第8話 心療内科と精神科 : 本気で少しでも良くなりたいなら

 気分が憂鬱な時に、通院したいと考えた場合、「心療内科」と「精神科」と大きく二種類の科があると知るだろう。大体の人は、「心療内科」の方が名称的にもソフトな印象があり、いきなり「精神科」となると、え?自分が?というショックに感じるかもしれない。かくいう私もそうであった。

 最初は「心療内科」を受診していた。待合室はきれいで、家具などもモダンで清潔、アロマなどの良い香りがし、また、落ち着く音楽が流れ…とても病院に来ている感じではなかった。

 しかし、診察はというと、先生は私の顔すらほとんど見ることなく、淡々と質問をし、それに対して答える。そして薬を処方される。診察時間は5分から10分くらいである。質問をしても、薬を飲めば大丈夫なので、また今度来てください。調子が悪いというと、薬の量や種類が増える。それの繰り返しであった。

 ちなみに、私が通院していた心療内科は、駅前のサテライト医院であり、本院ではなかった。本院は予約でいっぱいで、診察となると1ヶ月待ちなどザラだったからだ。今苦しいのに1ヶ月も到底待つことはできない。とりあえず10分診療であっても、薬さえもらえれば…。そういう気持であった。しかし、一向に良くなる気配は無かった。

 幸い、MR(医薬情報担当者)をしている知人がいて、彼の紹介で、「精神科」に通ってみることになった。知人は外資系製薬会社で精神薬のMRをしており、精神科や心療内科の病院については熟知していたので、信頼して臨むことができた。

 紹介されたのは私の家からは車で1時間ほど掛かるが、精神科専門病院としてはそこが一番近かった。病院の混雑具合も驚いたが、待合室、診察室、すべてが、綺麗ではあるが、心療内科とは異なり、本当に「精神病院」という佇まいであった。

 しかし、先生(現在もお世話になっている主治医)は、精神科医一筋50年の、70代半ばのプロであった。お話もとてもよく聞いてくださり、なるべく薬に頼らない方向での治療を提案してくださった。先生も「私はスパルタだよ」と微笑みながら仰る人だが、辛くても一日一万歩は歩きなさい、辛くてもなるべく外に出なさい。そのような先生だ。

 本当に辛い時は出来なかったが、今でも私はその指導に従っている。薬は心療内科では症状が芳しくない言うと、すぐに種類や量を増やすが、精神科の先生は薬の量は増やさず、薬の種類を変更したり、逆に減薬の方向で指導してくださった。通常飲む薬の量は減り、何かあったときは頓服薬。お守りとして持っていて、といった具合だ。

 心療内科と精神科。実は似て非なる診療科だ。心療内科はストレスなどで体調不調となった患者も診る診療科であり、精神科専門の先生が必ず診察する訳ではない。例えばストレスで吐き気がする、胃が痛い、お腹が下る、などの場合は精神科の先生ではなく内科の先生が診る場合もあるそうだ。心療内科には、精神疾患に詳しくない先生がいる場合もあるのだ。

 それに対して精神科。聞こえは怖い。実際もファーストインプレッションは確かに怖い。待合室では本当に具合が悪く、待合室の床に寝そべって動けない状態の人がいる時もある。しかし、心の病を治せるのは、精神疾患に詳しい専門医師、即ち精神科医だけである。本当に病状が辛く、良くなりたいのであれば、迷わず、「精神科」の受診をお勧めしたい。

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