第5話 スポ根少年俊介

「みずほ!ヤキューしようぜ!」


給食を秒で済ませた俊介くんは瑞穂の腕を掴んで校庭に走って行った。せめて返事をしてから行動を起こして欲しい。瑞穂は一口しか給食食べてないんだけど?


校庭に連れてこられてミットを渡された。

当然昼休みに早すぎるため誰も居ない。

そしてバットを持つ俊介くん。え?瑞穂が球拾うの?


カキーン!という甲高い音の後に凄いスピードで球が飛んできた。


「うわっ!」びっくりしたけど何とかキャッチ出来た。出来てしまった。

それに気を良くした俊介くんは次々と球を打ち出す。容赦ないな少年!!

ていうかこれ野球なの?!千本ノックとかいうキッツイ練習方法じゃなかったっけ?!


10分ほど耐えたら他の元気少年達がやって来たので俊介くんを押し付けて逃げた。

あー疲れた。でも意外と動けたね、元々インドア派だったから運動苦手だと思ってたけど子供の頃はこんなに動けたんだ。このポテンシャルを衰退させるのは勿体ないな、運動も少し頑張ろうかな。



「みずほ!サッカーしようぜ!」


またしても給食をマトモに食べられずに連れ去られた。蓮華ちゃんが俊介くんに抗議していたけど、俊介くんの耳には入らなかったようだ。ローザは給食に夢中で瑞穂のピンチに気づいていない。野球の時もそうだった。

でもサッカーならば、あの千本ノックよりキツくは無いだろう。


サッカーグラウンドに着くと1つのゴールネットを使い、ボールの取り合いをしてシュートを決めると1点のルールで遊ぶことになった。


「10てん さきにとったほうが かちだからな!」


そう言って早速ドリブルを始める俊介くん。ド素人の瑞穂にも手加減をしない常に全力な少年だ。彼には色々教えないと瑞穂が死んでしまう。


ドリブルをする時の足運びやフェイントを見て真似をする。相手からボールを取る方法も見て真似をする。

最初の4点はあっさり取られたけど、やり方が解ったのでボールを取り、取られないように動く。なるほどなるほど。俊介くんが慌てて新しいテクニックをするのでそれも真似する。と言っても小学1年生の技術だからこそ瑞穂でも真似できるのだ。

もっと大きくなったらついて行けなく成ると思う。


「みずほ!おまえゼッタイ サッカーやってたろ!!めちゃくちゃうまいじゃないか!」


「今日始めてやったよ?」

今回ではね。前回も対してやったこと無いから初めてと大差無いよね。


「マジかよ!てんさいか!?オレもまけないぞ!!」


身体が自在に動くって素晴らしいね。瑞穂は元々、肉体的ポテンシャルが高かったのかもしれない。前回はテレビゲームばかりしてたから身体が錆びついたのだろう。

いや、ゲームは悪くない。瑞穂が自制できずにやりすぎただけだから。

なので今回は勉強・運動・コミュ力を兼ね備えた人間になろうと思う。容姿も第二次性徴期での別人のような成長(容姿的には劣化)は今回ないと思う。

男の時は身長が急激に伸びて、筋肉が付きやすくなり、顔も厳つくなった。

男性ホルモンがすごかったのか?

だとしたら今回は女性ホルモンが凄くて、より女性らしくなる気がする。そうだと良いな。


「ちょっ?!はやい!!」


考え事をしながらやってたらいつの間にか技術が俊介くんを追い越していたらしい。

俊介くんもサッカーは将来目指す種目じゃないから、そこまで技術は無いみたいだけどね。


それからは俊介くんにボールを取られる事が無くなり、簡単にボールを奪えるようになった。


「あー!もうむり!かてない!!つよいなみずほ!」


悔しそうにしつつ嬉しそうな俊介くん。勝てないから不貞腐れたり、嫌味を言わない立派なスポーツマンだ。瑞穂は多少ムッとする自信がある。


「あしたはテニスしようぜ!」


そうにこやかに言う俊介くん。テニスは俊介くんの最も得意なスポーツだ。彼の父親がテニスの世界ランカーだからね。その血をしっかり継いでいて、メディアで【天才テニス少年】と取り上がられたことも有る。

そんな俊介くんがテニスをしようと友達を誘うということは、自分とマトモにやりあえる強者と認識されたと言うことだ。他の活発な少年達もそれで何人かテニス勝負に誘われていた。今の所この学校においては無敗である。まぁ、まだ入学してそんなに経ってないから同級生くらいしか戦ったことがないので勝率が高いだけなのだが。

流石に小学1年生が6年生に勝てるとは思えない。体格差がありすぎるからね。



翌日も同じく拐われた。

今回はテニスコートだ。昨日言ったとおりテニスで勝負するようだ。

ラケットなどは用意されているので、すぐにはじめることが出来た。


テニス。前回でも1度もやったこと無いや。

ラケットで軟球のボールをポンポンとリフティングする。

実はテニスのルールもよく分かってない。

相手のコートにボールを打ち返して、枠の内側にリバウンドするようすれば良いんだっけ?それくらいしかわからない。サーブ権とかもよく分かってない。

まぁ遊びだからいいかな。


「瑞穂、ルール知らないよ?」


「だいじょうぶ!ラリーするだけだから!」


俊介くんは行った通り、初めは軽くラリーを交わすだけだったけど、段々スピンを掛けてきたり、力強いスマッシュを放って来た。

瑞穂も真似をして行く。思いの外狙い通りの場所に打ち込めるから楽しくなってかなりエグい攻め方をしたら俊介くんが力尽きて倒れた。

慌てて抱き寄せたら完全に眠っていた。

どうやら限界まで遊んで力尽きたようだ。

子供の遊ぶ為の情熱は凄まじいと思った。


翌日から俊介くんにライバル宣言をされてしまった。いやテニス選手目指さないからね?お父さんに紹介しなくて良いから!!れ、蓮華ちゃん助けて!!


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