第6話 ローザ姫

『ミズホ!ミズホ!今日家に来て!レンゲちゃんの家も行ったでしょ?だから家にも来て!』


アルティマ語で話しかけて来るローザちゃん。日本語より正しく意図を伝えられるからか基本的に瑞穂みずほにはアルティマ語で話しかけてくる。

ちなみにローザちゃんは英語も少し話せるので、瑞穂がアルティマ語を覚える時に英語を交えて学んだ為英語も覚える事になった。英語は話せると就職に便利なので、覚える機会を作ってくれたローザちゃんには感謝している。

どうせなのでドイツ語やフランス語も勉強を始めている。凄いな瑞穂のスペック。前回の人生では大学に入る為に猛勉強したくらいで対して使って無かった。宝の持ち腐れだったんだなぁ。


『良いよ』


『やった!パパとママに言わなきゃ!』


ローザは銀髪の髪をかき上げてグリーンの瞳をパチクリさせてスマホでメッセージを打ち始めた。

銀髪って綺麗だな。光の当たり具合で輝いて見えるよ。

ローザちゃんの髪を指でクルクルしていると、ローザちゃんも瑞穂の髪を同じようにクルクルしてきた。

瑞穂の髪は亜麻色(薄い栗色)で、ついでに容姿の話をすると肌はやたら透明感のある肌をしている。眼もクリクリして大きく桜色をしている。色素が薄いらしいのだが、男だった時(成長後)は不摂生もあり不健康な青白さに、髪は染めていると思われ、眼はメガネで隠れていたので誰にも気が付かれなかった。悲しい!


「瑞穂さん。今日は何か予定ありますの?アニメ談義をしたいのですけれど・・・」


蓮華れんげちゃんもやって来てローザちゃんと同じように瑞穂の亜麻色の髪をクルクルしはじめた。


「今日はローザちゃんのお家にお呼ばれしてるよ。」


「そうなのね・・・ではアニメ談義は明日にしますわ!」


そう言い、隣に座った蓮華ちゃんは瑞穂の髪弄りを止めない。ローザちゃんもね。

たしかに瑞穂の髪は子供特有の細くてフワフワな髪を更に上質にしたような極上の髪だからね。瑞穂も一人の時とかつい自分で触っちゃうもの、仕方ないよね。


「お?なんだ?みずほのかみ さわってるのか?オレもさわる!」


「駄目ですわ!」「ダメだニョ!」


「うぉっ?!」


会話に加わってきたけど、二人の剣幕にビビる俊介しゅんすけくん。瑞穂も声の大きさにびっくりした。


「殿方が女の子の髪を気安く触ってはいけませんわ!せめて婚約者になってからなさってください!!」「そうだニョ!!」


「お?おう!じゃあその”こんやくしゃ”ってのになるぜ!!」


こいつ絶対に婚約者が何なのか解って無い。スポーツ馬鹿だもんね。

それに瑞穂の髪は別に触られても問題無いんだけどな。よっぽど気持ちの悪い人以外なら。


「俊介さん!婚約者というのはですね、「大人になったら結婚しましょう」という約束をすることなのですよ?貴方、瑞穂さんの事、結婚したいほど好きなんですの?」

「ミズホはローザの!デス!!シュスケィにはわたさないニョ!」


「おう、そうなのか!オレはみずほすきだぞ!ローザもすきなのか!じゃあオレたちライバルだな!!」

「やってやるデス!!」


「蓮華ちゃん。俊介くんは馬鹿だから多分よく解って無いよ。」

「そ、そうですわね!・・・わたくしも瑞穂さんの事・・・愛してますわ。」


なんか最後の方ゴニョゴニョ言ってて聞き取れなかった。

しかし瑞穂モテモテだな。相手は小学一年生だけど。

思春期になったらそれぞれ好きな子ができるでしょ。俊介くんなんかはもう少し大きくなったら「恥ずかしくて女となんか遊べるか!」とかになりそうだし。

なんだろうね、あの男の子の女子と遊んだら恥ずかしい気持ち。照れかな?

瑞穂には無かったけどね。反抗期も無かったし中二病も患うことは無かった。

前回ではあまり感情的になることが無かったような気がする。理性が強すぎて一人で居ても変なことしちゃいけないと思ってたもんなぁ。

今回は自分に正直に生きると決めているから、自ら黒歴史になるとわかりながら中二病も積極的に患っていく所存です!

このまま美少女に育てば、きっと中二病でも許されるはず!



