第10話-1 うつ病の寛解…ゴールは何か?

 うつ病で寛解したら、元の生活に戻れるのだ、と期待する。では、元の生活とは何か?職場復帰したらゴールなのだろうか?それは、人それぞれであると思う。

 とにかく、少しでも元気に、少しでも早く元気になりたい、そういった思いで、辛く、長く、高い医療費を払って治療を続けている。それは何もしていないことにならない。

 よく、うつ病の人は何もしなくていいよな、平日に遊びに行けてさ、などと心無い戯けたことを言う人がいるが、気にしない事だ。毎日薬を飲んだり治療をしているだけで、とても頑張っていると思う。

 私も自分自身そう思って納得してきた。平日に遊びに行けていいな?元気そうじゃん、うつ病治ったんじゃないの?…戯けが!ふざけるな!元気な時しか外に出られないし、元気な時しか人と会わないからそう見えるだけだって分からないのか!と言いたくもなる。

 ほとんどが辛く、動けない日だって事を理解してもらうのは難しい。そう考えたら、元の生活に戻る事だけがゴールではないと感じる。また同じことの繰り返しになる。確かに、働けるようになって、また自分の力でお金を稼げるようになったら、それはとても自信が付くし、自分の存在価値、自尊心を保つことにもつながる。だから、「元」に戻る必要もない。道はほかにもたくさんある。

 ちなみに私は、本当の意味でのうつ病での寛解というのは、難しいと思っている。自分自身がそう思っているのだから仕方がない。一度割れた瀬戸物を、接着剤で元に戻したとしても、やはり亀裂が入ってしまったところは強度的に弱い。元のまっさらな姿には戻ることはできない。

 そう思ったら、今までと同じ生活、元の生活に戻る、をゴールに設定するのは危険と思っている。例えば。通院しなくても大丈夫になった、薬を飲まずに済むようになった、となると、もう元気だ!と思ってしまう。苦しんだ末の結果だからうれしいに決まっている。でも、調子に乗ってはならない。またバリバリ仕事するぞ!と思って、死ぬ気でやると、本当に人間は死んでしまう。健康な人だって、死ぬ気で仕事したら過労死で死んでしまうのだから。

 まずは、自分は良くなった、寛解した、としても、頭の片隅には、「無理は厳禁」を置いておく事。目標設定も、いきなり高いところを目指してしまいそうだが、自分の「器」や「心のキャパシティ」はうつ病が寛解したところで大きくなった訳ではない。そこを見失わずに、自分なりのゴールとは何かを再考するのが良いと思う。

 寛解≠完治。うつ病の再発率は60%と一般的に言われているが、再発数が増えれば増えるほど、その割合は高くなる。自信過剰は禁物。自分の中に、やってはいけない、無理をしてはいけないという一線を持ち、自覚する。これだけは忘れずに。

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