの学園だと三年生以外は基本的に三学期って帰省してるじゃん? だからね、その編入生が登校してくるのも、俺ぁてっきり4月になってからだと思ってたの」
世の中で、長文の言い訳ほどみじめなものはないと知る。
でも、俺の言い分だって一応筋が通っていると思わない?
その証拠に、年明けてから、イギリス人の面汚しとか見かけてないじゃん!
ねえ? ヘイ、ゴッド?
あ、ごめんなさい。
「じゃあ今年は選挙戦になるんだねぇー。わたしも天海先輩も信任投票だったから、アドバイスができないよぉ。不甲斐ない先輩でごめんね、花梨ちゃん」
「あ、いえいえ! そんな、毬萌先輩が謝る事ないじゃないですか!」
「ううん。これはね、コウちゃんの分!」
これはヤムチャの分! みたいに言うのはヤメておくんなまし。
「鬼瓦くん、俺、自分が思っている以上にポンコツだったみたい」
「桐島先輩……。僕は、欠点がある方が親しみを抱けて良いと思います!」
さり気なく俺のポンコツを黙認する鬼。
そして、欠点と言い直す鬼。
渡る世間は鬼神ばかり。
「しかし、参ったな。選挙戦って言っても、俺らも経験がねぇからなぁ。計画立てようにも、まず概要を知らんことには」
「あ、あれ? 公平先輩、知らなかったんですか!? マルさん先輩と軽く挨拶して引き上げたから、てっきりご存じなのかと思ってたんですけど……」
俺は、自分の株価がこれ以上の暴落を起こさないように、スマホを手に取る。
もうストップ安だから手遅れとか言わないで欲しい。
「ちょっと、何よ、公平! あんた、さっきうちに来たばっかりじゃない! 急用ってどうしたのよ!? 大した用事じゃなかったら蹴り飛ばすわよ!」
速やかに口寄せの術を使用。
ここで俺が言い訳を述べて、それを聞き終わらないうちに氷野さんの蹴りが入り、俺が「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」とか素っ頓狂な声を出すとお思いか?
なるほど、ゴッドはお約束と言うものを熟知している。
ですので、今回はカットしておきました。
ちゃんと俺は蹴られましたし、「あぁぁぁぁぁぁぁぁい」と叫びましたが、それらは全部省略して、こちらに仕上がったものをご用意しております。
「ったく。言っとくけど、これは
「わぁい! あたい、マルちゃんのそーゆうとこ好きーっ!」
「……あんた。次に尊い毬萌のモノマネをそのクオリティでやったら、分かってるわね? 言っとくけど、私の引き金は軽いわよ」
「うっす。すんませんでした!!」
よし、場の空気が穏やかになったな!
やれやれ、道化をすすんで演じるのも骨が折れるぜ。
「とりあえず、ポスターと公約は毎年通りだよね? マルちゃん」
「さすが毬萌! どこかのチンアナゴと大違いね! その通りよ! まず、卒業式の2日後から、公約の入ったポスターを学園内の掲示板に貼るところがスタート」
「候補者は演説などをするのでしょうか?」
「あら、鬼瓦武三もやるじゃない。10日間の街頭演説期間が設けられるわ。それ以外の選挙活動は違反になるから、注意するのよ」
「分かりました! 気を付けますね!」
「そうだな。気を付けよう」
なんで皆して、俺の発言の時だけ心配そうな顔するのん?
「……まあ良いわ。で、その後に、討論会があるの。これは、平たく言うと、私はこんな風な1年間をお約束します、みたいな事を言って、相手の整合性の取れていないところを突っ込んだり、逆にツッコミをあしらったりして、いかに自分が優れたリーダーかをアピールする場になるわね。重要よ!」
「なるほどー。討論会ですかぁ」
黄色いメモ帳に色々と書き留めている花梨。
真剣に話を聞く女子の横顔って、なんか良いよね。
「アメリカの大統領選みてぇだなぁ」
「そうね。だって、学園長がアメリカの大統領選をマネして作ったんだもの」
「マジかよ。適当に言ったのに。あのチョビ髭、本当にノリでイベント作るなぁ」
「その点に関しては公平と同感。巻き込まれる側の身にもなって欲しいわ」
いや、まあ、多分、選挙戦を通して来るべく本物の選挙のシステムを学んで欲しい的な、学園長の教育理念が根本にあるのだと信じたい。
選挙権も18歳に引き下げられたし、きっとそう。
「討論会って楽しそうっ!」
「またお前は、すぐに軽い調子で言うんだからなぁ。去年の応援演説で俺がどんだけ苦労したか……。緊張で2キロ痩せたんだぞ?」
「えっ!? 公平先輩、大丈夫ですか!? その計算だと、応援人なんてしたら、先輩が消えてなくなっちゃうんじゃ……!?」
「おう、花梨。俺の身を案じてくれているのはすげぇ嬉しいけどな。多分今回も、どんなに痩せても2キロだと思うから」
1ダメージ2キロみたいな勘定はヤメてくれっかな!?
その計算だと、俺、これまでの一年間で10回は消えてるんだよ!!
「ちょっと、まだ続きがあるのよ? ったく、お気楽なんだから」
「うっす。すんません、マル姉さん! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「討論会のあと、約1週間選挙活動期間があって、3月19日に投票日。投票日にも、立候補者と応援人の最後の演説があるから、油断しちゃダメよ」
確かに、最後の最後で差し切られて負けるのはご免である。
アメリカの大統領選ですら過去にそんな事例があるんだから、言わずもがな。
あと、今の会話の間に俺、一発蹴られたんだけど、ゴッドはご存じ?
あ、知ってた? すごいよね、セリフだけで蹴られたのが分かるってさ。
すごいを越えていっそセクシーだよ。
「まあ、だいたい日程はこんなところかしら? まあ、質問があればいつでも聞きなさい。私が直々に教えてあげるから。じゃ、戻るわね」
「おっす! マル姉さんお疲れ様っしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
とりあえず、これでだいたいの行動日程は把握できた。
やっぱりその道のプロをお呼びして正解だった。
あと、氷野さん、忖度しないとか言っておきながら、ちょっぴり優しくしてくれているところが、そこはかとなく可愛いよね。うふふ。
「ごめんなさい、書類置きっぱなしだったわ。……なにいやらしい目で見てんのよ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!」
よし、最高に気合が入ったな!
まったく、氷野さんの蹴りは最高だぜ!!
「そんじゃ、とりあえず公約から考えていくか。って言っても、いきなり俺が横から入れ知恵するのもおかしな話だからな」
「はい! まずは自分で考えてみますね! でも、頼りにしてますよ? せーんぱい!」
「おう! 任せとけ!」
「生徒会のお仕事は、わたしと武三くんが中心になってこなすから、2人は選挙に集中してくれていいからねーっ!」
「ゔぁい! 微力を尽くします! ゔぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
後輩の背中をしっかりと支えてあげるべく、俺たちは一丸となる。
これが当代生徒会、最後の闘いであれば、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます