第106話 コテージとトラブル
好きな女子のタイプ?
そうだな、料理が上手な人かな。
そんな事を女神に答えている夢を見た気がした。
「それで、どうだった? ねぇ、コウちゃーん!」
「そうです、ハッキリ聞かせて下さい!!」
「「どっちのカレーが美味しかった!?」」
鬼瓦くんの献身的な看護と、
夕立もすぐに止んで、空には虹がかかっている。
多くの宿泊客がそちらに向けてスマホのカメラを構えている。
ねぇ、知ってる? その虹はね、俺の涙で出来ているんだよ?
「どっちも甲乙つけがたかったぞ。だから、引き分けだ!」
嘘なんてついていない。
甲乙つけがたい地獄だった。
血の池地獄と針山地獄の違いはあれど、どちらも立派な地獄だった。
「ええーっ!? 引き分けー? じゃあ、賭けはどうなるの、コウちゃーん!」
「公平先輩と一緒に過ごす夜の予定について、納得のいく説明を求めます!」
「あー。分かった、分かった。じゃあ、お前らのやりたい事、どっちも付き合ってやるから。それで手打ちにしてくれ」
二人は不承不承と言う顔だったが、最終的にはお互いの健闘を称え合う。
「花梨ちゃんのカレー、美味しそうだったもんねーっ」
「毬萌先輩のカレーだって、独創的で素敵でしたよ!」
2人とも、合宿が終わったら、一緒に公民館でやってる料理教室に行こうな。
俺は強く誓った。
とりあえず、俺はずぶ濡れである。
濡れ瓦くんもしっとりしている。
女子二人も、俺たちほどではないがやはり夕立の影響は大きい。
ここで、一度コテージに行って着替えようと提案した。
風邪を引いてもいけないし、女子が体を冷やすものではない。
全会一致で俺の意見は採用され、四人揃ってカウンターへ。
預けている荷物を回収して、新しいコテージの鍵を受け取るためである。
「大変申し訳ございません。お客様。実は、先ほどの大雨で、コテージの一部が停電により使用不可となってしまいまして……」
何と言うことか。
俺を救った夕立が、思わぬ落とし物をして行ったようであった。
「あー。構いませんよ。別にロイヤルゾーンじゃなくても。なあ、みんな」
「はーいっ! 全然平気ですよっ」
「天災じゃ仕方ないですもんね!」
「僕も異存ありません」
そんな俺たちを見て、お姉さんは更に頭を下げる。
「いえ、ロイヤルゾーンのコテージをお取りしているのですが……」
ですが?
「どうしても一棟しかご用意できず。重ねて申し訳ありませんが、今晩はそちらに四名でご宿泊願えませんか? もちろん、簡易ベッドですが、ご用意させて頂きますので」
やってくれたな。
俺を助けてくれるなんて、味なマネだと思っていたんだ。
まさか、こんな腹積もりだったとはな。
マジでいい加減にしろよ、ヘイ、ゴッド!
二日続けて一つ屋根の下で男女混合とか、絶対にダメだろう!?
何か間違いが起きたらどうする!? ええ!?
「ま、まあ、そう言うことなら、うんっ。しょうがないねっ!」
「そ、そうですねー。いやー、困っちゃいましたねー」
「あの、テントとか借りられませんか? 男はそっちに泊まったぁぁぁんっ」
両方から脇を小突くのはやめてもらえないか。
「何言ってるの!? 合宿最後の夜なんだよ! そんなのダメに決まってるじゃん!」
「そうですよ! みんな一緒が良いです! それじゃないとあたし納得できません!」
「待てよお前ら。おい、鬼瓦くんからも何か言ってやってくれ」
「……僕はちょっと、お花を摘みに」
鬼神エスケープ。
そして押し切られた俺。
泊まるんですって。4人で同じコテージに。
そしてやって来たのはロイヤルゾーン。
相変わらず、外は貧相なのに中のロイヤル感は半端じゃない。
いっそセクシーだね。
「まあ、こうなっちまったからには、仕方がねぇ」
俺はシャツを脱ぎながら全員にこれからの過ごし方について語る。
「だからぁ! なんで先輩は女子がいるのにすぐ服を脱ぐんですか!?」
「おぶぁっ」
花梨の枕が俺の顔面を襲う。ナイスコントロール。
「上だから良いかなって」
「良くないです! 毬萌先輩からも言ってあげて下さい!」
「にははー、コウちゃん筋肉なーい! あんなに筋トレしてるのにねーっ!」
「そう言うことじゃないんですよ、毬萌先輩!」
「だって、風呂場は鬼瓦くんが使ってるしなぁ」
ちょうど出てくる鬼瓦くん。
鬼神ぴったり。
「すみません、僕が一番に使ってしまって」
「そうですよ! むしろ、あなたが堂々と服を脱ぐべきでしょう!?」
「ええ……。だって、裸を女性に見られるなんて、恥ずかしいよ」
「はははっ、鬼瓦くんは乙女だなぁ、おい!」
「もぉー! なんでみんなしてデリカシーがないんですか!」
それを言うなら、男女が一つ屋根の下で寝泊まりする方が余程問題なのではないのかい、花梨さんや。
やっぱりちょっと考え方が幼いんだよなぁ。
悪い男に
「あたしと毬萌先輩は、脱衣所で着替えますから! 先輩はお好きにどうぞ!」
花梨がプリプリ怒りながら。毬萌と一緒に扉の向こうへ消えていく。
お言葉に甘えて、キャストオフ。
濡れた服の着心地の悪さよさらば。。
なんてステキな解放感。
とは言え、貧相な裸体を晒しているといつお叱りを受けるか分からんので、パンツだけは履いておく。
それにしても、である。
「……どうするよ、鬼瓦くん。この状況」
パンツ一枚で俺は尋ねた。
「……桐島先輩。……お覚悟を」
「だよね。だいたい分かる。知ってた。うん」
絶対今晩はタダじゃ済まないだろうね。
俺、無事に帰れるのかな。
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