第460話 心菜ちゃんと美空ちゃんとアイスクリーム
「はわわわ! 兄さま、本当に良いのですー?」
「せやで、公平兄さん! ウチら、こう見えてむっちゃ食べますよ?」
駅前のサーティーワンアイスクリームにて。
俺は心菜ちゃんと美空ちゃんを両サイドに置く、最強の布陣を取っていた。
右は見れば心菜ちゃんが微笑み、左を見れば美空ちゃんの八重歯が光る。
そうだ、今度から天国と書いて『サーティワンアイスクリーム』と読もう。
「いくらでも食べて良いんだよ? ははは、俺はアルバイトができるからね。少しばかりお財布にはゆとりがあるのさ。はははは」
「はわわ! 公平兄さま、おとなのよゆう、なのです!」
「カッコええわー! ウチらお小遣い少ないもんなぁー。月に2000円ですよ?」
「はわっ!? 美空ちゃん、そんなに貰ってるのです!?」
「えー? 心菜ちゃんもそんくらいなんとちゃうん?」
「心菜、1500円なのです……」
「そんなに変わらへんやんか!」
俺が毎月10000円心菜ちゃんにあげるって言うのはどうかな?
えっ? まず状況を説明しろ? したじゃないか。
ここは天国。他は地獄。はい、証明完了。オーケイ? ヘイ、ゴッド?
分かった、分かりましたよ。
当初は氷野さんも含めて、4人で駅前に繰り出していたのである。
では、なにゆえ氷野さんはいないのか。
それは、彼女が美容室の予約をしていたからであり、「私がいない間、2人のこと頼むわよ、公平」と、密命を
そして、ここぞとばかりに頼れるお兄さん感を出して「食べたいものはないかい? お兄さんが奢っちゃる、ぐへへ」と言ってみたところ、こうなった。
「兄さま、兄さま! ダブルでも良いです?」
「もちろんだとも! 好きなのを選ぶと良いよ!」
「兄さん、兄さん! 700円もしますけど、ええんですか!?」
「安いものさ! 2人の笑顔が見られるならね!!」
そして、2人はキャイキャイと楽し気にフレーバーを選び始める。
もう、なんて言うか、アレだね。
このまま時間が止まれば良いのにね。
俺は彼女たちの後ろで目を細めている。
そして、周囲への警戒も忘れない。
なにせ、これほどの天使が2人もいるのだ。
いつ、どこから悪い虫が飛び出してくるか。
ポケモンのコラッタくらいの出現頻度は固いだろう。
そんな悪漢から天使たちを守るのも、
彼女たちのためならば、俺はどんな手段を用いてもか
「兄さまー! 心菜、チョコミントに挑戦するのです! むふーっ」
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
ああ、失礼。
ちょっと、ソウルがぴょんぴょんしてしまった。
いや、だって、心菜ちゃんがチョコミントに初挑戦するって、ドヤ顔で宣言して来たらね、普通の人はだいたいウルトラソウルをキメるよね?
そもそも、心菜ちゃんがアイス食べてるだけでも昇天ものである。
このドヤ顔可愛い心菜ちゃんの空間を切り取って、ルーブル美術館に並べてやりたい。
ミロのヴィーナスだって裸足で逃げ出すわい。
いや、何を浮ついている、桐島公平。
お前は自分の責務を忘れたのか。
氷野さんからの信頼に応えてこその男ではないのか。
そうだとも、俺に一切の油断はな
「うー。兄さん、ウチもチョコミント食べてみたいんやけど、無理やったら、その……。兄さんのヤツと交換してもらってもええですかぁ?」
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
ああ、失礼。
ちょっとだけ魂が
お気になさらず。
いや、だって、どっちかって言うと心菜ちゃんよりちょっとお姉さんな美空ちゃんが、モジモジしながらお願いしてきたら、ウルトラソウルがキマるよね?
元気な関西っ娘が八重歯見せて照れてるだけで昇天ものである。
京都国立博物館に美空ちゃんの彫刻を
考える人だって思わず立ち上がるわい。
「兄さま! 決めたのです! 心菜、チョコミントとラムレーズンにするのです! 大人のれでぃなちょいす、なのです!」
「ウチも決めました! チョコミントとジャモカコーヒー頼んますー! ウチも、大人の女性をイメージしてみました! へへっ」
「すみません。この店で一番上等のチョコミントを2つと、ラムレーズンと、ジャモカコーヒーを。サイズですか? ソフトボールくらいでお願いします」
店員のお姉さんを困らせてはいけません。
こうやって、例えばマクドナルドで「あと、スマイル一つください!」とか言って店員さんを困らせる人は、ろくな大人になりません。
猛省しなさい、桐島公平。さすれば救われるでしょう。
普通に注文をし直しました。
俺のアイス? ちっこいバニラだけど?