放課後、ローザちゃんを迎えに来た車(リムジン)に一緒に載せてもらいローザちゃんの家に向かった。

ローザちゃんとアルティマ語で話つつ、どの辺りにローザちゃんの家があるのかを確認する。

一応前回でも地元を中心に生活していたので土地勘はある。

どうやら住宅街ではなくて都心部に向かっているようだ。あんな所に金持ちの家なんかあったかな?


着いた場所は超高級ホテルであるインペリアルクロスホテル。まるでドバイにあるような高層ビルのお化けみたいなホテルだ。

ローザちゃんに聞いたら、此処に年単位で宿泊しているらしい。なるほど。

超高級ホテルの最上階を貸し切っているそうだ。流石金持ち。

貸し切っているので友達を呼ぶのもOKなのだそうだ。融通効くね。


エントランスを通過してガードマンが左右に居る廊下に進む。どうやら貸し切りのスイートルームは他の階とは違うエレベーターを使うらしい。どんだけVIPなの?いや、王族だったね。クラスで瑞穂しか知らないと思うけど。もしかしたら蓮華ちゃんは知っているかも?


とんでもないく早いエレベーターで最上階である150階に到着した。

インペリアルクロスホテルは一階が一般向けの高級レストランになているので、前回の人生で一度だけ食事に来たことがある。正直金持ちの食べる料理はオシャレ過ぎて美味しいのかどうかよく分からなかった。ぶっちゃけジャンクフードのほうが美味いと思った。


ローザちゃんに手を引かれ奥に進む。ホテルなのに鍵とか無しに部屋に入っているぞ?本当に金持ちが泊るホテルは鍵を開ける煩わしさも取っ払っているの?

ガードマン居たし、無理矢理ガードマン超えてエレベーター乗っても不審者が居ると解った時点でエレベーターが扉だけ閉じて動かなくなるそうだ。簡単に捕獲できるね!


しかし広いな。使用人も沢山居るし。ローザちゃんは使用人からお辞儀をして出迎えられている。うーん、やっぱり王族って凄いね、使用人達を背景のように受け入れている。瑞穂はこんなに人が周りにいるとソワソワするよ。


『おかえりローザ!さぁパパにハグしておくれ!』


『ただいまパパ!』


このダンディなお髭のオジサマがローザちゃんのパパさんか。ローザちゃんと同じ銀髪がキチッと撫でつけられていてよりダンディなカッコよさを感じる。

瞳はローザちゃんと違いブルーだ。

年齢は40歳くらいだろうか?外国人の年齢って日本人からしたら、わかりにくいんだよね。


『そちらのお嬢さんがいつもローザが言っているミズホだね。アルティマ語を話せるんだったね!よろしく!私はジョナサンだよ。』


『はじめまして。Mrジョナサン。瑞穂といいます。よろしくおねがいします。』


『ハッハッハ!ミズホは奥ゆかしいね!』


『ミズホ!わたしの部屋行くよ!』


ローザパパとの挨拶が終わった途端にローザちゃんに腕を引っ張られ引きずられていく。ローザちゃんの方が少しだけ背が高いのでパワーで負けるのだ。


ローザちゃんの部屋の前に、ひときわ仕事が出来そうな美人のお姉さんが立っていた。


『お帰りなさいませ姫様。』


綺麗なお辞儀をするお姉さん。しかしそれを聞いたローザちゃんが慌てだす。


『マリア!姫って事内緒だから!言っちゃダメなの!!もっと後で言って驚かすんだから!!』


へぇ、ローザちゃんが王族なのを隠しているのは家の方針では無くて、ローザちゃん個人のイタズラだったんだね。子供っぽくて可愛いと思います!


『ローザちゃんお姫さまだったんだね!どおりで綺麗だと思ったよ!』


『うぅ・・・バレちゃった。ミズホあんまり驚いて無いし。失敗だよぉ。』


ショボーンとしたローザちゃん。思わず頭をナデナデしちゃう。

一撫でする度に機嫌を直していくローザちゃん。

もうデレデレした笑顔になった。ついでにほっぺにチュウもしちゃう。柔らかそうだったからツイやっちゃった。女の子同士だしOKだよね!


ほっぺにチュウをしたからかその後のローザちゃんはすこぶる上機嫌だった。

結局ローザちゃんが瑞穂を呼んだ理由は「家に来てほしかった」だけだった。

まぁ子供の行動に明確な理由なんかないか。

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