いや、ダブルとか無理無理。大きいヤツもちょっとキツい。
お腹冷やすじゃん? 外寒いし。
「はわわー! チョコミント、美味しいのです!」
「ほんまやね! もっときっつい味やと思っとったわー!」
初めてのチョコミントに感動する天使たち。尊い。
「兄さま、ありがとうなのです!」
「ほんまですわ! おおきに!」
「いや、良いんだよ。2人とも、バレンタインデーにチョコくれただろう? そのお返しみたいなものだから」
「でもでも、兄さま、チョコレートくれたのです!」
「せやね! 逆チョコ言うて、マル姉さんから受け取りましたわ!」
「あれくらいじゃ全然足りないよ。それに、俺は2人よりもお兄さんだからね。知っているかい? お兄さんって言うのは、優しいものなんだよ?」
「はわわー! 公平兄さま、優しいしカッコいいし、大好きなのですー!」
「あー、ズルいで、心菜ちゃん! ウチかて、ほんまのお兄と同じくらい好きです!」
あぁぁぁぁぁぁあうぇrpglとえwjそぺ@れおにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!
ああ、失敬。
ついつい言語化できない高度な感情表現をしてしまった。
でも、ゴッドなら俺の魂の叫びが通じるって、信じてるぜ?
それから1時間ほど、場所をショッピングセンターに移して、天使たちとフードコートでお喋り。
もちろん、温かい飲み物を用意するのも忘れない。
サーティワンアイスクリームの店舗は暖房が効いていたけども、やはり外に出るとまだ2月であるからして、かなり冷える。
天使たちの体を冷やす訳にはいかない。
「ごめんなさいね、3人とも。お待たせー」
あ、氷野さんが来ちゃった。
「早かったね……」
「公平? なんであんたは、美容室から帰ってきた乙女を見て、第一声でそんなに暗いオーラを出せるのかしら?」
だって、天使たちとの時間が終わってしまったのだもの。
ひどいや、死神姉さん。
「姉さまー! 公平兄さまがサーティーワンのアイスを買ってくれたのです!」
「むっちゃ美味しかったです! ご馳走になってまいました!」
「あら、良かったわね、2人とも。ちゃんとお礼は言った?」
「はいですー!」
「バッチリです!」
「……あんた、なんで泣いてんの? ちょ、ちょっと、ヤメなさいよ! 人が見てるでしょ!?」
「いや、なんつーか、この世に生まれて来て、良かったなぁってさ」
「とりあえず、蹴り飛ばそうかしら」
「おう。いつでもどうぞ。ああ、氷野さん。髪、整えるだけって言ってたけど、結構雰囲気変わったね。なんつーか、綺麗から可愛いに寄った感じ」
「兄さま、姉さまの事をよく見ているのです!」
「ほんまやね! 公平兄さん、そーゆうとこポイント高いです!」
おや、おかしいな。
蹴られやすいように尻を出していてるのに、一向にインパクトが襲ってこない。
「氷野さん? どうした?」
「べ、べべべべ、別にぃ!? あんたに褒められたからって、全然嬉しくないんですけど!? ちょ、調子の良いことばっかり言う男ってホント嫌い!!」
「いや、氷野さん普通にしてても充分美人だって。もっと自信持って! 可愛いよ! 氷野さん可愛い! すっげぇ可愛い! もうマジでかぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「や、やめろぉ!! やめなさいよぉ!! 恥ずかしいでしょ、あんたぁ!!」
尻を引っ込めた途端に蹴るだなんて高等テクニックを惜しげもなく。
さすが氷野さん。髪型は変えても態度はブレないなぁ。
「心菜知ってるのです! つんでれって言うのです!」
「ちょ、えっ、こ、心菜!? どこでそんな言葉を覚えたの!?」
「ウチらの学校で今流行ってるんです。確かに、マル姉さんツンデレっぽいわー!」
「……帰ったら、
後日、「名門女子校の風紀が乱れている」と言う内容が書かれた差出人不明の投書がアリエル女学院に届けられたそうな。
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